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伐採した木で作る人工巣洞|切る仕事が、住処をつくる仕事に変わるとき

  • 執筆者の写真: 飯島 一郎
    飯島 一郎
  • 2月1日
  • 読了時間: 5分

更新日:6月10日

切り倒した後のモチノキが、まだそこにあります。根元近くを見ると、かつて何かが出入りしていたような跡がある。


天然の樹洞は、こうして失われていきます。

庭木や里山の手入れをしながら、ずっとそのことが気になっていました。今回は、その気持ちがかたちになった記録です。


人工巣洞とは何か


人工巣洞とは、樹洞を持つ木を人工的に再現した、野生動物のための住処です。フクロウ、シジュウカラ、ヤマネなど、樹洞を繁殖場所とする生き物は思いのほか多くいます。

都市化や管理伐採の進行とともに、天然の樹洞は年々失われています。その代替として住処を提供する取り組みが、世界各地で広がっています。


今回制作した人工巣洞は、伐採で発生した素材をそのまま再利用しています。処分されるはずだったモチノキが、次の命を支える素材になる。切る仕事と育む仕事を、もう一度つなぎ直したいと思っていました。


なぜ四角い巣箱では足りないのか


従来の四角い木製巣箱は設置しやすく普及しています。ただ内部の温度と湿度が急激に変化しやすく、外敵に対しても弱いという面があります。


板を組み合わせた均一な空間は、自然の樹洞が持つ厚みや複雑さを再現しにくいのです。

人工巣洞は、自然界の樹洞が持つ形状の不均一さ、厚み、素材の多様性を意識してつくります。野生動物が本能的に選ぶ環境に、できるだけ近づけるために。


素材を均一にしない理由


主材に使ったのは、伐採で出たモチノキです。太さも節の入り方も、表皮の状態も、一本一本違います。あえて揃えませんでした。

不均一さが、苔や微生物の定着を促します。小さな凹凸や木の個性が、やがて生態系の足がかりになっていくのです。


蔓、藤、麻縄といった素材は、一晩水に浸して柔軟性を取り戻してから使います。素材本来の性質に沿った手仕事です。


蔓で編む屋根


屋根部分は、放射状に立てた芯材に蔓を編み込んで成形しました。編み目は上部ほど密に、下部は粗く。


雨を弾きながら、内部の湿気は逃がします。この粗密が、機能として働くのです。


硬直した板材ではなく編む構造を選んだのは、曲線をつくるため。自然の樹洞に近い形は、直線の組み合わせでは生まれません。


麻縄と木釘、金属を使わない設計


本体と屋根の接合部には、麻縄を巻きました。装飾ではありません。


巻くことで空気層が生まれ、断熱材として機能します。風による細かな振動を吸収し、捕食者が爪をかけにくくする防御にもなっています。麻縄は劣化しますが、巻き直して交換できることを前提にした設計です。


金属の釘やビスは使っていません。木釘と木工ボンドだけで接合しています。


木は湿気で膨らみ、乾燥で縮みます。金属は木の動きを妨げますが、木釘なら収縮と膨張を柔軟に受け流せます。将来的に分解して内部を清掃し、部材を交換できること。それも、長く使い続けるための条件です。


内部はつくりすぎない


内部は滑らかに仕上げていません。チェーンソーやノミの跡を残しました。小鳥が足場にする、微細な凹凸です。


底部に水抜き穴を設け、湿気がこもらない構造にしてあります。自然の樹洞には、人が整えすぎた内部はありません。


つくりすぎないことが、野生動物に近づくための選択だと思っています。


トレイルカメラで記録する


設置した人工巣洞には、トレイルカメラを取り付けました。蔓編みの帽子で覆って、雨や光の反射を防いでいます。


カメラの存在感を、極力消すためです。観察が目的ではなく、記録が目的。営巣から巣立ちまでのプロセスを継続的に残していきます。


データが積み重なるほど、次の設計の精度も上がっていきます。


完成形と、これからのこと


完成した瞬間がゴールではありません。時間とともに苔や菌類が付着し、色は褪せ、やがて風景の一部になっていきます。


人工物でありながら、自然が忘れていく過程を含めてデザインする。そういう形を目指しています。


伐採木はただの廃材ではありません。次の命を支える素材になりえます。


切る仕事と育む仕事のあいだに立つ、ひとつの静かな提案です。





木鳥商店について


木鳥商店(ことりしょうてん)は、剪定屋空が運営するアップサイクルブランドです。庭や里山の手入れのなかで生まれる伐採木・剪定枝・蔓・竹など、本来は役目を終えた素材に、もう一度手を入れます。


野生動物のための人工巣洞や、暮らしに寄り添う木の道具として再生しています。


つくりすぎないこと、自然に任せる余白を残すこと。それが木鳥商店の核心です。


木鳥商店 オンラインショップ https://kotorino.theshop.jp

飯島一郎(剪定屋空 代表・環境再生医)執筆

よくある質問


人工巣洞と市販の巣箱は何が違うのですか?

市販の四角い巣箱は設置しやすく普及していますが、内部の温湿度変化が大きく、外敵に対して弱い面があります。人工巣洞は自然の樹洞が持つ厚みや不均一さを意識してつくるため、野生動物にとってより自然に近い環境を提供できます。


どんな動物が入りますか?

入口の直径によって入居する動物の種類が変わります。2.5〜2.8センチメートルならシジュウカラ、3.5センチメートルならスズメ、7.5〜8センチメートルならムササビが対象になります。設置する場所の環境に合わせて設計します。


メンテナンスはどのくらいの頻度で必要ですか?

年に1回、巣材の撤去と内部清掃が理想です。繁殖期の3〜7月は、巣箱に触れないようにしてください。麻縄が劣化した場合は巻き直します。木釘を使っているため、将来的に分解して内部を清掃することも可能です。

 
 
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