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三重県亀山市にて竹林管理と生物多様性調査・亀山市生物多様性共生区域認定に向けて

  • 執筆者の写真: 三重県剪定伐採お庭のお手入れ専門店 剪定屋空
    三重県剪定伐採お庭のお手入れ専門店 剪定屋空
  • 3月21日
  • 読了時間: 7分

三重県亀山市にある真竹が優占する過密状態から、生物多様性に配慮した広葉樹林へ段階的に移行させる取組を進めさせていただいております。


今回は亀山市が行う「生物多様性認定共生区域」の認定を目指し、市の方と打ち合わせ行いました。


亀山市生物多様性共生区域認定制度について


亀山市では令和五年から「生物多様性共生区域認定制度」を導入し、在来種を保護する取り組みを進めています。令和五~六年度末までに10区域の認定を予定しており、今回お伺いした竹林も、その認定を視野に入れて管理を進める計画です。


今回の竹林は真竹が優占し、90%が竹で構成されるほどの過密状態です。こうした竹林は、生物多様性の低下や土壌浸食のリスクをもたらします。


  • 過密化による土壌の痩せ・生物多様性の低下

  • 周辺でのゴミ投棄や環境悪化の懸念


段階的な竹稈の間伐や下刈り、広葉樹の自然更新・補植、土壌保全などを組み合わせ、持続的に豊かな森へ再生していく計画です。


竹林の調査としてコドラート法・ラインセンサス・ピットフォールトラップ・トレイルカメラという4つの調査方法を組み合わせた生物多様性評価を考えており今回設置できるものは設置させていただきました。


竹林管理の背景と概要


1-1. 竹林の現状


  • 主な優占種:真竹 一部孟宗竹

  • 混交樹種:ニレ、木としてムクノキ、イヌビワ、アオキ、タラノキ、マキ、ヤブツバキ、カクレミノ等を確認。


1-2. 竹林管理の目的と流れ


  • 目的:

    1. 生物多様性の維持・向上を図りながら、放置竹林の過密化を緩和する。

    2. 土壌や周辺環境を守りつつ、在来広葉樹が育ちやすい環境へ段階的に転換する。

    3. 亀山市が行う生物多様性認定共生区域への認定を目指す。


  • 管理の流れ(一年目~二年目以降)

    1. 事前調査(6~8月):竹林の密度、混交樹種、下層植生などを調べる。

    2. 歩行ルート・作業ルート設定(10月):安全かつ効率的に管理するための経路を確保。

    3. 低木・草本層の選択的刈払い(11月):過密な下草や低木を抑制し、光環境をコントロール。


    4. 竹稈の間伐・枝打ち(12~2月):枯死竹や過密部分を伐採し、搬出を行う。

    5. 竹の子折り(4~5月):新たに伸びる真竹の勢いを抑制。

    6. モニタリング調査(6月、随時):植生や動物相の変化を観察し、次年度の管理にフィードバック。


このような段階的管理を継続しながら、竹林→広葉樹林への移行を目指していきます。



生物多様性を把握するための調査手法


竹林の管理効果や、生物多様性向上の度合いを客観的に把握するためには、複数の調査手法を組み合わせると有効です。ここでは、コドラート法・ラインセンサス・ピットフォールトラップ・トレイルカメラの4つを紹介します。


コドラート法(Quadrat method)



目的:

  • 竹林内の植生(下層草本や幼木)を定量的に評価し、管理前後でどのように変化しているかを把握する。


方法:


  1. 区画の設置

    • 1m×1mなどの正方形区画を、竹の間伐エリア(処理区)と未間伐エリア(対照区)に複数設定。

    • 四隅を杭やポールでマーキングし、毎回同じ場所で調査を繰り返せるようにする。

  2. 調査内容

    • 区画内の植物種をリストアップ(草本、低木、幼木など)。

      今回確認で来た樹種 シュロ、ユフイチゴ、キヅタ、イラクサ、ナンテン、ハラン、ヤブニンジン、セイヨウダイコンソウ、タマシダ、ササ、サンゴジュ、アオキ、ヤツデ、ヤブニッケイ、フモトシダ、ミツバアケビ

    • 各種の個体数、被度(地表をどの程度覆っているか)、樹高(草丈)などを記録。

    • 季節や年ごとに比較し、種数や優占種の変化を確認する。



得られる成果:


  • 下層植生の多様性や健全度を数値で把握できる。

  • 竹の間伐や下刈りなど、施業が植生に与える影響を客観的に評価しやすい。



ラインセンサス(Line Census)




目的:

  • 竹林全体を一定ルートで歩きながら、目視や聴取で確認できた動植物を大まかにリストアップする。


  • 短時間で広いエリアの傾向を把握できるスクリーニング調査。


方法:


  1. ルートの設定

    • 竹林の周回路や作業道、境界など、あらかじめ定めたルートを一定速度で歩く。


  2. 確認項目


    • 鳥類:鳴き声や視認した種を記録(メジロ、ヤマガラ、シジュウカラなど)。

    • 小型哺乳類の痕跡:足跡、フン、食痕を発見次第メモ。

    • 昆虫:目につく甲虫や蝶、バッタ類などの目視確認。


  3. 時期・注意

    • 早朝や夕方は鳥類が活発に活動。天候や気温などにも左右されるので、同条件になるように実施すると比較がしやすい。


得られる成果:


  • 手軽で広範囲の生物多様性をざっくり把握。

  • どのような動植物が竹林内に多いのか、季節の変化を含めた大まかな傾向をつかむ。



ピットフォールトラップ(Pitfall Trap)


ピットフォールトラップ(Pitfall Trap)


目的:


  • 竹林の地表を歩く小型無脊椎動物(昆虫、クモ、ワラジムシ、ムカデなど)を捕獲し、土壌環境や落葉層の生物相を簡易的に評価。


方法:


  1. トラップの設置

    • 地面にカップやビンを埋め、周囲と同じ高さにする。上部は開けたまま。

    • 雨が入りすぎないように、小さな屋根や斜めに板をかぶせるなど工夫する。

  2. 回収と同定

    • 1日~数日ごとにトラップを回収し、落ちた生物を種類ごとに仕分け。

    • 必要に応じて写真を撮り、図鑑や専門家の協力で同定する。

  3. 季節・環境の比較

    • 竹を伐った後や下刈り後で、地表動物が増えたり種類が変わったりする場合がある。



    ピットフォールトラップ(Pitfall Trap)

得られる成果:

  • 地表性生物相の多様性をざっくり把握。

  • 竹林から広葉樹林へ移行していく過程で、落ち葉や腐葉土層が増加するかどうかの指標にもなる。



トレイルカメラ(Trail Camera / Camera Trap)


トレイルカメラ(Trail Camera / Camera Trap)


目的:

  • 主に中~大型哺乳類(イノシシ、シカ、タヌキ、ハクビシンなど)の生息・活動を自動撮影で把握。

  • 伐採や下草管理によって動物の利用頻度がどう変わるかをモニタリング。

方法:

  1. 設置場所選定

    • 動物の通り道(獣道)や、水場、竹林境界などを狙ってカメラを設置。

    • カメラの高さは対象動物の体高に合わせて設定。

  2. 記録設定

    • 動体検知(センサー)で自動撮影または動画撮影。夜間は赤外線モードを使用。

  3. データの回収・分析

    • メモリーカードを定期的にチェックし、何の動物がいつ撮影されたかを記録。

    • 大型哺乳類の増減や行動時間帯などを把握し、被害対策や保護策を検討できる。

得られる成果:

  • 大型動物の存在確認・出現頻度。

  • 外来種(ハクビシン、アライグマ)やシカ・イノシシの過剰な増加の早期発見。

  • 竹林整備が野生動物の生息環境に与える影響を評価し、順応的に管理を見直す。


総合評価と今後の展望


手法を組み合わせるメリット


  • 多層的な生物相の把握

    • コドラート法で植生、ピットフォールで地表生物の確認、トレイルカメラで中~大型動物、ラインセンサスで広範な生物の目視確認。


  • 管理効果の可視化


    • 竹林から広葉樹林へ移行する過程で、照度や落葉層、食物資源が変化し、それらが生物の多様性や個体数にどう反映されるかを客観的に分析できる。


  • 長期的な里山再生の基盤

    • 伐採や下刈り、補植の効果を数値や映像で記録し、地域住民や行政、専門家と情報共有することで、持続的な里山保全活動へつなげやすい。


生物多様性認定共生区域への申請と順応的管理


  • 認定申請


    • モニタリング結果を報告書やデータとしてまとめ、竹林がもつ生物多様性の価値を客観的に示す。


    • 亀山市の生物多様性認定共生区域にふさわしい環境かどうかを評価し、専門家の意見も取り入れながら申請書類を作成。


  • 順応的管理(Adaptive Management)

    • 調査結果を次年度の施業計画に反映し、間伐や下草刈りのタイミング・強度を柔軟に調整。

    • 外来種や害獣の増加など、新たな課題に対して迅速に対策を講じる。





真竹の過密状態を緩和しつつ生物多様性を高めるため、段階的な間伐やモニタリング調査を剪定空では進めさせていただこうと思います。


具体的な管理フロー(低木・草本層の仮払い、竹稈の伐採、竹の子折りなど)とともに、コドラート法・ラインセンサス・ピットフォールトラップ・トレイルカメラといった調査手法を組み合わせることで、植生から大型動物まで幅広い生物相を把握できることがポイントです。


調査で得られたデータを活用し、生物多様性認定共生区域の申請や持続的な竹林管理に役立てることで、地域環境の保全と、将来的な広葉樹林への移行による多様な生態系の復元が期待されます。


今後も定期的なモニタリングを行い、順応的管理を続けることで、竹林が多くの動植物のすみかとなる豊かな里山へと再生させていきます。

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