ひと昔前の春の田園風景といえば、田んぼ一面のレンゲソウでした。
学校の行きかえりに、花を摘んで首飾りをつくったり、花びらを抜いて蜜を吸ってみたり…、そんな想い出のある方も多いのではないでしょうか。
蓮華草(レンゲソウ)別名ゲンゲ、紫雲英、マメ科のレンゲ属。
原産国は中国で、耐寒性もあり秋に発芽して越冬し翌年に花を咲かせる越年草です。
痩せた土地でもしっかり育つ、強い植物。種や鉢植えでも販売されているので、観賞用のガーデニング植物としても人気があります。
なぜ田んぼにレンゲソウが満開になるのか、当時は考えたこともありませんでしたが、秋に農家のかたが種をわざわざ蒔いて植えていると知ったのは大人になってから。
その理由は、レンゲソウの根っこのこぶ「根粒(こんりゅう)」にいる根粒菌。
根粒菌は空気中の窒素を植物の栄養分に変える力があり、レンゲソウは栄養をもらい根粒菌は住む場所をもらう、という共生関係があります。
育ったレンゲソウは窒素を蓄えたよい肥料の状態、農家さんは春に田んぼの土に混ぜ込むことで土中の肥料分をアップさせている、というわけです。
また稲作の役に立つだけでなく、花や茎、根にも薬効成分があり、以前は民間薬として利用されていたことも。
中国では紀元前1世紀の文献に病気に「抵抗力をつけるハーブ」として紹介されていますし、ハチミツを集める花としてもポピュラーですね。
花言葉は、「心が和らぐ」「あなたと一緒なら苦痛が和らぐ」。仏教における聖なる花、蓮(ハス)に似た風貌からついた言葉かと思われますが、見た目にも柔らかで癒しのある素朴な花、人の健康や食を支えてくれたありがたい植物です。