梅雨の時期が近づく6月から7月、グリーンの葉の中にシュッと立ち上がる凛とした姿。この花の名前を単純に「菖蒲(ショウブ)」と認識していたのですが、よくよく調べてみると正確な名は「花菖蒲(ハナショウブ)」。
しかも端午の節句にお湯に入れる、生薬にもつかわれる薬用植物「菖蒲」と「花菖蒲」は別の植物。菖蒲と花菖蒲、混同している方、多いのではないでしょうか?
花菖蒲(ハナショウブ):アヤメ科アヤメ属、原産地は日本や朝鮮半島など。江戸時代には野生の種から改良し、現在では2000種を超える品種があるといいます。
花のスタイルも様々で花色には白、紫、桃、黄色、青他、絞りやピコティと呼ばれる覆輪などの組み合わせを含めるとその数は5000種以上、「色の魔術師」とも呼ばれる花です。
系統として、江戸系は品種数も多く群生にも向く強さがあり、伊勢系は鉢植え室内栽培向きの柔和な印象、肥後系は草丈低めの大輪系、長井系は原種に近いものであり、野生的かつ清楚な印象の花。
一方生薬などに使われる「菖蒲(ショウブ)」は旧分類ではサトイモ科、近年のDNA検査ではショウブ科に分類されるようになったものの、ハナショウブのような華麗な花がありません。小さな花が集まった棍棒状の花穂、花びらのない地味な花姿なので全く別の印象ですね。
菖蒲湯に使われるようになった理由は、葉を傷つけるととてもよい芳香を放ち「香りが邪気を払う」とされた他、刀のような葉の形状から男の子のたくましい成長がイメージされたようです。効能としても血行促進や疲労回復、根茎には健胃や鎮痛効果が挙げられています。
菖蒲と花菖蒲。見た目は大きく違えども、どちらも魅力的な特性をもつ植物です。
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