2回触れると0.5秒で閉じる。食虫植物ハエトリソウの捕食の仕組みと育て方
- 飯島 一郎

- 2024年8月24日
- 読了時間: 4分
昆虫をパクリと食べてしまう食虫植物。その代表格ともいえるのがハエトリソウ(ハエトリグサ)ではないでしょうか。映像で虫を捕食するシーンを見たことがある方も多いかと思います。
生きた獲物を捕らえる植物というと、ちょっと怖いイメージもありますね。でも実際には、全ての栄養を捕食で賄っているわけではありません。光合成ができていれば育ちますし、水と日光、養分の少ない土さえあれば家庭でも十分に育てられる植物です。
まるで長いまつげを生やしたような長いトゲが並び、グリーンに赤のコントラスト。ユニークで存在感のある姿には、見る人を引き込む力があります。

捕まえるのではなく、待つ。食虫植物が教えてくれるのは、自然の巧妙さと、急がない戦略です。
ハエトリソウの捕食システムは、想像以上に精巧です。
葉の内側には感覚毛と呼ばれる繊細なセンサーが備わっています。虫が侵入しただけでは、すぐには閉じません。閉じる条件は2度触れること。しかも1度目と2度目の接触が30秒以内でなければなりません。
30秒以内に離れてしまえば捕まらない。30秒かけてゆっくり引き寄せ、2度目を踏ませることで確実に捕らえる。これがハエトリソウの設計です。
閉じるスピードは0.5秒。驚くほど速い反応です。この動作はハエトリソウにとってかなりエネルギーを消費します。葉を何度も触ってしまいたくなりますが、植物の体力を奪うことになります。観察はそっとに限ります。
科名:モウセンゴケ科 ハエトリグサ属 学名:Dionaea muscipula(ディオネア・マスシプラ) 和名:ハエトリソウ(ハエトリグサ) 別名:ハエジゴク 英名:Venus Flytrap(女神のハエ取り罠) 原産地:北アメリカ(ノースカロライナ州・サウスカロライナ州の湿地帯)
日当たり
ハエトリソウは日光を好む植物です。原産地でも日当たりのよい湿原に自生しています。屋外で1日6時間以上日が当たる場所が理想です。室内で育てる場合は、南向きの窓辺など光の入る場所に置きましょう。
日光が不足すると葉の赤みが薄れ、捕虫葉が小さくなることがあります。
水やり
湿原の植物なので、乾燥は大敵です。腰水という方法が基本です。受け皿に水を張り、鉢の底から常に水が吸い上げられる状態を保ちます。夏の成長期は特に乾かさないよう注意します。
水は軟水が望ましく、水道水を使う場合は一晩置いてカルキを抜くと安心です。雨水や精製水も使えます。
用土
栄養分の少ない土で育てます。水苔が最もポピュラーで、失敗が少なく育てやすいです。ピートモスとパーライトの混合土も使われます。
肥料は基本的に不要です。食虫植物は養分の乏しい環境に適応した植物のため、肥料を与えると根が傷んで枯れることがあります。肥料ではなく、光と水が育てる土台です。
越冬
冬はいったん休眠します。10〜15℃程度の涼しい場所で管理し、水やりは控えめに。葉が黄色くなっても、春になれば新芽が出てきます。0℃以下の凍結には弱いので、霜が降りる地域では屋内に取り込みましょう。
捕虫葉を面白半分に何度も動かすのは禁物です。1回の開閉運動にはエネルギーが必要で、繰り返すと株が弱ります。触れるのは観察するときだけに留めて、普段はそっとしておきましょう。
また、虫を無理に与える必要もありません。屋外に出していれば自然に虫が入ってきます。室内で管理する場合も、光合成で十分に生育できます。
よくある質問
Q. 葉を触っても閉じないのですが、枯れていますか? A. 繰り返し触ると開閉に使うエネルギーが消耗して反応が鈍くなることがあります。しばらくそっとしておくと回復することが多いです。葉の色が緑のうちは問題ありません。
Q. 虫を食べさせないと育ちませんか? A. 光合成で十分に育ちます。虫の捕食はあくまで栄養補助です。肥料も不要ですので、光・水・日当たりの管理に集中してください。
Q. 冬に葉が全部枯れてしまいましたが、捨てた方がよいですか? A. 休眠状態です。捨てないでください。根が生きていれば春に新芽が出ます。0℃以下にならない場所で管理し、土が完全に乾かない程度に水やりを続けてください。
Q. 水道水を使っていいですか? A. 日本の軟水地域であれば水道水でも育てられます。心配な場合は一晩汲み置きしたものや、市販の精製水を使うと安心です。
学名の Dionaea は、ギリシャ神話の美の女神アフロディテの母親ディオネから。英名の Venus Flytrap(女神のハエ取り罠)と合わせると、この植物に込められた名づけのセンスが伝わります。







