唯一無二の下向き花びら コントラストが印象的な花シクラメンジックス
- 飯島 一郎

- 2024年12月18日
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冬になっても花を咲かせ、窓辺に鮮やかな色を添えてくれるシクラメン。サクラソウ科の球根植物で、南ヨーロッパから西アジア、北アフリカを原産とするこの花は、17世紀以降にイギリスやフランスで観賞用としての改良が進み、19世紀から20世紀にかけて品種の多様化が加速しました。大輪系から手のひらに乗るようなミニシクラメンまで、今日では毎年新品種が発表されるほど品種改良が盛んで、店頭に並ぶ姿はひとつひとつが個性を持っています。

そのなかで近年ひときわ目を引くのが、サカタのタネが開発したシクラメン ジックスです。通常のシクラメンは花弁が上を向いて反り返り、花全体はうつむくように咲きます。ジックスはこれとは逆に、花弁そのものが下向きのベル状に開花します。品種改良の過程で花弁細胞の伸長パターンが変化し、基部が短く先端部が伸びることで、この傘を伏せたような独特の形態が生まれました。ジックスはただ珍しい花ではなく、科学的な改良と審美眼が交差した地点に生まれた唯一無二の品種です。
球茎に秘められた生命力
シクラメンの球根は、植物学的には球茎(Corm / コーム)と呼ばれる地下茎が肥大した器官です。チューリップのような鱗茎とは異なり、デンプンと水分を球茎内に貯蔵し、夏の高温乾燥期には休眠することで命をつなぐ、いわば生命の貯蔵庫です。球茎は単なる根ではなく、夏の乾燥や高温を乗り越えるための生命維持装置として機能しています。球茎の頂部からは葉と花芽が次々と分化し、底面からは細い根が広がります。植え付けのとき球茎の上部を土から少し出しておくのはこのためで、頂部に水が溜まると腐敗の原因になります。

花もちがよい理由
ジックスの花もちのよさは、植物としての構造に由来します。花弁の組織が比較的肉厚で堅牢なため水分蒸散が緩やかであること、室内の適温環境下では花弁の生理的老化が遅れること、そして球茎に蓄積された豊富な養分が開花期間中に安定してエネルギーを供給することが主な理由です。連続開花性が高いのも特徴で、夜温10〜15℃・日中20℃前後の環境を維持しリン酸・カリウムを多く含む液体肥料を定期的に与えることで、球茎内では花芽が次々と分化し続けます。咲き終わった花茎を早めに根元からねじり取ることで、株のエネルギーが新しい花芽へと集中します。
お庭と室内を彩る育て方のポイント
置き場所は明るい半日陰が適し、冬は日当たりのよい窓辺が理想的ですが直射日光は避けます。水やりは鉢土の表面が乾いたら鉢の縁からゆっくりと、あるいは底面給水で与え、過湿は禁物です。葉が込み合ってきたら、株の中心に光が当たるように葉の向きを整える葉組みをすると花つきが向上します。シクラメンは球根植物のため、条件次第では翌年も花を楽しめます。夏越しには休眠させてから秋に再起動させる工夫が必要で、栽培難易度は少し高めですが、冬の庭と室内に温もりと色彩を添える存在としてお庭全体の冬景色を引き立ててくれます。
シクラメンの別名には、火が灯ったような姿から篝火花(カガリビバナ)、球茎を豚やイノシシが掘って食べることに由来する豚の饅頭などがあります。花言葉は内気・遠慮・気後れ。うつむいて咲く姿からつけられた言葉ですが、ジックスは下向きに咲きながらも堂々と存在感を放ちます。ちょっと変わった冬の一鉢として、寄せ植えや鉢植えでいかがでしょうか。







