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菊とマムの違い。海外で進化した日本の菊スプレーマム

執筆者の写真: 飯島 一郎
飯島 一郎
2024年11月8日
読了時間: 5分

更新日:9月14日

秋の園芸店に、菊が並びはじめました。


ただ、値札を見るとマムと書いてある。


ポットマム、ガーデンマム、スプレーマム。 菊なのか、菊じゃないのか。

育て方は同じでいいのか。


答えを先に言ってしまうと、同じ植物です。


日本を出て、海外で姿を変えて、また帰ってきた菊。

それがマムと呼ばれています。


スプレーマム。1つの茎にたくさんの花をつける
スプレーマム。1つの茎にたくさんの花をつける

日本を出た年と、帰ってきた年


菊がヨーロッパへ渡ったのは1789年。 このときは中国からで、あまり人気が出ないまま数十年が過ぎます。


火が付いたのは幕末でした。


1860年に日本を訪れたイギリス人のロバート・フォーチュンが、翌1861年、さまざまな品種をイギリス本国へ送ります。

そこからヨーロッパ各地で、菊の育種がさかんになりました。


ロバート・フォーチュンは、中国から茶の木をインドへ持ち出したことで知られる植物採集家です。

日本では、身分を問わず庶民が花を愛でる姿に驚いたと書き残しています。


その人が、日本の菊を持って帰った。

そして1940年代、アメリカで新しい形の菊が生まれます。

蕾を摘まずに、枝分かれした先へたくさんの花を咲かせるタイプ。

これがスプレーマムです。


ヨーロッパを経由して日本に入ってきたのが1974年。 最初に導入したのは、愛知県豊川市でした。

輪菊とくらべて手間がかからず、栽培期間も短い。

そこから全国へ広がっていきます。

菊が日本を出て、帰ってくるまで。1789年から1974年までの185年
菊が日本を出て、帰ってくるまで。1789年から1974年までの185年

伝来の年はキク(ウィキペディア)、日本への導入とその後はJAあいち経済連 あいちの花 スプレーマムによります。


なぜマムと呼ぶのか


菊の学名はChrysanthemum、クリサンセマム。

この後半を取ってマムです。


語源はギリシャ語。 chrysos が黄金、anthemon が花。 あわせて、黄金の花。


英語のmumには、おかあさんという意味もあります。

オーストラリアでは、母の日に贈る花になっているそうです。


同じ綴りの偶然が、そのまま文化になっている。


日本に昔からあるものは和菊、海外で改良されたものは洋菊。 売り場でマムと書かれているのは、だいたい後者です。


咲き方が、こんなにある


スプレーマムの面白さは、花の形が品種ごとにまるで違うところにあります。


一重咲き。 花びらが多くて華やかな、アネモネ咲きとデコラ咲き。

丸いボールのような、ポンポン咲き。

花びらの先がさじの形になった、スプーン咲き。


咲き方5種。中心のつくりと花びらの巻き方で分かれる
咲き方5種。中心のつくりと花びらの巻き方で分かれる

色も白、黄、ピンクだけでなく、赤、オレンジ、緑、複色まで。


一本の茎に、小さな花がいくつも付く。 だから切り花を一本買うだけで、そこそこの分量になります。


ドライフラワーにも向いています。


ここからが、庭の話


菊は、短日植物です。


昼が短くなり、夜が長くなると、葉がそれを感じ取って花芽をつくる。

だから秋に咲きます。


面白いのはここからで、夜の途中に少し光を当てるだけで、この花芽づくりが止まります。


暗期中断と呼ばれる現象です。

真夜中に電球を点けると、菊は夜が来たと認識しない。


これを逆手に取ったのが、愛知県の電照栽培です。


夜に光を当てて開花を遅らせ、出したい時期に合わせて光を止める。

年間を通して安定して出荷できるのは、この仕組みのおかげです。


菊が咲く夜と、咲かない夜。夜の長さではなく、途切れないかどうかで決まる
菊が咲く夜と、咲かない夜。夜の長さではなく、途切れないかどうかで決まる

仕組みの詳しいところは農研機構 キク電照栽培用 光源選定・導入のてびきにあります。


さて、ここで庭に戻ります。


門灯の下。 玄関ポーチの脇。 防犯灯が照らす通路際。


夜になっても明るい場所が、住宅の庭にはいくつもあります。


そこに菊を植えたらどうなるか。


理屈のうえでは、花芽ができにくくなります。

育ってはいるのに、いつまでも咲かない。


夜間照明が農作物に影響することは、環境省の資料にも書かれています。

ただ、そこで名前が挙がっているのは水稲とホウレンソウで、菊は出てきません。


庭の門灯くらいの明るさで実際にどこまで影響するかは、確かめられていません。

菊が咲かないとき、肥料や日当たりの前に、夜の明るさを一度疑ってみてください。


同じ資料に、庭屋として気になる一文がありました。


街路灯を樹木や植栽の近くに設置すると、生育や落葉期の遅れに影響する可能性がある。


落葉が遅れると、樹木の体力の低下につながることがある。


光は、植物にとって栄養であると同時に、時計でもある。



飾るときの、ひとつだけ



JAあいちのサイトに、長持ちさせる方法が紹介されています。


茎を、使う長さに手で折る。


はさみを使うより折り口がギザギザになって、水を吸い上げやすくなるそうです。

水に浸かる下葉は取り除いておく。

水は1日1回を目安に替える。


はさみを持つのが仕事の私たちが言うのもなんですが、これは折ったほうがいい。


秋のマムを飾るとき、ぜひ試してみてください。


和菊と洋菊、どちらが好きかという話ではなくて



菊花展に並ぶ大輪の和菊も、園芸店のポットに入ったマムも、元をたどれば同じ植物です。


片方は、一本の茎に一輪だけ咲かせるために、蕾を落として落として仕立てられてきた。


もう片方は、蕾を落とさず、枝先いっぱいに咲かせる方向へ進んだ。


人が手を掛ける向きが逆になっただけで、ここまで違う顔になる。


庭の木も、同じだと思っています。

同じ樹種でも、誰がどう手入れしてきたかで、二十年後の姿はまるで違う。


今年の秋、鉢を一つ置いてみませんか。


三重県四日市市、菰野町、桑名市を中心に、庭木の手入れと庭のご相談を承っています。 剪定屋空

 
 
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