食欲の秋。いろんな食べ物がおいしく、ついつい食べ過ぎてしまうような季節です。
そして秋の味覚の中でも王様的存在なのが、松茸。その香りの良さが万葉集にも歌われるほど、古くから人々に愛されてきました。
『高松の この峰も狭(せ)に 笠立てて 満ち盛(さか)りたる 秋の香のよさ』
昔の人の素朴な食欲の秋を感じさせる歌です。
旬は9月半ばから11月初め。生きた松の根に寄生することから、しめじやしいたけといった他のきのこ類のように人工栽培することが難しいとされています。そのため、天然物に頼るしかなく、逆にそれが季節感を失わない、この時期だけの楽しみになっていると言えるでしょう。
特に今年は夏の猛暑で日照時間が長く、また9月ごろからは雨も十分に降ったため、豊作の年だと言われています。その香りは食欲を誘い、がん予防にも働きかける可能性があるとして研究されているそうです。
王道の料理といえば、松茸ごはん。松茸ごはんにするときは、炊き上げる直前に松茸を入れることで、加熱しすぎで香りが飛んでしまうのを防ぐことができます。
身近な食材、とは言えないものなので、なかなか食べる機会がないのがつらいところですが、たまには旬の香りを嗅いで、昔から愛されてきた食材を味わってみるのも、食欲の秋ならではかもしれません。