三重県四日市にある「YOKKAICHI HARBOR 尾上別荘」にて、7月30日に定期庭園管理作業を実施いたしました。剪定屋空では、この歴史ある庭園の本質を理解し、最適な管理方法を提案・実行することを心がけています。
樹木健康管理: ユニックで到達可能な高木の枯れ枝を適切に除去しました。これは美観だけでなく、樹木の健康と庭園の安全性を確保する重要な作業です。
下草・落葉管理: 竹の庭を中心に、手作業での除草と落ち葉清掃を全体的に実施。この丁寧な作業により、庭園の細部まで美しさを保つことができます。
樹形管理: 茶の庭のモチノキと大型のモッコクの剪定を行いました。これらの樹木は日本庭園において重要な景観要素であり、その特性を理解した上での剪定が必要です。
忙しい中応援に来ていただいた職人さんの手 綺麗にしていただきました。
発生した枝木はダンプ1車分を適切に処分。庭園管理における環境負荷の低減も、我々の重要な責務の一つです。
そして最後に、日本庭園の精髄とも言える砂紋を敷きました。(枯山水ではない)
砂紋は単なる装飾ではなく、禅の世界観を表現する重要な要素です。波や山、川を表現する曲線や直線を、丁寧に描いていきます。
砂紋の施工は、現代の庭園管理技術と日本の伝統的な庭園芸術を融合させながら庭を見る人を惹きつける要素があるように感じます。専用の道具を用いて、砂の一粒一粒にまで気を配りながら、庭園全体の調和を考慮して模様を描いていきます。
砂紋を用いた枯山水様式の起源は、鎌倉時代にさかのぼります。禅宗の伝来とともに、京都の西芳寺で夢窓疎石が白砂と石を巧みに配した庭園を造営したことが、その始まりとされています。
しかし、枯山水という概念自体は、さらに古く平安時代末期の作庭書「作庭記」にその片鱗が見られます。ここでは、水を用いずに石を立てる「枯山水」という手法が初めて記述されています。室町時代に入ると、禅の思想をより深く表現するため、石組みと砂紋を組み合わせた抽象的な枯山水が数多く造られるようになりました。この時期、枯山水庭園は最盛期を迎え、その様式が確立されていったようです。
青海波紋:無限に広がる大海の波を表現し、宇宙の広大さや人生の永遠性を象徴します。
流水紋(さざなみ):穏やかな川の流れを表現し、人生の道程や時の流れを想起させます。
渦巻き紋:水の渦を表すと同時に、仏教における悟りの境地や宇宙の神秘を象徴しています。これらの砂紋は、水の動きだけでなく、人間の精神性や自然界の摂理までも表現してます。
尾上別荘の庭園管理において、我々は常に以下の点を意識しています。
歴史的価値の保存
現代的な安全性と機能性の確保
四季の移ろいを感じさせる植栽管理
禅の精神を反映した空間づくり
今回の作業でも、サルスベリの開花が始まっていることを確認しました。これは夏の訪れを告げる自然のサインであり、庭園の季節感を演出する重要な要素となります。
剪定屋空は、このような細やかな観察と専門知識に基づいた管理を通じて、尾上別荘の庭園が持つ本来の美しさと機能を最大限に引き出すことを目指しています。今後も、伝統と革新のバランスを取りながら、心安らぐ空間の創出に努めてまいります。
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