尾上別荘庭園 冬支度のお手入れ-清掃・施肥・菰巻き、そして松葉敷
- 三重県剪定伐採お庭のお手入れ専門店 剪定屋空

- 15 時間前
- 読了時間: 3分
三重県四日市市にある尾上別荘様の庭園管理にお伺いし、全体の清掃と施肥、仕上げに菰巻きを行いました。

落ち葉が庭の表情をつくる季節ですが、同時に景色がにじまないように整える時期でもあります。
苔、白砂利、石、樹皮。それぞれの質感が、きちんと見えるところまで戻していく一日でした。
全体清掃
園路と苔まわり、飛び石の際、石灯籠の足元など、湿りやすい場所から順に整えました。

落ち葉を全部なくすのではなく、景色として残す場所と、滑りやすい場所・溜まりやすい場所を分けていくと、庭の呼吸が揃っていきます。
冬の手入れは、樹木の体力を静かに支える工程です。
強く効かせるというより春に向けて崩れない下地をつくる感覚で、樹の状態と土の表情を見ながら入れています。
松葉敷

この時期は松葉が大量に出ますので、一画に松葉敷も行いました。
ただ片づけるのではなく、場所を選んで敷くことで、足元に季節の層が生まれます。
冬枯れの庭に、あたたかい気配が残る仕立てになります。
菰巻き 風情と害虫対策

菰巻きは、伝統的にはマツカレハなどの越冬幼虫を菰に誘い込み、春先に外して処分することで密度を下げる、という考え方で続いてきた仕事です。
設置の目安として霜が降りる頃に巻き、啓蟄の頃に外すと語られるのも、その流れに沿っています。

一方で、近年の調査では、菰の中で見つかる生きものは 益虫(天敵)やクモ類が多い ことが示されています。
菰の中の生物のうち 約35%が天敵になりうるクモ類 で、いわゆる標的とされる マツカレハ幼虫は約6%にとどまった という結果も示されていました。
つまり菰巻きは、害虫だけでなく益虫も一緒に回収してしまう可能性があり、やり方次第では逆効果になりうる、という視点が必要になってきます。

尾上別荘様では、冬の景色としての菰巻きの風情も大切にしつつ、現代的には次のような扱いが良いと考えています。
菰巻きを一斉駆除ではなく、庭の状態を読むための冬の点検(モニタリング)として位置づける
外すときは中身を確認し、可能な範囲でクモなどの有益な生きものを逃がしてから処分する
害虫が多い年・少ない年で、設置の範囲や期間を調整する

今回は、一本に梅結びで飾りも添えて、冬の庭の設えとして整えさせていただきました。
実用品でありながら、庭に冬が来たと知らせる静かな合図にもなるところが、菰巻きの良さだと感じます。
仕上げ

砂利面は少しずつ寄せながら苔を増やしています。

苔際は乱れを整え、見え方の中心線がぶれないように納めて完了です。

冬の庭は派手さが減るぶん、手入れの精度がそのまま景色になります。







