十両(ジュウリョウ)という別名をもつサクラソウ科ヤブコウジ属の「ヤブコウジ」。縁起の良い植物としてお正月の飾りにもよく使われます。
ヤブコウジは古くから日本人に愛された植物で万葉集には「山橘(ヤマタチバナ)」という名前で登場もしています。
江戸時代には葉に斑が入ったヤブコウジが大流行し多くの品種が作られ、さらには明治20年頃からの再ブームで、葉に黄色や白の斑が入ることや、葉のふちが金平糖のように突出する「コンペ」と呼ばれる葉型をもつ天の川という品種などが大人気となり全国的に熱狂する人が多数現れた逸話があります。
結果、ヤブコウジは投機対象とまでなり、日之司という品種では現在の価格で1000万円もの高値がついたことがあるとか。
ひとつの植物が生産者から一般の人々まで巻き込んだ、すごいムーブメントだったのでしょうね。
別名の十両という名は、真っ赤な実が千両や万両の木に似ていること、千両や万両よりも樹木丈が低く実の数も少ないことから桁の少ない「十両」と位置づけされつけられたようです。7月~8月に白やピンク色に開花する花には「明日の幸福」という花言葉もあり、花をつけても実をつけても運気をよくしてくれそうな縁起物のイメージ。
また根や茎を乾燥させたものは紫金牛(しきんぎゅう)という名の生薬となり漢方に利用され、咳や痰の症状や喉の炎症にも有効とされているので健康を守るためにも貢献してくれている植物です。