top of page

栗の花の匂いの独特な匂いの正体とは?虫を呼ぶ生存戦略

  • 執筆者の写真: 三重県剪定伐採お庭のお手入れ専門店 剪定屋空
    三重県剪定伐採お庭のお手入れ専門店 剪定屋空
  • 4 時間前
  • 読了時間: 4分

6月の里山や庭園で、クリの木が白い穂状の花を咲かせる。その近くに立つと、動物的な、少し刺激的な、れでいてどこか野性的な香気が漂ってくる。


あの独特の匂いに戸惑う人は多い。しかしその香りは、クリが何万年もかけて磨き上げた生存戦略の産物です。化学成分から生態学的な理由まで、掘り下げてみました。


クリの雄花の花穂 里山で初夏に咲く白い穂状の花

クリの雄花と雌花―小さな花の大きな役割


クリが開花するのは6月中旬から7月上旬。枝先から垂れ下がるように伸びる長さ10〜15cmの白い穂が雄花。


あの強い香りはすべてこの雄花から放散されている。一方、雌花は雄花穂の根元にわずか数個しかついていない。目を凝らさないと見つからないほど小さい。この数の非対称さが、クリの受粉戦略を複雑にしている。


あの独特な香気の正体――フェネチルアミン


2018年、Springer Natureの学術誌(Analytical and Bioanalytical Chemistry)にクリの花の香気成分を分析した研究が発表された。


主成分はフェネチルアミンというアミン化合物。フェニルアラニンというアミノ酸が植物内の酵素によって変換されて生成される物質で、腐った魚・発酵食品・動物の糞尿にも含まれる成分だそうです。


さらに2-ビニルピリジンをはじめ計28種の揮発性成分が混合した結果、あの刺激香が生まれる。ネット上でよく見られるスペルミンが原因という説は誤りで、実際は複合的なアミン・カルボニル化合物の混合物だということが分かっている(参照: 熊本大学 2022年研究)。


クリが抱える問題―自家不結実性


クリには自家不結実性という性質がある。同じ品種の花粉では実を結べず、隣に植えられた別品種の木から花粉が届いて初めて栗の実が生まれる。しかも雌花の数は雄花に対して極端に少ない。受粉のチャンスは非常に限られている。


花粉の70〜80%は風によって運ばれる風媒だが、それだけでは十分ではない。残りをハチ・ハエ・甲虫などの虫に頼る仕組みが必要です。そのためにクリが選んだ手段が、あの独特の香りです。


クリの自家不結実性と送粉メカニズムを示した図

ハエの本能を利用するクリの巧みな戦略


フェネチルアミンは腐敗物・糞便の匂いに似た成分でハエや甲虫は産卵場所を探すとき、この成分を腐敗有機物があるというシグナルとして感知する。クリはそこには何もないのに、あえてこの匂いを放ち虫を引き寄せる。


これは腐敗擬態(sapromyiophily)と呼ばれる送粉戦略の一種でラフレシアやザゼンソウなどにも見られる戦略だが、クリはより精巧な形でこれを実現している。花に集まった虫たちは、知らないうちに異品種間の橋渡し役を担っている。


ハチがクリの花穂に集まる様子 花粉を媒介する昆虫の生態

世界でも同じ香りを持つ植物がある


アメリカで観賞用として広く植えられているカリエリナシ(Bradford pear)は同種の香りを持ち、その強烈さから一部の州では街路樹としての植樹が禁止されている。


地中海沿岸のイナゴマメ(carob)も雄花が同様の刺激香を持つことが知られている。あの匂いはクリだけの特徴ではなく、虫媒に依存する複数の植物が選んできた生存の香りということです。


里山の風物詩として―クリの花が咲く季節


三重県北部の里山では、6月中旬になるとコナラやクヌギに混じってクリの木が白い花穂を伸ばす。あの独特の香りは、その場所の生態系が生きている証拠でもある。


ハチが集まり、ハエが動き、風が花粉を運ぶ。その複雑なネットワークの上に、秋の栗の実は成り立っている。


秋の毬栗 里山の恵みとしてのクリの実

よくあるご質問


クリの花の香りはいつ頃まで続きますか?

6月中旬から7月上旬の開花期間中のみ漂います。花が終わると匂いも消えます。気温が上がる日中に特に強くなる傾向があります。


あの香りは体に悪いのでしょうか?

フェネチルアミン等のアミン類は自然界に広く存在する成分です。短時間の接触では健康への影響はありません。ただし香りに敏感な方は不快に感じることがあります。


クリの木は1本だけでも実がなりますか?

自家不結実性があるため、原則として近くに別品種のクリが必要です。1本だけでは実がほとんどつかない品種がほとんどです。庭にクリを植える場合は異品種を2本以上近くに配置することをお勧めします。


庭木の管理・植栽についてのご相談は、剪定屋空の年間管理サービスへ。三重県菰野町を中心に、四日市・鈴鹿・桑名・津など三重県全域で対応しています。


 
 
bottom of page