亀山市生物多様性共生区域の審査に向けて。法因寺竹林を案内させていただきました。
- 三重県剪定伐採お庭のお手入れ専門店 剪定屋空

- 7月28日
- 読了時間: 4分
更新日:8月18日
2025年7月28日、剪定屋空では、三重県亀山市が推進する「生物多様性共生区域認定」の現地確認に立ち会わせていただきました。この日は、亀山市産業環境部 生物多様性・獣害対策室のご担当者様、そして認定審査に関わる審査員の皆さまにご同行いただき、法因寺様の竹林をご案内させていただきました。

やや緊張しながらも、現在の竹林整備の進捗や、生物多様性を高めるための管理手法、そして行っている調査の具体的な内容について直接現地でお伝えする貴重な機会となりました。
■亀山市生物多様性共生区域認定制度とは?
令和5年度より亀山市が導入した制度で、市内の自然環境の中で特に生物多様性の価値が高い区域を認定し、保全や再生の取組を支援していく制度です。在来種の保護や地域生態系の再構築に焦点が置かれおり、法因寺竹林は、その候補地のひとつとして、認定を目指した整備と調査などを進めております。


この竹林では、真竹が90%以上を占める過密状態にありました。そこで、環境の多様性を回復させるために、生態系への影響を最小限に抑えながら、広葉樹林へと移行するための段階的な竹林整備を実施しています。
■主な課題
過密な真竹による下層植生の消失
土壌の乾燥・痩せ化
多様な動植物が生息しにくい環境
林縁からの拡大や外来植物の侵入
これらの課題を踏まえ、法因寺竹林では生物多様性を高めるための段階的な整備と調査を組み合わせた再生プロジェクトを展開しています。
■年間を通じた竹林整備スケジュールと手法

2024年4月から本格的な整備を開始し、以下のような四季に応じた作業とモニタリングを行っています。
春(4〜5月)
筍の選択的除去(約70%除去):特に林縁部の拡大を防止
実生樹木(ムクノキ、アオキなど)の保護と周辺の下草整備
夏(6〜8月)
トレイルカメラとピットフォールトラップを用いたモニタリング開始
強風・台風後の倒竹処理と枯死竹の除去
ピットフォールでヤスデ類、ヒメフナムシなどを確認(2025年5月現在)
秋(9〜11月)
外来種を中心とした選択的下刈り
在来草本類や幼木の保全を意識した丁寧な作業
翌年度に向けた作業動線の整備
冬(12〜3月)
過密部の竹を段階的に間伐(年15〜20%ずつ)
目標密度は250本/10aを目指して調整中
間伐材の枝をマルチング材などに再利用
■土壌環境の保全と育成への配慮

土壌の安定化や多様性のある植生のため、以下のような手法も取り入れています。
「しがら・ぼさ」工による斜面保護(2027年実施予定)
広葉樹林からの落葉導入による腐葉土形成
EM菌などによる微生物活性の促進も視野に(模索中)
竹をチッパーにかけて竹パウダーが竹チップを土壌に撒き雑草の抑制や腐葉土化を図る
■広葉樹林への移行と地域性苗木の導入
自然更新による実生の成長を促しながら、将来的には以下の在来種を補植など自然植生に配慮しながら植栽を考えています。
高木層:ケヤキ、ムクノキ、エノキ
低木層:ヤブツバキ、カクレミノ、シロダモ
竹林生物多様性モニタリングと調査結果

複数の調査手法を組み合わせて、整備の効果や生物相の変化を可視化しています。
調査手法:
コドラート法(5×5m):植生の種構成と被度を記録
ラインセンサス法:鳥類(メジロ、シジュウカラなど)を目視・聴取で確認
ピットフォールトラップ:地表性昆虫やクモなどの捕獲
トレイルカメラ:哺乳類(イノシシ、シカ、ハクビシンなど)の出現頻度を把握予定
2025年春の新規確認種(一部):

アケビ、ウバユリ、タラノキ、ミヤマニガイチゴ、マムシグサ、イノデ など
■ 今後の展望:多様な生きものが棲む森へ 竹林は根絶するのではなく共生できる環境へ

竹林を多様な動植物が生息できる環境に再生するには、以下のようなステップが重要です。
段階的な間伐で光環境を調整
落葉広葉樹の導入と実生の保護
水場の保全や湿地の創出による両生類への配慮
しがらやぼさ工など自然素材による土壌の安定化
野鳥誘致のため人口巣洞設置
整備に伴う竹の伐採や管理が一過性のものではなく、環境変化に応じて柔軟に見直していく順応的管理が、豊かな自然環境をつくるためのカギとなります。これは庭やすべての自然環境に通づるもので、日頃から環境の変化の把握や記録をこれからも心がけていきます。
■ 最後に
本日の現地立ち合いを通じて、私たちの取り組みを直接見ていただけたこと、そして自然と人との新たな関係性を築くための一歩を共有できたことに、心より感謝申し上げます。
世の中にはいろいろな自然との向き合い方がありますが、私達は少しでも多くの自然環境に触れながら知識やデータを蓄積、活用しながら自然と人とが調和できる施工や手法などを取り入れていきます。 毎回同じ管理ではなく変化を感じられる様な環境管理を目指していきます。
この竹林が地域の生態系ネットワークのハブとなり、未来の子どもたちに豊かな自然を引き継いでいける場所となるよう、今後も地道な管理と記録を積み重ねてまいります。







