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クビアカツヤカミキリの拡大予測 全国の20年と、三重県のこれから

執筆者の写真: 飯島 一郎
飯島 一郎
1 時間前
読了時間: 7分

更新日:12 分前


クビアカツヤカミキリの拡大が、今の勢いのまま続くとどうなるか。公開されているデータで計算すると、20年後には被害のある地域が今の約6倍になります。三重県では、10年後に北半分の平地、20年後には県の南部まで広がる計算です。


これは予測です。この速さが続いたらどうなるか、という見取り図で、決まった未来ではありません。そのうえで、何を根拠にした数字なのか、どこまで当たるのかを順に書きます。図はボタンを押すと動きます。



三重県の今の区分と、庭での見つけ方は、三重県のクビアカツヤカミキリ|被害9市町と備える5市町にまとめています。


ここまでの広がり


国内で初めて被害が確認されたのは2012年、愛知県です。国の防除戦略によると、2026年9月の時点で被害は22都府県、300を超える市町村に広がっています。2026年に入ってからだけで、山梨県、福井県、長野県、岐阜県、岡山県、香川県の6県で新しく見つかりました。


一度入った町で、被害がどうなっていくかも数字があります。群馬県は市町村ごとの被害本数を毎年公開しています。


群馬県全体の被害木は、平成29年度の682本から、令和7年度は13,927本になりました。8年で約20倍です。前の年度からだけでも3,419本増えています。


県内で最初に見つかった館林市では、令和元年度から7年続けて、被害木が毎年1,200本を超えています。駆除を続けていても、入った町から被害木がなくなってはいません。


幼虫は生きている木の中を食べて育ち、被害が進むと木は弱って枯れます。枯れた木は枝が落ちたり、倒れたりするおそれがあります。被害に遭うのは、サクラ、ウメ、モモ、スモモ、アンズなどです。



計算のしかた


日本の地図を約10km四方のマスに区切りました。全部で3,868マスあり、今被害があるのは194マスです。


今被害があるとしたのは、国の防除戦略にある被害市町村309、GBIFとiNaturalistの観察記録のうち位置の精度が5km以内の122件、三重県の5kmメッシュ地図の印です。


1年ごとに、被害のあるマスから次の3つの広がり方で、まわりのマスへ広げていきます。


歩いて隣のマスへ。国の防除戦略には、新たな被害地域の多くは既被害地から3km以内で発生している、とあります。


3〜40km先へ飛ぶ。同じ戦略に、40km程度飛び地的に被害が発生する事例もある、とあります。回数は、戦略の一覧にある飛び地の市町村9から決めました。


40〜200km先へ運ばれる。被害木を動かすなど、人の手で遠くへ移る場合を考えたものです。回数は、新しい県で見つかったペースから決めました。


被害木の丸太を積んで運ぶ軽トラックの鉛筆スケッチ
遠くへ運ばれる広がり方。被害木を動かすと、中の幼虫も一緒に動く

寒さについては、今いちばん寒い被害地より冬が寒いマスには入らない、としました。今いちばん寒い被害地は群馬県片品村のマスで、12〜2月の平均気温は-4.62℃です。


どこへ飛ぶかは年ごとに変わるので、同じ計算を200回くり返しました。地図の色は、200回のうち何回そのマスに被害が出たかの割合です。


このままだと20年後



今の勢いが続くと、被害のあるマスは10年後に657、20年後に1,169になります。20年後は今の約6倍です。


200回のうち半分以上で被害が出る地域を見ると、10年後には静岡県と福島県に、20年後にはさらに新潟県、高知県、鳥取県に入ります。被害のある都府県は、20年後に22から32になる計算です。増える10県のうち、上の5県を除いた残りの5県ほどは、遠くへ運ばれる回がたまたま当たった県で、どの県になるかは計算ごとに変わります。


飛び地へ飛ぶことと、遠くへ運ばれることを止められた場合も計算しました。20年後は828マス、都府県は25です。何もしない場合との差は341マスで、20年後の被害の約3割は、飛び地と持ち出しから来ることになります。国の戦略が、飛び地は見つけてすぐ初期防除を徹底すれば短期間で根絶できる可能性があるとして、最優先で対策する地域にしているのは、この部分に当たります。


寒さで入れないマスは、山の上より北日本に多く出ました。山で止まるというより、北で止まる形です。


この計算は当たるのか


予測が当たるかどうかは、過去で試せば分かります。埼玉県は年度ごとに新しく被害が出た市町村の名前を、群馬県は市町村ごとの被害本数を公開しているので、この2県で試しました。


2021年度の時点に立ったつもりで、それまでの広がり方から速さを決め、その先の2022〜2025年度を計算して、実際と比べています。



1年先と2年先は、実際の数が計算の幅の中に入りました。3年先と4年先は、実際のほうが多くなりました。2025年度は、計算が40マス(35〜46)に対して、実際は51マスです。


場所については、計算が新しく被害が出ると言った19マスのうち、13マスで実際に被害が出ました。68%です。同じ地域のマスを無作為に選んだ場合は39%なので、どこに広がるかの見当は、この計算でかなりつきます。


一方で、広がる速さは実際のほうが上でした。1〜2年先ならこの計算で読めますが、その先は少なめに出ます。このあと書く三重県の数字も、控えめな側の数字として読んでください。


伸びが速くなったのが、虫の広がりが速くなったからなのか、調べる人が増えて見つかるようになったからなのかは、この資料からは分けられません。


三重県のこれから


全国の計算では、市町村を役場の位置1点でマスに置いています。これだと三重県で被害のあるマスは6でした。三重県の5kmメッシュ地図の印を足すと12になります。伊賀市や津市のような広い市では、役場から離れた場所の被害が抜けていました。



今被害がある12マスは、いなべ市、桑名市、四日市市、津市、伊賀市、名張市、明和町にかかっています。明和町の印は成虫だけの報告で、ほかの被害地から離れた場所です。


埼玉・群馬で速さを決めた計算で、近い先を出しました。


1年後(2027年9月ごろ)16マス(14〜18)

2年後 21マス(18〜24)

3年後 26マス(22〜30)


2年後までに新しく被害が出る見込みが半分を超えるのは、四日市市、伊賀市、津市、亀山市、鈴鹿市のマスです。3年後には松阪市のマスも入ります。


長い計算では、三重県の55マスのうち、10年後に32マス、20年後に52マスです。10年後には亀山市、鈴鹿市、松阪市から伊勢市のあたりまで、20年後には志摩市、鳥羽市、尾鷲市、熊野市など県の南部まで入ります。マスの中心がどの市町にあるかで見ているので、市町の名前はおおよそです。


菰野町について書いておきます。10kmのマスでは、菰野町は四日市市などと同じマスに入るので、町だけを分けて言うことはできません。県の地図では、成虫だけの報告を示す三角が、菰野町役場のある区画に付いています。この区画は四日市市の西の端も含んでいて、どちら側の報告なのかは地図からは分かりません。国の区分では、菰野町はまだ被害の出ていない側に入っています。



先に置いた予測


三重県の地図は、古い版が残っていませんでした。県のページも、ウェブの保存記録も、同じ名前のファイルで上書きされています。なので三重県では、過去から計算して今と比べることができません。


代わりに、上の1〜3年後の数字を2026年9月28日の日付で記録しました。三重県の地図が更新されるたびに保存して、ここに書いた数字と比べます。


外れるほうがいい予測です。実際が小さく済めば、県や市町の対策が効いているということです。


見回りは6月上旬から


サクラの幹に止まるクビアカツヤカミキリ成虫の鉛筆スケッチ
首(前胸)が赤く、体は黒くつやがある。体長は2〜4cm

成虫が出る時期も、気温から計算しました。大阪府の手引にある羽曳野市の記録(初めて出るのが6月10日前後)を物差しにして、暖かさの積み重ねが同じになる日を各地で数えています。



四日市(菰野の近く)初めて出るのが6月19〜24日、多く出るのは7月4〜19日

桑名 初めて出るのが6月13〜17日

亀山 初めて出るのが6月20〜25日


ただ、森林総合研究所の資料は、6月初旬(春の早い年は5月末)から出ると書いていて、この物差しは1〜2週遅めに出ます。庭のサクラやウメは、6月上旬から幹を見てください。


サクラの根元にたまったフラスを見る人の鉛筆スケッチ
根元にたまる木くずと糞の混ざったもの(フラス)が、いちばん見つけやすい手がかり

成虫が出る6月上旬から8月は、幹に止まっている虫を見ます。春から秋は、根元にたまるフラスを見ます。見つけたら、県や市町の窓口へ知らせてください。


この計算に入っていないこと


サクラ、ウメ、モモがどこにどれだけあるかは入れていません。

駆除で被害地が縮む効果も入れていません。

どこへ飛ぶかは偶然で決めています。飛び地の場所そのものは当てられません。

標高はマスの中心の1点です。山のマスでも、被害が出るのは麓の木だと考えるほうが自然です。


出典

クビアカツヤカミキリ防除戦略・参考資料2 農林水産省・環境省 2026年9月11日 https://www.maff.go.jp/j/syouan/syokubo/keneki/k_kokunai/kubiaka/taisaku.html

クビアカツヤカミキリの確認状況(令和8年8月時点) 農林水産省 https://www.maff.go.jp/j/syouan/syokubo/keneki/k_kokunai/kubiaka/attach/pdf/kubiaka-33.pdf

特定外来生物クビアカツヤカミキリに注意してください(令和7年度被害状況調査) 群馬県 https://www.pref.gunma.jp/page/7132.html

クビアカツヤカミキリ情報 埼玉県環境科学国際センター https://www.pref.saitama.lg.jp/cess/center/kubiaka.html

5キロメッシュ地図(令和8年8月10日現在) 三重県 https://www.pref.mie.lg.jp/common/content/001255073.pdf

クビアカツヤカミキリ被害対策の手引書 第6版 大阪府立環境農林水産総合研究所 2026年4月

クビアカツヤカミキリの防除法 森林総合研究所 https://www.ffpri.go.jp/pubs/chukiseika/documents/5th-chuukiseika12.pdf

アメダス平年値 気象庁 https://www.data.jma.go.jp/stats/data/mdrr/normal/index.html

GBIF https://www.gbif.org/species/5001658 / iNaturalist https://www.inaturalist.org/taxa/494519

 
 
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