落ち葉の居場所。世界の研究が教えてくれる、落ち葉が持つ力
- 飯島 一郎

- 6月1日
- 読了時間: 5分
三重県の雑木林で、落ち葉を掃かずにすき込む作業をすることがあります。道具を動かしながら
「この落ち葉、どこへいくんだろう」とふと思います。
「落ち葉はゴミか、それとも資源か」という問いの答えは、世界の研究者たちがすでに出しています。落ち葉は、土をつくり、命を育て、気候を安定させる——見えない仕事をし続けています。
落ち葉は土をつくる — 分解の仕組み

落ち葉は放置されているように見えて、森の中で重要な役割を担っています。分解には3つの主役がいます。
最初に動くのはトビムシやヤスデなど「一次分解者」と呼ばれる生き物で、落ち葉を細かく砕いていきます。次に菌類が乗り込み、細分化された有機物を化学的に分解します。
コナラ林に豊かなECM菌(外生菌根菌)もこの過程に深く関わっています。最後にバクテリアが最終分解を担い、腐植酸やミネラルとして土壌に蓄積されます。
かつて里山では、落ち葉を集めて焚いたり、畑にすき込んだりすることが日常でした。あの火の煙の向こうに、土に還していくという営みがありました。落ち葉焚きと山茶花の記事も、その記憶のひとつです。
落ち葉の土壌への効果は数値でも確認されています。コナラ・クヌギの落ち葉はC/N比40〜60と高く、分解されると土壌のC/N比を15〜25の理想帯に引き寄せます(PubMed 2019)。
コナラの落ち葉は1〜2年で腐植に変わりますが、スギ・ヒノキの針葉は3〜5年かかります。ECM菌が優占する雑木林では、土壌有機炭素の蓄積量が43〜50%多いという研究もあります。
落ち葉を資源として改めて見直す視点は、こちらの記事にもまとめています。
落ち葉の下に住む命

落ち葉層は、目には見えない小さな生き物たちの住処でもあります。蝶や蛾の多くは、卵・幼虫・さなぎ・成虫のいずれかの形で落ち葉の中で越冬します(Xerces Society)。全部取り除いてしまうと、翌春に花を訪れる昆虫の数が減ることにもなります。
カエルやサンショウウオも同様です。落ち葉の湿度と遮蔽性が越冬・繁殖に不可欠で、乾燥した地面では生存が難しくなります。さらに落ち葉層はテントウムシやクモなど、害虫を食べてくれる天敵昆虫の越冬ホットスポットになっています(ScienceDirect 2024)。
実生(みしょう)——種から発芽した幼い木——にとっても、落ち葉は大切です。適度な遮光と保湿を作り出し、夏の地表過熱から守ります。ただし厚すぎると実生が突き破れないため、「薄く残す」というさじ加減が重要になります。
落ち葉が気候を安定させる
落ち葉を全部取り除いた実験では、分解速度が27%低下したという結果が出ています(PLOS One、熱帯林での研究)。分解が遅れるということは、土壌有機物の蓄積が遅れ、炭素を土に閉じ込める力が落ちるということです。
世界規模で見ると、森林のギャップ(光が差し込む空間)が落葉量を平均29.5%減少させるという報告もあります(Nature 2024)。伐採や台風後に生まれるギャップが増えるほど、落ち葉の量は減り、土の力が落ちていきます。
日本の森林が吸収する炭素量は、従来の推計よりも58〜64%しか計上されていなかったという研究もあります(東京大学農学部 2020)。落ち葉や根の貢献が軽視されていたことが一因です。また針葉樹の落ち葉は、広葉樹より土壌有機炭素の蓄積が1.4〜2.1倍多いとも報告されています(Oxford 2023)。
コナラの落ち葉が里山を支えている現場については、法因寺しがら工法・コナラ萌芽の記事もご覧ください。雑木林のコナラが落とす葉は、地面に積み重なりながら次の森を育てる材料になっています。
笹が濃いところは厚く、実生がいるところは薄く
落ち葉を掃き清めることと、すき込むこと。どちらも庭の手入れです。でも目指している方向が違います。前者は今日、気持ちよく過ごすための庭を整えること。後者は木が次の100年を育てるための土をつくること。
落ち葉の質(何の木の落ち葉か)は、分解速度に直結します(PNAS 2025)。雑木林の落ち葉は樹種が混在することで互いの欠点を補い合い、分解が安定します。コナラ・クヌギ・エノキ・コブシなど多様な種の落ち葉が混ざることで、土壌生物のえさのバリエーションが増えます。
里山や庭での落ち葉管理の目安は、年1〜2回の整理で十分です。全部取り除かず「残す場所」を決める——それが、土の力を育てながら管理する考え方です。
笹が密集しているところは落ち葉を厚く積んでおくと、笹の生育を光と栄養面から抑制できます。実生が芽吹いているところは薄くすることで、コケや実生が突き破れる余地が生まれます。
通路や縁側前はきれいに取り除いて、歩きやすさと見た目を優先する——このさじ加減が、庭ごとの判断です。
よくある質問
Q. 庭の落ち葉は全部片付けた方がよいですか?
全部取り除く必要はありません。蝶・カエル・益虫が越冬する場所になっており、土の腐植を作る材料にもなっています。通路や人の目に触れる場所は掃除しながら、木の下・隅の方には薄く残しておくだけで、土の力が長期間保たれます。
Q. どんな木の落ち葉がマルチングに向いていますか?
コナラ・クヌギ・エノキなど広葉樹の落ち葉は比較的早く分解されるため、庭のマルチングに適しています。スギ・ヒノキ・マツの葉は分解が遅く(3〜5年)、単独で厚く積むと土壌が偏ることがあります。雑木林の落ち葉のように樹種が混ざっているほど、土への還り方が安定します。
Q. 実生とは何ですか?なぜ気にする必要があるのですか?
実生とは、種から発芽した幼い木のことです。庭や里山の更新は、この実生が生き残れるかどうかにかかっています。落ち葉が適切に残っていると発芽・定着率が高まり、次の世代の樹木が自然に育ちます。逆に落ち葉を全部取り除いた地面では、地表の温度変化が激しくなり、実生が生き残りにくくなります。
年間管理のご相談
落ち葉を「掃く」か「残す」か——この判断は、庭木の種類や庭の使い方によって変わります。剪定屋空では、年間管理を通じて季節ごとの落ち葉の動きを把握し、土に返す部分と整える部分をいっしょに考えていきます。
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