三重県の豪雨と雨庭(レインガーデン)の可能性-グリーンインフラとしての治水対策を考える
- 三重県剪定伐採お庭のお手入れ専門店 剪定屋空
- 9月13日
- 読了時間: 4分
三重県を襲った記録的豪雨

2025年9月12日から13日にかけて、三重県北部では記録的な豪雨が観測されました。
菰野町付近:1時間に約120mmの猛烈な雨
四日市市:1時間に123.5mmを観測(観測史上1位を更新)
三重県菰野町付近では、12日19時までの1時間に約120ミリの雨が降ったとみられ、「記録的短時間大雨情報」が発表されました。
私たちが住んでいる菰野町杉谷の家横にある川の様子です。土砂が流失しており、一部川から引いているパイプが破損してしまった為復旧を行いました。 去年大雨の大雨の時に土砂が家の近くまで流れてきてしまい家の前にある小さな水路を少し拡張したのが功を奏したのか今回はそれほど土砂が流れてきた形跡はありませんでした。
2025年9月13日 14時53分撮影

豪雨の影響で川の水量が一時的に増加し、斜面や川底の土砂が流されて堆積しています。

倒木や根の露出があり、雨で表層土が削られています。

岩場を流れる水が白濁しており、土砂が混入していることが分かります。いつもはここまで水量はなく緩やかな川です。
この大雨により、菰野町・いなべ市・四日市市で土砂災害警戒情報が発表され、一部地域では道路冠水
や浸水被害も発生しました。人工的な排水施設では処理しきれない「都市型水害」が現実の問題として表れたのです。
都市型水害と透水性の低下
近年、都市部ではアスファルトやコンクリート舗装の拡大によって土地の透水性が失われています。その結果、豪雨時に雨水が地面に浸透せず、排水設備へ集中し、冠水や氾濫を引き起こします。
従来の「貯水池」「調整池」といった人工的なハード対策だけでは限界があり、自然の力を活かすグリーンインフラが必要とされています。
グリーンインフラとは?
グリーンインフラ(Green Infrastructure) とは、「自然の持つ力(浸透・貯留・浄化・涼しさ・生物多様性など)を活かしながら、人々の暮らしや都市の防災・環境整備に役立てる仕組みや考え方」のことを指します。
国土交通省の説明によると、
“自然環境が持つ多様な機能を社会資本の整備や土地利用などに積極的に活用し、持続可能で魅力的な国土・地域づくりに役立てていく考え方”
つまり、コンクリートのダムや排水路といった「グレーインフラ」に頼るだけではなく、森・川・湿地・農地・庭園などの自然的要素をインフラとして機能させるという発想です。
生きものとしての土木研究会で学んだ「雨庭」

2025年7月25日、「生きものとしての土木研究会 学習会第5回『都市型水害対策と雨庭~これからのグリーンインフラを考える~』」のオンライン講座に参加しました。
その講座では、雨庭(レインガーデン)が都市型洪水対策として有効であることを学びました。特に印象的だったポイントは以下の通りです。
雨庭は雨水を一時的にため、土中に浸透させる仕組みを持つ
京都市右京区にある相国寺の枯山水庭園では、850mmの総雨量を処理できると示唆された
参考文献: 相国寺裏方丈庭園枯流の雨水管理機能評価http://library.jsce.or.jp/jsce/open/00897/2018/14-0109.pdf
幼稚園の園庭では石・落ち葉・藁を用いて浸透性を高め、大雨後でもぬかるまない環境を実現
自然界の腐植や菌糸が土壌を弾力化し、浸透性を高める
「雨庭は庭づくりでありながら、同時に治水インフラである」という視点
講師陣が語った「自然と一体化し、自然本来の機能を高めることが重要」という言葉は、今後の庭園管理にも深く通じる学びでした。
雨庭の仕組みとグリーンインフラとしての効果
雨庭(レインガーデン)は、ただの植栽帯ではありません。
雨水をためる → 一時的に冠水を防ぐ
土壌に浸透させる → 地下水を涵養する
植栽による浄化 → 雨水を自然にろ過する
生態系を支える → 昆虫や鳥類の生息空間にもなる
これらの機能が組み合わさることで、都市型洪水の軽減だけでなく、気候変動に強い地域環境づくりに貢献します。
豪雨対策としての雨庭導入
今回の豪雨を踏まえ、今後の対策として以下のような実践が考えられます。
1. 個人邸・企業敷地での雨庭設置
駐車場や庭に小規模な雨庭を導入し、浸透性を高める。
2. 公共施設での雨庭ネットワーク化
学校・公園・寺社などを「地域の雨庭」として機能させ、面的な治水力を確保。
3. 伝統技術との融合
枯山水や池泉庭園、竹林整備など、三重の庭園文化を活かしたグリーンインフラ整備。
土壌を育てる治水

雨庭の本質は「水・空気・有機物の循環を整えること」にあります。
落ち葉や藁が腐植となり、菌糸や微生物が活動することで土壌が息を吹き返し、結果として雨水を抱え込みます。庭の管理者としてこの発想を取り入れることで、豪雨対策と生態系保全を同時に実現できると考えています。
庭に限らずすべての生き物や自然は土と離れては生きられない。だからこそもっと原点とも言える土のコトをこれからも考えいろいろな所に取り入れていきたいと思います。