春を告げてくれる植物、梅の花。桜の季節の少し前、まだ寒さの残る中で開くやさしい花姿は心をホッとゆるめてくれます。
紅梅:バラ科サクラ属、中国原産、学名Prunus mume、英名Japanese apricot、梅の別名には春告草(ハルツゲグサ)や風待草(カゼマチグサ)、匂草(ニオイグサ)など風流な名前が多くあります。おめでたい松竹梅の植物のひとつであり、シンボルやモチーフにも好まれる花。花言葉は「優美」「艶やか」、白梅には「気品」「上品」といった言葉も。
古くは万葉集でも梅の登場する歌が多く詠まれ、平安時代の長編小説「源氏物語」にも突出して登場が多いのが「紅梅」。紅梅は平安時代の人々に圧倒的な人気だったと言われます。厳しい冬に耐えた人々があの暖かな紅色の開花を見た時、春の到来を感じ心から歓喜したに違いありません。
紅梅は、源氏物語では末摘花、乙女、初音、幻など20か所以上に登場するそうで文を結わえる花の咲く枝、薫物としてのお香、赤い花(鼻)…。目次の中にも梅枝、紅梅があります。
現在NHK大河ドラマ「光る君へ」が放映中ですが、ドラマの中では随所に樹木や花の演出が散りばめられ、源雅信の屋敷である土御門殿(娘・倫子のサロン)は風流な庭の松や藤の花、牛車にも季節の植物が溢れんばかりに飾られ、まさに貴族の姫君が集う優雅な雰囲気。
平安貴族の生活の演出、また和歌や漢詩、文学的な要素として植物たちの大活躍もよくわかります。今期のドラマは「今まで大河を観たことがなかった若い世代」からの評価が高いそうですよ。紅梅も含め季節毎に登場する花や樹の風流な演出もぜひチェックしてみてくださいね。