三重県亀山市・法因寺様:手仕事で編み上げるしがら工法 植物が主役になるまでの足場づくり
- 三重県剪定伐採お庭のお手入れ専門店 剪定屋空

- 2 日前
- 読了時間: 6分
三重県亀山市の法因寺様真竹竹林の斜面にて、しがら工法による斜面保全施工を行いました。

真竹の根が露わになった斜面を、はじめて見た日のことを思い出します。降雨のたびに少しずつ削られていく地表。積み重なった年月の重みがそのまま土の流れとなって現れていました。
封じ込めることではなく水と土と植物の働きを信じ人はきっかけをつくるだけ。
そうした考えからしがら工法を提案させていただきました。
施工の背景
法因寺様の敷地内、真竹竹林の斜面で、近年の集中豪雨により表土の流亡が進んでいる箇所が確認されていました。

今回の施工範囲 斜面長さ約10m、横幅約3m、高低差約150cm。
真竹の根が地表に露出し、そこから土が崩れ続けている状態でした。
止めることではなく、水の流れを読み、和らげること。土と植物がバランスを取りながら育っていける環境をつくることそれが今回の施工の目的です。
しがら工法について

しがら工法は、杭と自然素材を組み合わせた透水性のある土留めです。治山技術では柵工(さくこう)に分類される山腹工のひとつで、表層土砂の流亡防止・土壌の安定と水分保持・植生回復のための基盤づくりを目的としています。
この工法の本質は、水を遮断しないことにあります。水を完全に止めようとすれば、圧力が集中し、いつか一気に崩れます。しがらは水の勢いを弱め(減勢)や土砂や落ち葉を溜め、やがて植物の根へその役割を引き渡していくことにあります。
主役はあくまで植物であり、しがらはそのための仮の足場です。
強く作ることではなく、自然が回復できる余地を残すこと。しがらが見えなくなる頃、その斜面は一番安定しています。
使用した資材について
• 杭(土台): 50本(長さ150cm / 直径5cm) 使用本数29本
• 横木(骨格): 320本 使用本数80本
◦ 伐採した樹木を、地形に合わせて隙間を作りながら配置。
• 粗朶(編み材): 100kg すべて使用
◦ 小枝を杭に対して交互に編み込み、フィルター機能を強化。
• 充填材(土壌基盤): 落ち葉 120kg すべて使用
◦ コナラの種子を含む落ち葉を背面に敷き詰め、保水性を向上

今回は剪定や伐採で出た枝木や落ち葉を活用しなるべくこの土地の環境に近い素材を中心に選びました。
横木(骨格材)は庭木伐採で出た樹木の枝幹を活用。形や太さの異なる自然な素材を組み合わせながら構成しています。

粗朶(そだ・編み材)は小枝をスラローム状に交互に編み込み、フィルター機能を高めました。

充填材にはコナラ林で採取した落ち葉120kgをすべて使用。

コナラのどんぐりを含んでいるため、将来的な自然更新も期待しています。

今回試験的に落ち葉に米糠とバークを一部混ぜました。栄養豊富な米糠が加わることで菌類や微生物が増殖し、この菌糸が落ち葉や小枝を物理的に接着する機能を持ち、斜面全体の結合力を高めるのを期待し観察していこうと思います。
施工の手順
まず行うのは調査・設計です。雨水が集中する主流ラインを把握します。水が集まりすぎる越流部では、あえてしがらの間隔を開け水を安全に逃がすようにしています。

無理に止めようとしないことが、しがらの設計思想の核心です。斜面の等高線方向にしがらを配置することで、水を面として受け止め、じわじわと地中へ浸透させていきます。

親杭の設置。直径5cm程度の杭を地中に根入れし、斜面の土圧を受け止める骨格をつくります。 杭を多く打つことも土圧を高めてくれる要因になるようです。

そこへ粗朶・横木をスラローム状に交互に編み込んでいきます。固定しすぎず、わずかな可動性を持たせることで、雨・土圧・外力を受け流します。今回は桜の枝打ちで取れた粗朶がありかなり編み込みやすかったです。

この編み込みの工程が最も時間のかかる作業です。一本一本の枝が持つ反りや節を互いに噛み合わせ、杭に対して常に一定のテンションがかかるよう精緻に組み上げていく難しさ。
実際に言葉で説明したり写真でみると簡単そうですがこれがなかなか難しい。。

今回3Dスキャンを行い内部がどのような構造か視覚化してみました。
この網目構造によって激しい雨水が浸入した際も水流を無数の接点で細かく分散させ、勢いを減勢させることができます。

最後に背面への充填。落ち葉・枝を層状に詰め込み、微生物・菌糸が働きやすい環境をつくります。落ち葉が分解して土になっていきながら、植物の根も強く張ることができる。この充填層こそが、しがらの心臓部です。
実施結果(実測値)

現地の微地形(水の集まり方や勾配)に合わせて最適化を行いました。施工範囲は横幅7.10m×斜面幅1.40m、高低差約1.10m(上段横木から下段横木まで)
大雨時に水が集中するメインラインとして、水みち幅70cmを確保しています。
杭と横木の設置により勾配が緩和され、背面の落ち葉層へ水を浸透させる天然のダム機能を引き出すことが期待されます。


横木は320本を用意し実際の使用数は80本、粗朶100kg・落ち葉120kgはすべて使用。水の逃げ道と土砂捕捉のバランスは、すべて現地で調整しています。
今後の植生回復のイメージ

しがら工法は、完成がスタートです。
設置直後から半年は、木杭や横木がはっきりと見える構造物としての状態です。背面に充填した落ち葉・枝材が保水層となり、微生物・菌類が活動を開始します。大雨による表土の流出が抑えられ、水みちから水が安全に流れるようになります。
1年〜5年後、草本類・先駆植物が根を張り始めます。飛来した種子や落ち葉の中の種子が発芽し、斜面は少しずつ緑に覆われていきます。流れることからしみ込むことへ。雨水の動きが変わるとともに、しがらは風景の中に溶け込み始める時期です。
10年後以降、木材は朽ちて土に還りますが、その頃には植物の根が網目状に斜面を掴み、生きた土留めが完成します。構造物がなくなる頃が、一番安定している。
必要であれば、地域性苗木(その土地由来の樹種)による補植・植林も選択肢のひとつです。自然任せにすることではなく、人が自然の回復を一段階後押しする関わり方として位置づけています。
完成後の管理について

しがら工法は、作って終わりではありません。
今後の竹林整備にお伺いした際、背面の沈下具合を確認しながら追い落ち葉や追い材を補充し、層の厚みを維持していきます。越流部の足元は、状況に応じて石などで補強する場合もあります。
今回、現場に定点カメラを設置させていただきました。降雨時の水の流れ、季節ごとの植生回復のプロセスを記録し、データに基づいた管理を継続していきます。この記録が、いつか他の斜面を守るための知恵になることを願っています。
この施工に込めた思い
今回の法因寺様への施工は、単に斜面の崩れを止めることが目的ではありません。

しがらという構造物を介して、斜面を自律した健やかな自然環境へと回帰させるための手助けになれればという思いがあります。
今回の施工に使った枝や葉はすべて、伐採や剪定で出た素材の循環です。落ち葉に混ぜたどんぐりや、鳥たちが運んでくる種子から芽が出てしっかりと大地に根を張り、この斜面を支える新たな主役となっているはずです。
10年後、20年後の自然環境の姿を見据えながら。少しずつ森になっていく過程を法因寺様とともに見守り、育てていきたいと思います。
三重県剪定伐採お庭のお手入れ専門店 剪定屋空今日も三重県のお庭に
三重県四日市市、鈴鹿市、桑名市、亀山市、津市周辺で、庭木の剪定・伐採・竹林整備など、樹木に関するお悩みをお客様と庭木に合ったご提案で解消します。
▶ 公式サイト:https://www.senteiyasora.com/
▶ Instagram:https://www.instagram.com/senteiya_sora/







