自宅庭園の小さな生態系バグホテル(インセクトホテル)の魅力と活用方法
- 飯島 一郎

- 2024年4月21日
- 読了時間: 8分
更新日:5月24日
都市環境における昆虫の多様性保全都市化が進む現代社会において、生物多様性の保全は大きな課題となっています。特に、昆虫の多様性は都市環境において脅かされています。
昆虫は生態系の重要な一部であり、受粉や物質循環などの役割を担っています。下の写真①をご覧ください。私たちが目にする草花はもちろん野菜や果物などの受粉を担うのは昆虫です。

都市化が昆虫の多様性に与える影響都市化は、野生生物のコミュニティの構造や多様性に悪影響を与える可能性があります。都市環境では、緑地の減少や断片化、人工構造物の増加などにより、昆虫の生息地が失われつつあります。
また、農薬の使用や外来種の侵入なども、昆虫の多様性に負の影響を与えています。その結果、都市部では昆虫の種数や個体数が減少し、生態系のバランスが崩れています。
昆虫がいなくなってしまうと当然ながら自然環境も維持できませんし、野菜などを食べることもできなくなります…。 そこで注目されているのが、「バグホテル」という概念です。バグホテルは、昆虫のための住処を提供することで、都市環境における昆虫の多様性を保全しようとする試みです。本記事では、日本の庭でバグホテルを活用する方法について解説します。
バグホテル(インセクトホテル)の役割と利用

バグホテル(インセクトホテル)は、昆虫のための人工的な生息地を提供することで、都市環境における昆虫の多様性保全に貢献できます。
バグホテルは、材木や竹、レンガなどを組み合わせて作られた構造物で、昆虫が産卵や休息、越冬などに利用できるようになっています。写真②をご覧ください。都市の限られた環境でも昆虫たちにとっては貴重な生息環境になっています。先ほど紹介したバグホテルに比べるとやや簡素な作りですが少しの工夫や配慮で、昆虫たちの暮らしやすい環境を整えることができます。


バグホテルを設置する際は、地域の気候や環境に合わせて、適切な材料や構造を選ぶことが重要で す。また、バグホテルだけでなく、周囲の環境も昆虫にとって魅力的なものにすることが大切です。在来種の植物を植えたり、水場を設けたりすることで、昆虫の多様性をさらに高めることができます。三重県の在来種の昆虫には、バグホテルに入る可能性の高い種が多数存在します。

クモ類、カマキリ類、バッタ類、カメムシ類、トビケラ類、チョウ類、コウチュウ類、ハチ類など、様々な分類群の昆虫がバグホテルを利用すると考えられます。ただし、バグホテルに入る昆虫の種類や数は、設置場所の環境条件や周辺の植生、季節などに大きく依存するため、地域に合わせた対応が必要です。
三重県の在来生物クモ目ジグモ、ヒラタグモ、マネキグモ、アシブトヒメグモ、アシナガグモなど。クモ類は隙間や穴を好むため、バグホテルの構造に適しています。カマキリ目ハラビロカマキリ、コカマキリ、オオカマキリ。カマキリは木の枝や茎に擬態することが多いので、木材や竹を 使ったバグホテルに引き寄せられる可能性があります。
バッタ目ツユムシ、ウスイロササキリ、ケラ、スズムシ、カネタタキなど。バッタ類は植物の茂みを好むため、バグホテル周辺の植生が重要です。カメムシ目カメムシ類は植物の茎や葉の裏に隠れることが多いですが、バグホテルの隙間にも入り込むことがあります。トビケラ目コガタシマトビケラ、ヒゲナガカワトビケラ、カワムラナガレトビケラ、ニンギョウトビケラなど。
トビケラ類の幼虫は水生ですが、成虫は陸上で羽化するため、バグホテルを利用する可能性があります。チョウ目イモキバガ、コホソスジハマキ、イチモンジセセリ、ウラギンシジミ、モンキチョウなど。チョウ類の多くは植物に依存していますが、樹皮の隙間や枯れ葉の下で休息することもあるため、バグホテルに引き寄せられることがあります。
コウチュウ目アオドウガネ、ヒラタドロムシ、ジョウカイボンなど。コウチュウ類は多様な生息環境を利用しますが、朽木や土壌を好む種はバグホテルに引き寄せられやすいです。ハチ目ニホンチュウレンジ、ミノオキイロヒラタヒメバチ、クロオオアリ、キアシトックリバチなど。ハチ類の中には、木材や土壌に巣を作る種もいるため、バグホテルを利用する可能性があります。
バグホテルに入る昆虫の種類や数は、設置場所の環境条件や周辺の植生、季節などに大きく依存します。さまざまな材料や構造を組み合わせ、周辺環境を整えることで、多様な昆虫を引き寄せることができるでしょう。また、バグホテルを定期的に観察し、利用状況をモニタリングすることも大切です。バグホテルの効果バグホテルは、在来のポリネーター(受粉者)の保護に役立つ可能性がありますが、その効果についてはさらなる研究が必要とされています。都市環境における昆虫の多様性保全に貢献する可能性のあるツールとして期待されていますが、まだ十分な研究が行われていないのが現状のようです。
そこで、私たちがバグホテルの設計と効果の関係• 材料や構造、設置場所などの条件が、昆虫の利用状況に与える影響をしっかり調べて、その効果を明確にしていきたいと考えています。そのためにも今後は、次の点について取り組んでいきます。
●地域や環境に応じた最適なバグホテルの設計指針を確立する。
●長期的なモニタリング
●バグホテルの設置前後で、昆虫の種数や個体数の変化を長期的に追跡する。
●バグホテルが都市環境における昆虫の多様性保全に与える影響を評価する。市民参加型の研究
一般市民がバグホテルを設置し、昆虫の観察データを収集する。
●市民科学の手法を活用し、大規模なデータ収集と分析を行う。
これらの研究を通じて、バグホテルの効果や最適な利用方法が明らかになることが期待されます。また、バグホテルを通じて、都市環境における昆虫の重要性や生物多様性保全の意義について、市 民の関心や理解を高めることも大切です。

余談になりますが現在、私たちは、三重県の大和ハウス工業の三重工場において、ビオトープの自然環境について市民参加のもとに地域の自然との関連性について検証しています。
バグホテルと同様に取り組みの効果を検証することは活動の効果を客観的に捉えることができることは当然ながら参加する市民の方へ調査結果を共有するうえでも非常に大切です。協働で取り組んだことの効果をしっかり伝えることで、活動への理解、共感を得ることができ、活動に対する継続的な参加の要因の1つになっていると感じています。
下記にある資料は、ご自由にお使いください。
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剪定屋空
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「昆虫がいなくなってから考える」のではなく、「昆虫が暮らせる場所を先につくる」。バグホテルはその最初の一歩です。
バグホテルが効く理由 — 科学が示すこと
「ただ作って置けばいい」のではなく、「なぜ効くのかを知ってから置く」と管理が変わります。
英国の大規模調査(2024-2025年 / Big Bee Hotel Experiment): 594箇所のビーホテルを追跡調査。空洞営巣性ハチの定着・繁殖に有効と確認。素材の多様性と設置場所の環境条件が利用率を左右することが分かっています。
オーストラリアの研究(2024年 / NCBI掲載): 山火事後の森林5箇所に1,000個のビーホテルを設置したところ、全ホテルに巣が形成され900以上の巣が占有されました。在来ハチの個体数がビーホテル設置地点で有意に増加しています。
注意点: 1か所に密集して設置すると寄生虫や病気のリスクが高まります。1つの庭に2〜3個程度、分散して設置するのが推奨されています。(出典: Biodiversity Science 2024 / Big Bee Hotel Experiment 2025 / NCBI)
日本では鹿島建設がグリーンインフラとして都市部へのインセクトホテル導入を進めており、岩手県奥州市では「虫のホテルをつくろう」市民ワークショップも開催されています。

バグホテルについてよくある質問
Q. バグホテルはどんな材料で作れますか?
A. 竹の切れ端・枯れ枝・松ぼっくり・樹皮・枯れ葉などの廃材で作れます。木製パレットを枠にして中を詰める方法が手軽です。大切なのは「素材の多様性」。空洞のサイズを変えることで、異なる種の昆虫を呼び込めます。
Q. バグホテルの設置場所はどこがよいですか?
A. 南向きの日当たりが確保でき、風雨が当たりにくい場所が理想です。壁や生垣に立てかけるか、地面から30〜50cm程度の高さに設置すると昆虫が利用しやすくなります。周囲に在来種の植物があると効果が高まります。
Q. 管理・メンテナンスは必要ですか?
A. 年1〜2回の点検が必要です。カビや寄生虫が増えると昆虫の天敵になるため、傷んだ素材は入れ替えてください。ただし、冬はそのまま放置が基本。越冬中の昆虫を起こさないよう、冬の大掃除は避けましょう。(出典: Sierra Club / Homes and Gardens)

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