SATOYAMAイニシアティブ推進ネットワークに加入しました。庭から里山まで、繋がる事で見えてくるもの。
- 飯島 一郎
- 7 時間前
- 読了時間: 5分
竹林の斜面で、落ち葉を敷き詰めたしがらの中をそっと掘ると、ダンゴムシがいて、ミミズがいて、小さな白い虫が動いていました。
数メートル離れた竹林の土を掘っても、生きものはほとんど見あたりません。同じ斜面なのに、しがらの中だけが違う。
その違いを、どう言葉にして、誰に渡せばいいのか。ずっと考えていました。

このたび剪定屋空は、SATOYAMAイニシアティブ推進ネットワークに加入しました。
2026年7月、事務局より参加の確定と、既存の会員の皆様への紹介の連絡をいただきました。

SATOYAMAイニシアティブとは何か
2010年10月に開催された生物多様性条約第10回締約国会議、いわゆるCOP10で、生物多様性に関する新たな世界目標である愛知目標とともに、SATOYAMAイニシアティブが提唱され、世界的に推進していくことが採択されました。
二次的な自然環境における生物多様性の保全と、その持続可能な利用の両立を図る取組です(環境省 https://www.env.go.jp/nature/satoyama/initiative.html / SATOYAMAイニシアティブ推進ネットワーク https://www.pref.ishikawa.jp/satoyama/j-net/satoyama.html )。
二次的な自然環境という言葉が、この取組の芯にあります。原生の手つかずの自然ではなく、人が関わり続けることで維持されてきた自然のことです。田んぼも、雑木林も、竹林も、そして庭も、人の手が入り続けてきたから今の姿があります。
近年、人口の減少や産業構造の変化によって、自然に対する人の働きかけが縮小し、撤退しています。里山などの二次的な自然環境や、その自然資源の持続的な利用が失われつつある(前掲・推進ネットワーク)。手が入らなくなった竹林が広がっていくのも、この流れの中にあります。
推進ネットワークは、いつできたのか
SATOYAMAイニシアティブが目指す自然共生社会を国内で実現するために作られたのが、SATOYAMAイニシアティブ推進ネットワークです。
設立は2013年9月13日。福井県福井市で開かれたIPSI第4回定例会合に合わせて、里山保全の全国組織として設立されました。設立総会には、企業、民間団体、研究機関、行政など101の団体が参加し、石川県知事と福井県知事が共同代表に就任しています。事務局は石川県と福井県が共同で担っています(前掲・推進ネットワーク / 福井県 https://www.pref.fukui.lg.jp/doc/shizen/satotisatoyama/satoyama-initiative.html )。
目的は、多様な主体がその垣根を越え、交流や連携、情報交換を図るためのプラットフォームを築くこと。
生物多様性の保全はもとより、元気なSATOYAMAを生み出す生業づくりや、地域資源を活用した地域振興を進め、SATOYAMAにおける生物多様性の保全や利用の取組を国民的な取組へと広げていくことが目的として掲げられています(前掲・推進ネットワーク)。
このネットワークが面白いのは、SATOYAMAという言葉の幅です。里地里山だけでなく、里海、里沼、里湖、里川。人が関わり合うことによって維持され、形成されてきた二次的自然環境をまとめてSATOYAMAと表記しています(前掲・推進ネットワーク)。
垣根を越える、という言葉が繰り返し出てきます。企業も、NPOも、研究機関も、行政も、同じ土俵で話す。造園業がそこに混ざる意味は、小さくありません。

なぜ加入したのか
私たちは三重県菰野町を拠点に、庭木の手入れから竹林整備、森林整備まで手掛けています。個人邸のお庭から、竹林、棚田の再生まで、庭から山までを一つの現場として見てきました。
その現場で分かったことがあります。庭の一本の木と、里山の一枚の斜面や森林は切り離せません。
三重県亀山市の法因寺様では、年間を通じて竹林整備をさせていただいています。
真竹の竹林が広葉樹の森へ移り変わっていく途中の斜面で、竹ばかりになって表土が流れ出していた場所に、しがら工法で土留めを組みました。竹の杭と横木を等高線に沿って組み、その中にコナラの落ち葉を充填する工法です。
素材は10年から20年ほどで土に還ります。そのころには根づいた植物が斜面を支える役目を引き継いでいる。人の手が自然に還っていく過程そのものを設計に組み込んだ、江戸時代から続く技術に現代の生態学の知見を加えた工法です。
施工から2か月半後の2026年6月13日、現地を調べたところ、この斜面で幼木31本の定着を確認しました。
そのうちコナラが22本、最大の高さは20センチほどでした。竹林の跡地は、コナラが自然には更新しにくい場所です。それでも芽生えたのは、充填した落ち葉が、種を運び、湿り気を保ち、分解者を呼び、土を作ったからでした。
この竹林は、認定に必要な資料一式を私たちで作成し、2025年10月7日に亀山市のかめやま生物多様性共生区域の認定を受けています。

現場の記録を、どこへ残すか。
冒頭のしがらの中の生きものの話に戻ります。
私たちの仕事は、一つの現場で完結してしまいがちです。斜面が守られ、木が育ち、施主様に喜んでいただく。それで十分といえば十分です。
でも、竹林跡でコナラが芽生えた理由を確かめ、記録し、次の斜面に活かすには、私たち一人の目では足りません。全国には、同じように里山に手を入れ続けてきた方々がいて、それぞれの答えを持っています。
庭も同じで管理させていただいている年間管理のお庭は都度記録を残し施主様と情報を共有しています。
ネットワークへの加入を通じて、里地里山の保全や生物多様性に関する知見を他の団体と共有し、日々の現場での実践に活かしていきたいと考えています。
同時に、私たちが現場で見てきたこと、しがらの中の生きものや、コナラの幼木の数を、必要とされる場面があれば喜んでお渡ししたいと思っています。

しがら工法の素材は、いつか土に還ります。人が組んだものが朽ちて、植物が引き継ぐ。それが完成した姿です。
私たちの仕事も同じだと思っています。手を入れた痕跡が、最後には風景の中に溶けていく。
庭も、竹林も、里山も、そうやって続いてきました。
SATOYAMAという言葉が、里地里山から里海、里沼、里湖、里川まで含むように、人が関わることで守られてきた自然は、この国のあちこちにあります。
庭もまた、その一つです。青空はどこまでも広がっている。庭から山へ、山から地域へ、つながりの中で仕事をしていきます。
https://www.senteiyasora.com




