しがらの中に、生きものがわんさか。竹林の土に命を戻す仕事(三重県亀山市 法因寺様)
- 飯島 一郎

- 13 分前
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三重県亀山市の法因寺様にて、真竹の竹林整備と、以前組んだしがらの点検を行いました。


この斜面は、真竹の竹林が広葉樹の森へ移り変わっていく途中の土地です。削れた斜面を守るために、竹の杭と横木でしがらという土留めを組み、その中にコナラの落ち葉を充填してきました。今回はその中がどうなっているかを、そっと掘って確かめました。
しがらの中に、生きものがわんさかいた
しがらの中を開けてみると、小さな白い虫、ダンゴムシ、ミミズ。土の中の分解者たちが、もう住み始めていました。

面白いのは、すぐ横の竹林の土壌を掘っても、ミミズや微生物がほとんど見あたらないことです。同じ斜面の、数メートルしか離れていない場所なのに、しがらの中だけに生きものが集まっている。彼らはどこから来て、なぜここに集まるのか。この違いに、竹林という場所の性質と、しがらの役割が表れていました。
なぜ竹林の土は、生きものが少ないのか
竹林の土に分解者が少ないのには、いくつか理由があります。
ひとつは、竹の落ち葉が分解されにくいことです。竹の葉や稈にはケイ酸が多く含まれ(竹はケイ酸を体に取り込んで循環させる植物です)、さらにリグニンという硬い成分を持つため、土の生きものにとっては餌として硬く、質も低い。もうひとつは、炭素と窒素の比(C/N比)が高い竹の落ち葉は分解が遅く、分解しようとする微生物がかえって土の中の窒素を使ってしまうことです。
加えて、密に立った竹と厚い落ち葉が光をさえぎり、林床は暗く乾きがちになります。竹林の地下は真竹の地下茎と、菌根菌のうちアーバスキュラー菌根菌が優占し、広葉樹と共生する外生菌根菌が乏しくなります。

こうして竹林の土は、落ち葉は積もっても生きものが働きにくい、静かな土になっていきます。(出典: 竹のケイ酸循環・千葉大学リポジトリ https://opac.ll.chiba-u.jp/da/curator/101795/D20150928_HMB_0028.pdf / C/N比と分解 minorasu https://minorasu.basf.co.jp/80146 / 竹林と環境・京都教育大 https://www.kyokyo-u.ac.jp/cee/15-8.pdf )ただし竹林は必ず多様性が低いと単純には言えないという研究もあります(鈴木重雄・森林科学)。
ここでは私たちが現場で見た傾向として書いています。
しがらが、生きものの島になる
そこに、コナラの落ち葉を充填したしがらを組みました。コナラの落ち葉は竹の落ち葉と違い、炭素と窒素の比がほどよく、柔らかくて分解しやすい。竹の杭と横木、そして落ち葉が、湿り気を保ち、適度に暗く、有機物が溜まる小さな環境をつくります。土の生きものにとっては、餌と住処が同時にそろう理想の場所です。
だから、生きものの乏しい竹林の土の中に、しがらだけが命の島になりました。分解者たちがここで竹とコナラを土に変え、団粒という小さな土のかたまりをつくる。この団粒が、水を通しながら水を蓄える土をつくります。以前この斜面で確認したコナラの実生が根を張れているのも、この土があるからです。

生きものたちの役割
しがらの中で、生きものは役割を分けて働いていました。
ダンゴムシやワラジムシは、エビやカニと同じ甲殻類です。落ち葉を噛み砕いて細かくします。砕かれた葉は表面積が増えて、菌やバクテリアが取りつきやすくなる。彼らは分解の下ごしらえをする職人です。
小さな白い虫(トビムシの仲間)は、土の中の菌を食べて、その菌のバランスを整えます。近年の研究では、多くのトビムシは落ち葉そのものより、菌根菌や新しくつくられた炭素を食べていることがわかってきました(森林総合研究所ほか 2021 https://www.ffpri.affrc.go.jp/press/2021/20211108/index.html )。
彼らがいることは、土がうまく回っているしるしでもあります。
そしてミミズ。落ち葉を食べて糞を出し、その糞が水に強い団粒になって、通気と保水と排水を両立させる土をつくります(農研機構 荒井見和 https://www.jstage.jst.go.jp/article/dojo/88/5/88_880511/_pdf/-char/ja )。

ミミズは土そのものを組み立てる、生態系のエンジニアです。
砕く者、菌を整える者、土を組み立てる者。この役割のリレーで、竹とコナラは土に還っていきます。
消えていくことが、成功
木を切ることも、竹を組むことも、私たちの手は、いつか自然に還るための起点でしかありません。人が組んだしがらは、十年二十年で朽ちていきます。でもその前に、この小さな職人たちが素材を土に変え、次の森の土をつくり、芽生えたばかりのコナラに手渡してくれる。

竹林整備は、竹を減らす仕事ではなく、生きものの乏しくなった土に、もう一度命を戻していく仕事です。目には見えない土の中で、次の森はもう始まっていました。
三重県亀山市・菰野町を中心に、里山や竹林の整備、しがら工法による斜面保全を承っています。https://www.senteiyasora.com






