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ミステリーと植物。一次元の挿し木 に登場する紫陽花 アジサイ クローン

執筆者の写真: 飯島 一郎
飯島 一郎
11 分前
読了時間: 5分

2026年夏に放映中のドラマ 一次元の挿し木。原作は2025年 このミステリーがすごい! 大賞 文庫グランプリ受賞の話題作でもあります。


雨に濡れるアジサイ
雨に濡れるアジサイ

ざっくりしたエピソードは、ヒマラヤ山中で発掘された200年前の人骨が、失踪した義理の妹のDNAと完全に一致という謎。関係者の不審な死や消えた過去の記憶、そして明かされる妹の正体と、二転三転する真実に驚かされる結末というヒューマンミステリー。


ストーリーが展開する中で、そこに登場する植物 紫陽花(アジサイ)にもスポットがあたり、紫陽花はクローンであるということもキーワードに。紫陽花は挿し木で増えるという性質から考えると、増えたアジサイは元のアジサイと遺伝子が同じ個体、ということ。


ソメイヨシノはクローンである、という話は良く知られている気がしますが、植物界において挿し木で増える植物、また球根が分球して増える植物、タネイモ、地下茎、ランナー、接ぎ木など考えてみればたくさん存在しますね。


動物、人間などのクローンというと怖いものというか未知のもの、という感覚もありますが、植物にとってはポピュラーなものなのだと気付かされました。


この物語の中に登場する女性の名は しはる。音で聴いているだけでは気付きませんでしたが文字で書くと 紫陽(しはる)。詳しくは書きませんが、まさに紫陽花(あじさい)を意味して名付けられたのか、と想像するとストーリーの核心にも繋がってきます。


アジサイの挿し木。同じ株から生まれた同じ遺伝子
アジサイの挿し木。同じ株から生まれた同じ遺伝子

クローンだから、一斉に咲く


ソメイヨシノが日本中でほぼ同じ日に咲くのは、偶然ではありません。


国立遺伝学研究所の解説に、ソメイヨシノは挿し木や接ぎ木でしか増やせないためどの木も遺伝的に同じ性質を持ったクローンとなる、そのため気象条件が同じ地域では一斉に開花する、とあります。挿し木でしか増やせない理由は自家不和合性、つまり自分の花粉では実を結ばないためです。




開花予想が成り立つのも、この性質があるからです。同じ設計図を持つ木が、同じ気温を受けて、同じ日に動く。桜前線というものが引けるのは、あの木がクローンだからでした。


クローンだから、一斉に弱る


そして、同じ理由で逆のことも起きます。


公益財団法人日本花の会の資料に、サクラ類てんぐ巣病について書かれています。病気の枝には花が咲かず、年々枝を増やしながら大きなかたまりになり、樹全体に広がると著しく衰弱して数年後には枯れてしまう。伝染源となる胞子は病気の枝についた小さな葉の裏側につくられ、花が散り終わった頃から飛散し始める、とあります。




一本が持っている弱点は、全部の木が同じように持っています。抵抗する個体が生まれる余地がないので、まん延を止める手立ては、見つけて外すことに限られます。厚木市や別府市の案内では、枝のコブより下から切り落とすこと、適期は冬(12月から2月)であることが示されています。




一斉に咲く景色と、一斉に弱るという性質は、同じことの裏表です。


庭に並ぶアジサイ。全部が同じ株の子かもしれない
庭に並ぶアジサイ。全部が同じ株の子かもしれない

庭のアジサイも、たいてい親戚です


ここからは庭の話です。


アジサイは挿し木がよくつく木です。だから一株を気に入って、そこから増やして庭を埋めていくことができます。実際、そうしてきた庭をよく見ます。


そして同じ庭のアジサイが、同じ年に、同じように傷むことがあります。うどんこ病が出るときも、そろって出る。株ごとの差が出にくいのは、遺伝子が同じだからかもしれません。


だから、増やすときにひとつだけ勧めていることがあります。全部を同じ株から挿さないこと。違う株を1つか2つ混ぜておく。景色としては誰も気づきませんが、何かが起きたときに全滅しない庭になります。


自然の側は、もっと徹底しています。


神戸市立森林植物園の資料に、ヤマアジサイには西日本型と東日本型があり、その境界は鈴鹿山脈の尾根とされている、とあります。東日本型は白花で、西日本型は青花。自然の中でも変異が多い、とも書かれています。




剪定屋空のある三重県菰野町は、その鈴鹿山脈のふもとです。白と青が入れ替わる線の上に住んでいることになります。同じ種でありながら、山ひとつ隔てて色が変わる。挿し木で増やした庭のアジサイには、そういう幅がありません。


庭を作るとき、揃えることを目指しがちです。ただ、揃えた庭は、揃って倒れます。少しだけ不揃いを残しておく。それが100年先まで庭を保つ考え方だと思っています。


美しく幻想的な紫陽花の咲く風景シーンも素敵なので、興味を持った方はドラマや本をチェックしてみてはいかがでしょう。


よくあるご質問


庭のアジサイを挿し木で増やしたいのですが、いつがよいですか。


梅雨の時期がよくつきます。その年に伸びた枝を使います。増やすときは、できれば違う株からも挿しておくと、病気が出たときに庭ごと傷むことを避けられます。


アジサイが毎年同じ病気になります。


株が同じ遺伝子だと、同じ弱点を持ちます。まず風通しを見てください。込みすぎた株は内側が乾きません。そのうえで、違う品種を混ぜていくことを考えます。


ソメイヨシノのてんぐ巣病はどうすればよいですか。


病気の枝を、根元のコブより下から外します。適期は冬です。外した枝はその場に置かず処分します。放っておくと数年で樹全体が弱ります。


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