ブラシのような形状の明るい紫色の花を上向きにつけ、トゲトゲした葉をもつ「アザミ」。アザミと言えばこの花、本州、九州、四国各地で自生している代表的な野の花ですね。
しかし、実は「アザミ」という品種の花はなく、よく見かけるこの花の本名は「野薊(ノアザミ)」さらにアザミは世界には300種以上もの品種があるという種類の多い植物で、そのうちの1/3にあたる100種類以上の品種は日本に集中。また分布地も広いため亜種や交種、雑種が生まれていることも多々あるといいます。
野薊(ノアザミ)はキク科アザミ属、Cirsium japonicumという名が示すように日本の固有種。 Cirsium はギリシャ語の「cirsos(静脈腫)」から由来し静脈腫に薬効のある植物につけられた名前からきているのだそうです。
開花時期は5月~8月頃、赤紫の他に白色もあります。あの牧野富太郎博士の牧野日本植物図鑑にもアザミの種類はたくさん掲載され「てうせんあざみ(アーティチョーク)」や「ひごたい」「きつねあざみ」「ひめあざみ」などなど20種類以上がアザミの仲間として紹介されています。(ノアザミは小薊と表記)。
日本ではとても親しみのあるアザミですが、そのトゲトゲしい葉のせいか、どうも「嫌われる花」という印象もあるようで、薊というのも古語の「あざむ」=「欺く(あざむく)」「驚ききれる」「興ざめする」などのネガティブなイメージをもつ言葉に由来しています。美しい花で蝶を寄せながら巧みに花粉を運んでもらい、動物からは食べられないようトゲトゲの葉、花に手をかけようとすれば痛い棘…、艶やかな美しさと身を守る装備を駆使して今日まで敵を欺きながらも長く生き抜いてきた。そんな賢く強い植物です。
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