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寒い日には松のお茶を 古来から愛されている松茶

執筆者の写真: 飯島 一郎
飯島 一郎
2023年1月5日
読了時間: 6分

更新日:9月26日


松葉茶を作ってみたい、という話をお客様から聞くことがあります。


庭に松がある。剪定で葉がたくさん出る。もったいないから使えないか。

気持ちはよく分かります。ただ、庭木を手入れする側から、先にお伝えしたいことがひとつあります。


どの松の葉でもいい、というわけではありません。


葉を採る前に、その松に薬が入っていないか確かめる


松枯れ、いわゆる松くい虫の被害を防ぐために、幹に薬剤を注入することがあります。

樹幹注入と呼ばれる方法です。庭の松でも、公園の松でも、広く行われています。


この方法がなぜ効くのか。

仕組みを知ると、葉を口に入れる話と直接つながってきます。


薬剤を幹に入れると、樹体の中を通って枝の先まで行き渡ります。

マツノザイセンチュウを媒介するマツノマダラカミキリが枝を食べたとき、その傷口から線虫が入っても、

枝まで分散した薬剤が線虫を抑える。だから予防になります。

薬剤を扱う会社の説明も、そうなっています(井筒屋化学産業 http://www.izutsuya-chem.co.jp/matsukui.html )。


有効成分には塩酸レバミゾールなどが使われます。

二十五度で水への溶解度が六十二・五パーセントと高く、樹体内で速やかに分散する。

製造元がそう書いています

(保土谷アグロテック http://www.hodogaya-agrotech.co.jp/products/forest/forest_mackngee.html )。


薬が効くのは、木の中に留まるからではなく、枝の先まで動くからです。

葉は、その枝の先についています。


ちなみに、マツノマダラカミキリ一匹が運ぶマツノザイセンチュウは、多いときで二十五万頭にのぼります。

注入はカミキリの成虫が羽化する二、三か月前までに済ませるのが基本です。


注入から何年経てば葉に残らないのか。

残留の実測データを私たちは持っていません。だから、安全だと言うことはできません。


言えるのは、注入した松の葉は採らない、という判断だけです。

分からないものは、口に入れない。庭木を扱う側として、そこは動かしません。


薬剤散布も同じです。マツノマダラカミキリの成虫対策で、葉に直接かける薬もあります。

散布した年の葉は、見た目では判断がつきません。


ご自宅の松に薬を入れたかどうかは、手入れをした造園業者に聞けば分かります。

分からないまま採るより、一度聞いてみてください。


なお樹幹注入そのものにも限界が指摘されています。

神戸大学の黒田慶子先生は、注入によって幹の通水が止まり、枯死につながる場合があること、

永久的に使える方法ではないことを報告しています

( http://www2.kobe-u.ac.jp/~kurodak/chunyu )。

薬を入れれば安心、という話ではありません。


左がクロマツ、右がアカマツ。葉の太さと垂れ方が違う
左がクロマツ、右がアカマツ。葉の太さと垂れ方が違う

赤松か、黒松か


松葉茶に使われるのは、主に赤松と黒松です。


赤松はアカマツ Pinus densiflora、黒松はクロマツ Pinus thunbergii。

古くは赤松を雌松、黒松を雄松と呼び分けてきました。


見分けは葉で分かります。

黒松の葉は太くて硬く、先が指に刺さるほど鋭い。

赤松の葉は細くて柔らかく、握っても痛くありません。幹の色も、赤松は上のほうが赤みを帯びます。


海沿いに多いのが黒松、内陸の山に多いのが赤松。

三重県でも、伊勢湾に近い場所では黒松、山に入ると赤松が目につきます。


赤松から作った松葉茶には抗菌作用と免疫の働きを高める作用が、

黒松から作ったものには抗炎症作用と抗酸化作用があるとする研究報告があります。

ただし後述のとおり、人を対象とした広い研究は進んでいません。


何が入っているのか

寒い日には松のお茶を 古来から愛されている松茶

松葉茶の主な成分は、ビタミンA、ビタミンC、ビタミンK、ケルセチン、クロロフィル、ミネラル、テルペン類です。

抗酸化物質やポリフェノール、フラボノイドも含まれます。


これらの成分から、皮膚や粘膜のサポート、コラーゲンの生成、骨の維持、動脈硬化の予防、

コレステロールの低下、骨粗しょう症の予防、骨の成長のサポート、リラックス効果などが期待されてきました。

古代中国が発祥とされ、健康のための薬用飲料として長く飲まれてきた歴史があります。


ただし、松葉茶の健康効果について、人を対象とした広範な研究は行われていません。

効果を確かめるには、さらに研究が必要という段階です。

ここは正直にお伝えしておきます。


体質に合わないこともあります。松のアレルギーがある方、薬を飲んでいる方は、少量から始めてください。

微量のカフェインを含む場合があることも知られています。

体に効くかどうかは、私たちが判断できる領域ではありません。


春に立ち上がる新芽。これを摘むのがみどり摘み
春に立ち上がる新芽。これを摘むのがみどり摘み

剪定の時期と、葉が出る時期


庭の松に手入れをすると、葉がまとまって出ます。


五月から六月にかけて行うのが、みどり摘み。

春に伸びた新芽を摘む作業です。この新芽をみどりと呼びます。


十一月から十二月にかけて行うのが、もみあげ。

古い葉を手でしごいて落とし、枝の中に光と風を通す作業です。


松葉が最も香るのは五月から七月とされ、みどり摘みの時期と重なります。

松葉茶のために葉を採るなら、この時期が自然です。

わざわざ木から葉をむしる必要はありません。手入れで出たものを使えば足ります。


ただし、弱っている松からは採らないでください。

葉が少ない、色が薄い、年々葉の長さが短くなっている。そういう木は、その葉で生きています。

人が飲むために持っていくものではありません。


松の手入れについて、古い本にこんな一文があります。


手入費を惜しむなら植えない方が無難。


一九五五年、昭和三十年の本です。松は手間がかかる木だと言い切っています。

年に一回は手入れが必要で、それを惜しむなら植えるな、と。


松葉は、木から奪うものではなく、手入れの後に残るものです。

茶にするなら、そちらから取る。


作り方

寒い日には松のお茶を 古来から愛されている松茶

乾いた松葉を一握り、水でよく洗います。

鋏で二センチほどに刻み、沸かした湯に入れて、弱火で五分から十分ほど置く。

濾して、器に注ぐだけです。


水一カップに対して、刻んだ葉が大さじ一杯ほど。

時間を長くすれば、味は濃くなります。


冷たいものが好きな方は、刻んだ葉を冷水に入れて、冷蔵庫で一晩置く方法もあります。


蜂蜜やレモン、生姜を足すと飲みやすくなります。

松の香りは思ったよりはっきりしているので、初めての方は薄めから試すのが無難です。


松の種類によっては毒性を持つものもあります。

自分で採るより市販の松葉茶を買うほうが安全だ、という意見があるのも、そのためです。


木を見てから、葉を見る


松葉茶の話をすると、効能の話になりがちです。


ただ、庭木を扱う側から見ると、先にあるのは木のほうです。

その松がどこに立っていて、誰が手入れをしていて、薬が入っているかどうか。

それを確かめてから、葉のことを考える。順番は、そちらです。


薬を入れた松は、飲むための木ではありません。

けれど、飲むためではない松だからといって、価値が低いわけでもありません。

枯らさないために薬を入れた、という手当ての跡です。


庭の松をどう扱うか迷われたら、一度ご相談ください。

その木に何をしてきたかを、一緒に確かめるところから始めます。


三重県四日市市・鈴鹿市・菰野町を中心に、松の手入れを承っています。


 
 
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