2024年9月21日から22日にかけて、日本自然保護協会(NACS-J)が主催する「自然観察指導員講習会」に参加してきました。自然観察指導員は、自然観察会を通じて自然の魅力や大切さを伝え、地域に根ざした自然保護活動を推進する人材を育成しています。今回の講習会では、自然観察の技術や自然保護の理念、実践的な知識を深く学ぶことができました。 二日目はあいにく雨でしたが野外実習の時はそれほど雨に打たれずみんな楽しそうに参加されていました。 これだけ環境や自然の事に興味を持つ方が集まるといろいろな話がでてきてすべての方とお話しできなかったですがとてもよい二日間になりました。
写真は野外学習で樹木の樹冠を鏡で見ている所。首が痛くならない!
※ メモが多すぎてもしかすると講義の内容の前後あり
自然観察指導員の役割
- 自然観察会を通じて自然の魅力や大切さを伝える
- 地域に根ざした自然保護活動を推進する
- 人々と自然のつながりを深める
自然観察指導員は、自然との関わりを人々に広める重要な存在であり、その活動は地域の自然保護に大きく貢献しています。
1日目(9月21日)
- 野外実習:「自然観察の視点 森を通して自然のしくみを見る」
- 講義:「自然保護 生物多様性の保全と私たちのくらし」
- 講義:「自然の観察 自然観察会と指導員の役割」
1日目の学び
野外実習:「自然観察の視点 森を通して自然のしくみを見る」
初日は森を舞台に、自然観察の基本的な視点や技術を学びました。五感を使って自然を感じることで、普段見過ごしがちな自然の細部に目を向け、新たな発見を楽しみました。 なかなか普段意識しない所に集中すると色々な物が見えてきますね。風の音、落ち葉が擦れる音などこれはお庭にでている時でも重要な感覚で私たちは常に樹木や自然のささいな変化に気が付かなければいけません。 また木に登る時などもこの感覚は大切で足を添えている枝の軋み具合なども全身を使って感じ取らないと枯れた枝にのりそのまま落下したなどの事故に繋がってしまいます。
講義:「自然保護 生物多様性の保全と私たちのくらし」
都市生活と自然との関係
現代の都市生活では、自然が見えにくくなっています。しかし、私たちの生活は自然からの資源に大きく依存しています。
「自然がなくても、日常生活に支障がないと思えてしまう。だからこそ、私たちは今、自然を大事にしなければならない。」
自然の恩恵を普段感じ取れない事もあるかもしれませんが実は自分たちが生かされているという事を念頭に何気ない生活から自然を感じれるようにしたいと思いました。
プラネタリーバウンダリーと持続可能性
地球の限界を示す「プラネタリーバウンダリー」という概念を学び、自然保護の重要性を再認識しました。オゾン層の破壊がモントリオール議定書により改善された例は、「やればできる」という希望を与えてくれます。
プラネタリーバウンダリーの概念を庭の環境に置き換えて考えてみると
土壌の健康(土地利用の変化に相当): 庭の土壌を過度に耕したり、化学肥料を多用したりすると、土壌の生態系が崩れる可能性
水の使用(淡水の利用に相当): 過剰な水やりは地下水の枯渇や周辺環境への悪影響を引き起こす可能性
生物多様性(生物多様性の喪失に相当): 単一種の植物だけを植えると、庭の生態系のバランスが崩れる可能性
化学物質の使用(化学物質による汚染に相当): 農薬や除草剤の過剰使用は、土壌や水質を汚染し、生態系に悪影響を与える可能性があります。
廃棄物管理(窒素とリンの循環に相当): 庭の廃棄物(落ち葉、刈った草など)を適切にコンポスト化せず、すべて捨ててしまうと、栄養循環が断たれます。
これらの例は、庭の環境がより大きな環境システムの縮図となっている。まさしく小さな自然の生態系がお庭には広がっています。 このような事を意識しながら私たちは庭管理をしていきたいとも考えています。
庭の環境を持続可能な方法で管理することは、地球規模の環境問題への理解と行動につながる可能性があります。
「やればできる。で、やるんなら、今でしょ。」
ドーナツ型経済とSDGs
経済活動は自然や社会の上に成り立っており、「ドーナツ型経済」やSDGs(持続可能な開発目標)の考え方を通じて、自然を大事にすることが経済の基盤となることを学びました。
SDGsという言葉はかなり認知されており一定数の方が知って入り印象がありましたが、ドーナツ型経済については私は知りませんでした。
ドーナツ型経済の重要性
このモデルは、従来の経済成長至上主義から脱却し、環境の限界を超えずに人間の基本的なニーズを満たすことを目指しています。経済活動は無限の成長を前提とせず、地球の持続可能性と社会的公平性を重視するものです。
造園業者の視点から考えるドーナツ型経済への貢献
造園業者は、都市と自然をつなぐ重要な役割を果たしています。緑地や公園の設計・庭園管理などを通じて、人々に自然との触れ合いの場を提供し、生物多様性の保全にも寄与できる仕事です。
可能な解決策
1. 持続可能な素材の使用
環境に配慮した植栽や、再生可能な資材を使用することで、環境への負荷を軽減
2. 生物多様性の促進
地域固有の植物を積極的に取り入れることで、生物多様性を高め、生態系のバランスを維持
3. 雨水の有効利用
雨水の貯留や浸透施設を設置し、水資源の有効活用と都市型洪水の防止
4. エコロジカル・ランドスケープの提案
自然のプロセスを取り入れたデザインを提案し、持続可能な都市環境を創出
5. 地域コミュニティとの協働
地域住民や行政と連携し、緑地の保全活動や環境教育プログラムを実施
「手を触れないでいい自然だったら手を触れなくていいし、うんと手を入れなきゃならなかったら手を入れる。」
造園業者は、自然に対する適切なアプローチを選択することで、持続可能な社会の実現に寄与できます。
自然保護の歴史と倫理
日本の自然保護の歴史
- 1980年代:自然保護が社会問題化し、白神山地のブナ林が注目されました。
- 1993年:白神山地のブナ林が世界遺産に登録され、自然保護の価値観が変化しました。
環境倫理の3つの視点
1. 世代間倫理:「自然は子孫からの借り物」という考え方で、次世代に自然を残す責任を強調
2. 世代内倫理:現世代内での公平性を重視し、南北問題などの不平等を解消する視点
3. 生物間倫理:人間以外の生物との関係性を考慮し、すべての生物の平等を目指します。
いろいろな視点から物事を考えることは他にも応用できるのでこのような観点を常に持ち続けながら
日々の暮らしに生かす事も可能かと感じます。
人間100人いれば100の正論がある。
生物多様性の重要性
生物多様性の3つのレベル
1. 遺伝子の多様性:同じ種内での遺伝的な違い。
2. 種の多様性:異なる種の多様性。
3. 生態系の多様性:様々な生態系の存在。
生物多様性がもたらす恵み(生態系サービス)
- 供給サービス:食料、水、木材など。
- 調整サービス:気候調整、水質浄化など。
- 文化的サービス:レクリエーション、精神的充足など。
- 基盤サービス:栄養循環、光合成など。
外来種と生物多様性
2005年に施工された「外来生物法」により、外来生物を特定し対策を強化しています。外来種の管理は生物多様性の保全において重要な課題です。
講義を受けらている方との話の中で、シマトネリコが話題になっていました。
シマトネリコ:都市緑化の人気樹種がもたらす生態学的影響
以前から都市部の緑化事業や庭木の植栽において、シマトネリコは人気があります。その美しい樹形と環境適応力の高さから、多くの自治体や民間企業なども積極的に導入を進めています。しかし、広範囲にわたる植栽は、日本の生態系に予期せぬ影響を及ぼす可能性があり懸念が広がっています。
シマトネリコの旺盛な生育力
この樹種は高温耐性に優れ、成長が非常に早いという特性を持っています。そのため、植栽された場所から周辺環境へ容易に拡散し、都市近郊の林地に侵入する可能性が指摘されています。 最近ではお隣との越境部分のフェンスとの間の細い道などにも大きくなったシマトネリコをみかけます。
このような生態的特性は、在来種との競合を引き起こし、地域の生態系バランスを崩す危険性をはらんでいます。
さらに、シマトネリコの存在が特定の昆虫種の分布に影響を与える可能性も指摘されています。
例えば、サザナミスズメやシマケンモンといったチョウ目昆虫の幼虫が、シマトネリコを食餌植物として利用することが確認されています。特にシマケンモンは、従来関東南部以西の暖地に分布が限られていた種です。シマトネリコの分布拡大に伴い、これらの昆虫の生息域が拡大する可能性があり、既存の生態系のバランスに影響を与える恐れがあります。
加えて、シマトネリコの存在が昆虫の行動パターンに変化をもたらしている事例も報告されています。通常、樹液を好んで摂食するカブトムシが、シマトネリコの樹皮を直接かじる行動が観察されています。これは、カブトムシにとって極めて異例の行動であり、シマトネリコの導入が在来昆虫の行動生態に予期せぬ変化をもたらしている可能性を示唆しています。 カブトムシ好きには堪らない樹木なのかも知れませんが日中の暑い時期からほぼ一日中かカブトムシが樹液を吸っているのは少し異様にも見えます。
こシマトネリコの広範囲な導入が、日本の生態系に複雑かつ多岐にわたる影響を及ぼす可能性を示しています。在来種との競合、昆虫の分布域の変化、さらには昆虫の行動パターンの変容など、その影響は予想以上に広範囲に及ぶ可能性があります。
今後シマトネリコを緑化樹や園芸植物として導入する際には、これらの生態学的影響を十分に考慮し、慎重に判断する必要があります。緑化推進と生態系の保全のバランスを取るために、継続的なモニタリングと研究が不可欠であり、必要に応じて適切な管理措置を講じることが重要です。
参考文献: 中野敬一. "緑化樹シマトネリコの生態影響について"
講義「自然の観察 自然観察会と指導員の役割」
自然観察会の意義
自然観察会は、人々が自然とのつながりを感じ、自然の魅力を再発見する場です。
季節の移り変わりを感じる機会を提供。
小さな生き物たちの世界に感動する場を創出。
地域の自然への理解を深める。
指導員の役割
指導員は、参加者が自然を楽しみ、学べるようサポートする案内役
知識の提供だけでなく、参加者同士のコミュニケーションを促進。
安全管理やプログラムの構成にも注意を払い、参加者の満足度を高めます。
2日目(9月22日)
- 野外実習:「自然観察の素材 テーマ別の自然観察」
- 野外実習:「自然観察会の企画と実践」
2日目の学び
野外実習:「自然観察の素材 テーマ別の自然観察」
様々なテーマで自然観察を行い、観察対象の多様性や深め方を学びました。
「自然を知らずして自然を守ることはできない。」
現代の課題
子どもたちの自然体験の減少。
習い事やデジタル機器の普及による時間の制約。
自然体験の効果
- 自己肯定感の向上:自然との触れ合いが自信や積極性を育みます。
- 探求力の育成:自然観察を通じて好奇心や探求心が高まります。
- 生きる力の獲得:自然の中での経験が問題解決能力を養います。
取り組み
- 「全ての子供に自然を届けるプロジェクト」の推進。
- 保育園や学校での自然体験プログラムの導入。
造園業者としての役割と自然体験プログラムの提案を考えて
保育園や学校での自然体験プログラム
剪定屋空では、造園業者としての専門知識と技術を活かし、保育園や学校での自然体験プログラムの提案・実施などを行いたいと考えています。私たちは、子どもたちが自然と触れ合い、その大切さや魅力を実感できる機会を提供することで、次世代の環境保護意識の向上に貢献したいと考えています。
1. 植樹体験ワークショップ
子どもたちと一緒に苗木を植え、育てる喜びを共有します。植樹を通じて、生命の循環や環境保全の重要性を学ぶことができます。
2. ガーデニング教室
季節の花や野菜を育てるガーデニング教室を開催します。土に触れ、植物の成長を観察することで、自然への興味を育みます。
3. 自然素材を使った工作教室
落ち葉や枝、木の実など、自然の素材を使ってアート作品を作ります。創造力を養いながら、自然への親しみを深めます。
4. 季節の植物観察会
学校の校庭や近隣の公園で、季節ごとの植物や昆虫を観察します。身近な自然に目を向けるきっかけを作ります。
5. ミニビオトープの作成
校庭の一角に小さなビオトープを作り、水辺の生き物や植物を育てます。生態系の理解を深めることができます。
6. 森林体験ツアー
近隣の森や山を訪れ、森林浴や自然散策を行います。自然環境の大切さを体感します。
私たちは、子どもたちが自然との触れ合いを通じて、環境への関心や愛着を深めてほしいと願っています。自然体験は、自己肯定感や探究心を育て、生きる力を養う大切な機会です。
剪定屋空は、これからも造園業者としての責任を果たしながら、次世代のための環境教育に力を注いでまいります。
野外実習:「自然観察会の企画と実践」
グループごとに自然観察会の企画を立案し、実際に実践しました。
プログラムの構成
- 観察コースの選定:安全で多様な自然が楽しめる場所。
- 時間配分と安全管理:無理のないスケジュールとリスクの把握。
持ち時間が5分という事でもうすこしうまく直感的に伝えれるプログラムにすれば良かったと思います。 私は以前ブログ記事にも書いたメーソンジャーを使った土壌テストで妻はエノコログサを使った草遊びを企画しました。
ブログ記事より メイソンジャーを使った土壌の質感テスト
写真は下記ブログのもの
実践を通じた学び
参加者の興味を引き出す解説方法。
グループ全体のペース配分や雰囲気作り。
予期せぬ事態への柔軟な対応。
地域における自然保護活動
事例紹介:三重県と亀山市の取り組み
- 三重県:生物多様性推進プランを2024年3月に発表し、地域の特性を活かした取り組みを推進。
このプランは、生物多様性の保全と持続可能な利用を実現するための三重県の総合的な指針です。各主体が連携し、具体的な行動を通じて豊かな自然環境を未来へと引き継ぐことを目指しています。
- 亀山市:市独自の生物多様性区域認定制度を持ち、地域の自然共生サイトを認定。
かめやま生物多様性共生区域認定制度
亀山市は、生物多様性の保全と持続可能な利用を推進するために、「かめやま生物多様性共生区域認定制度」を設けています。この制度は、地域の生態系や生物種を守りながら、人々の生活と調和させることを目的としています。 この制度が前から気になっており色々とお話しを伺える機会もありました。
自然保護教育の推進
学びを止めないこと:自然や社会の変化に対応するため、継続的な学習が必要。
情報発信と共有:SNSやブログを通じて活動や知識を広める。
持続可能な開発目標(SDGs)との連携
SDGsの達成に向けた取り組み:自然保護活動を通じて目標達成に貢献。
気候変動対策との統合的アプローチ:自然保護と気候変動対策を連携。
今回の講習会を通じて、自然を知ることの大切さと、その上で自然を守るために私たち一人ひとりができることを深く考える機会となりました。
自然を知り、守るために
自然を知らずして、自然を守ることはできない。
正しい知識と理解があってこそ、効果的な自然保護活動が可能。私たちは地域の自然を守り、次世代に豊かな環境を残すために、以下の活動にも取り組みたいと考えています。
1. 子どもたちへの自然体験の提供
次世代の育成には、自然と触れ合う機会が不可欠です。剪定屋空は、子どもたちに自然体験の場を提供し、自然の豊かさと大切さを学べるプログラムを積極的に推進しています。未来を担う子どもたちが自然と深くつながることは、持続可能な社会を築く基盤となります。
2. 地域での保全活動の推進
地域の自然を守るためには、その価値を知ってもらうことが重要です。剪定屋空は、地域住民と協力し、観察会やワークショップを通じて、地域の自然への愛着を育む活動を行っています。このような体験を通じて、共に地域の自然を守る意識を高め、保全活動を広げていくことを目指しています。
3. 持続可能な社会への貢献
生物多様性の保全やSDGs(持続可能な開発目標)の達成に向けて、私たちは日々の生活の中でできる小さな取り組みを大切にしています。剪定屋空は、環境に配慮した庭園管理や地域の自然素材を活用した取り組みを通じて、持続可能な社会への貢献を目指しています。
4. 学びを止めないこと
自然も社会も常に変化しています。私たちは、最新の情報を学び続け、柔軟に対応することで、より良い自然保護活動を実現していきます。剪定屋空は、変わりゆく環境に適応し、地域の自然環境を守り育てるための学びを続けていくことを使命としています。
自然も社会もどんどん変化しているため、学びを止めずに継続することが重要である。
最後に
自然観察指導員として、これからも自然の魅力を伝え、持続可能な未来のために活動していきたいと思います。自然を大事にする心を多くの人々と共有し、一緒に自然を守る取り組みを進めていきましょう。
自然観察から始まる自然保護を推進することが重要である。
皆さんもぜひ自然に目を向けて、その魅力と大切さを感じてみてください。そして、一緒に自然を守る一歩を踏み出しましょう。
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