春になると地中から新芽を出し、茎をスラリと伸ばした先に大輪の花を咲かせる「芍薬(シャクヤク)。
大きな花を開かせる少し前、まだ花びらを固く閉じたツボミの様子です。
花びらを抱え込むようにギュッと丸まって、鮮やかな葉のグリーンに真っ白い花びらと濃い赤紫のコントラストも美しいですね。
ボタン科ボタン属、原産地はアジア北東部、中国では古くから栽培され漢方薬などに使用されてきました。有名な一節「立てば芍薬、座れば牡丹、歩く姿は百合の花」は、花の姿形の美しさもさることながら、芍薬は生薬として女性ホルモンや美肌を整えることから、その効能も表している言葉なのだとか。
女性の美しい立ち姿に例えられる花ですが、花が終わり冬には茎も葉も枯れて根の状態で休眠してしまうため、その場所には枯れた草木が残るのみ。あの華やかであでやかな花はどこにいったのだろう…本当にここに咲いていた?と、不思議な気持ちにさえなります。
何も形跡を残さず消えてしまう潔さ、そして暖かくなったある日、気づくとキレイな立ち姿で佇んでいる茎と大きくついたツボミ。
地中でじっと眠って長い時間を過ごし、蓄えたすべてのエネルギーを注ぎ開花するかのような春の美しい再生はお見事。
咲くことばかりに囚われず、焦らず慌てず、その時まで休息しエネルギーを蓄え整えること、必要なタイミングで惜しみなくそのエネルギーを注ぐこと…芍薬の再生と開花、なんだか人生感にもつながってくるような気がしてきませんか?