ヌルデの木はかぶれない!? ヌルデとヤシャブシの伐採


三重県菰野町のお庭にて、強風で倒れた樹木の伐採を行いました。ヌルデとヤシャブシの2本です。生垣の上に倒れ込み、覆いかぶさった状態でした。
その日は別の作業を予定していました。予定を変えて、こちらを先に片づけています。

写真の奥に生垣があります。木が丸ごと覆ってしまって、面が一つも見えていません。
ヌルデの木はかぶれないのか。
先に結論を書きます。ハゼの木などに比べてかぶれにくいと書いてある資料などもありますがかぶれるひとはかぶれます。
この木がかぶれるかどうかは、資料によって書いてあることが違います。
島根県はほとんどかぶれないと書いています。岡山県森林研究所はかぶれる植物として挙げています。近畿地方整備局の六甲山系植生電子図鑑は、ウルシの仲間なので肌の弱い人はかぶれる可能性があると書きます。東京生薬協会は、ウルシ科の中では比較的かぶれにくいといわれるが敏感な方は注意されたほうがよい、という書き方です。
ばらばらに見えます。ただ、並べてみると分かることがありました。
割れているのは、ふつうの人がかぶれるかどうかです。かぶれやすい人については、どの資料も同じことを言っています。
日本薬学会の記述がいちばんはっきりしています。ウルシと同じ仲間になり、稀にかぶれることがある。かぶれ易い方は特に要注意です。
肌が弱い体質です。以前ヤマハゼでかぶれたときは、一ヶ月ほどかゆみが続いて夜も眠れませんでした。ヤマハゼは日本皮膚科学会の接触皮膚炎診療ガイドラインに載っている5種のうちの一つです。一度かぶれると次からより強く出ます。

ヌルデという木
ウルシ科ヌルデ属。山野の落葉小高木で、高さは5mほどになります。
名前は、幹を傷つけると出る白い樹液からきています。この液を器の塗料に使いました。塗る手が転じてヌルデ。漢字では白膠木と書きます。膠は染料や接着剤を意味します。
見分けかたは一つ覚えれば足ります。葉軸に翼があること。

奇数羽状複葉で、小葉が7枚から13枚。その小葉と小葉のあいだの軸に、ひれのような張り出しがあります。写真の真ん中を走っている軸を見てください。細い棒ではなく、緑の板になっています。これがある羽状複葉は、まずヌルデです。

小葉だけを近くで見ると、ふつうの葉に見えます。羽状複葉は、離れて軸ごと見ないと分かりません。
五倍子とお歯黒
ヌルデの葉には、虫こぶができます。五倍子と書いてごばいしと読みます。作るのはヌルデシロアブラムシ。五月のはじめに葉軸の翼へ寄生して、刺激を受けた組織が袋のようにふくらみます。

見分けの目印になっている翼が、そのまま虫の住みかになっている。よくできています。
この虫こぶにタンニンが多く含まれます。これを粉にして、酢に鉄を溶かした液と合わせると黒くなります。お歯黒です。
丹波篠山市の歯科保健の資料に、仕組みが書かれていました。タンニンが歯や歯肉のたんぱく質を凝固させて細菌の侵入を防ぎ、鉄イオンが歯のエナメル質を強化して耐酸性を上げる。
お歯黒は化粧ではなく、虫歯の予防でした。
伐ったあとに出てくる木。
ヌルデは先駆樹種と呼ばれる木です。伐採跡、崩壊地、法面、造成地、河原。裸になった土地に真っ先に入ります。
岡山理科大学の植物図鑑にこうあります。伐採跡や山林火災跡地などでいち早く成長してくる。種子が土中で長期間にわたって休眠しており、攪乱によって芽生えてくる。
種が飛んできて生えるのではありません。もともと土の中にいます。光が入った瞬間に起きる。
これは施主様に説明しておきたいことです。ヌルデが出た現場は、これから何年もヌルデが出る現場になります。一度伐って終わりにはなりません。
紅葉が美しい木でもあります。岡秀樹は、秋の紅葉は日当りがよいほど美しいと書いています。光を入れることが色を深くする。山の手入れをなぜするのかという話を、この一行で説明できます。
ヤシャブシという木
もう一本はヤシャブシです。カバノキ科ハンノキ属。学名は Alnus firma。
漢字で夜叉五倍子と書きます。
この名前に、さっきの五倍子が出てきます。ヤシャブシの果穂にもタンニンが多く、ヌルデの五倍子の代わりに黒い染料として使われました。果穂の表面がでこぼこしていて鬼の一種である夜叉に似ている。それで夜叉五倍子です。
別名をオハグロノキといいます。
参考 植木ペディア https://www.uekipedia.jp/落葉広葉樹-ヤ行/ヤシャブシ/

根に菌を飼う木
ヤシャブシには、もう一つ名前があります。ハゲシバリ。ガケバリとも呼ばれます。
はげ山を縛る木、崖を縛る木。崩れた斜面に生えるからです。
この木は根にフランキアという放線菌を住まわせています。菌が空気中の窒素を取り込んで、木に渡す。だから養分のない土地でも育ちます。肥料をもらうのではなく、自分で作る。
明治時代から、はげ山の砂防用の樹種として植えられてきました。葉は水田の肥料に、材は木櫛に、果実は染料に使われています。樹高は20mほどになります。
参考 日本緑化工学会誌 36(3) https://www.jsrt.jp/pdf/dokomade/36-3OhbaYasya.pdf
二本に共通していたこと
どちらも、裸になった土地を最初に直す木でした。ヌルデは土の中で待ち、光が入ると一番に伸びる。ヤシャブシは根に菌を飼って、痩せた土に窒素を入れる。順番でいえば、いちばん先に来る係です。
そしてどちらも、黒を染める木でした。ヌルデが五倍子の本家で、ヤシャブシがその代用。片方は虫こぶから、片方は果穂から、同じタンニンを採っていました。
庭の際に立っていた二本が、たまたまそういう木だったということです。

これからヌルデが出た場所は、また出ます。種は土の中にいて、光を入れるたびに起きてきます。
年に一度だけ手を入れる管理では、気づいたときには太くなっています。定期的に見る形にしておくと、細いうちに抜けます。
細いうちなら、かぶれる心配も小さく済みます。
強風のあとは庭木の倒木なども多いので事前に気になる樹木がありましたらご相談ください。





