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千利休と一輪の朝顔:省略(そぎ)の美学

  • 執筆者の写真: 三重県剪定伐採お庭のお手入れ専門店 剪定屋空
    三重県剪定伐採お庭のお手入れ専門店 剪定屋空
  • 1 分前
  • 読了時間: 2分

天下人・豊臣秀吉が、茶人・千利休の屋敷で開かれる「朝顔の茶会」に招かれた。


そんな逸話があります。


秀吉は、利休の庭に朝顔が見事に咲き誇っていると聞き、胸を高鳴らせて向かいました。


庭に足を踏み入れれば、花の波が迎えてくれるはず。そう思っていたのです。


ところが、茶室へ向かう露地(ろじ)には、一輪の朝顔も見当たりません。


花の気配が消えた庭。静けさだけが、すっと残っています。


不思議に思いながら茶室に入ると、床の間に花入れが置かれ、そこには


たった一輪の朝顔が、最も美しい姿で咲いていた。


利休は、庭中の朝顔を摘み取り、最高の一輪だけを残したのです。


そしてそれを、最高の空間(茶室)で、最高の状態(一期一会)として客人に差し出した。


見せたいものを増やすのではなく、削ぎ落として本質を立ち上げる。


これは、究極の引き算であり、深いもてなしの表現だったのだと思います。



省略(そぎ)が生む「集中」


一輪の朝顔 千利休

すべてを並べれば、豪華には見えるかもしれません。


けれど、目が散り、心が散ります。


一輪だけに絞った瞬間、視線は一点に集まり、心がそこに沈みます。


余白があるからこそ、花の呼吸が聴こえる。

それが省略(そぎ)の美学の強さです。





この物語から学べること


一期一会


この一瞬の美しさ、この出会いは二度とない。


だからこそ、今、目の前のもの・人・時間を丁寧に扱う。


今日の価値を、軽くしないための言葉です。



引き算の美学



全部を見せない。


最も伝えたい一点を際立たせる。


削ぎ落とすことで、むしろエネルギーが凝縮し、静かな迫力が生まれます。



庭の手入れにも通じる話


庭も同じで、手を入れすぎると情報が多くなり、落ち着きが消えることがあります。


落ち葉を掃き、枝を透かし、足元を整える。

整えたあとに残る静けさこそが、その庭の本質を語ることがあります。


利休の一輪の朝顔は、派手な演出ではなく、静かな設計でした。


だからこそ、千年先まで語り継がれるのだと思います。



一日だけ、一輪だけ残すつもりで過ごしてみる。


本当に大切な一点に、時間を寄せる。


その集中が、日常の景色を変えてくれるように感じます。

 
 
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