お庭の土づくり寒肥
- 三重県剪定伐採お庭のお手入れ専門店 剪定屋空

- 2 日前
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寒肥(かんごえ)をしに、お庭へお伺いさせていただきました。
冬の施肥というと春に向けて栄養を与える作業と思われがちですが寒肥の本質は、肥料を効かせる前段階=根と土の再設計にあります。
今回使用した資材一式は、
単に栄養を入れるためではなく、
根が呼吸し、微生物が住み、養分を保持できる土をつくる事を目的としました。

1. 土台を作る:土壌改良材
■ ユーキフルペレット(高濃度腐植酸)
役割:土の胃袋(保肥力)の拡大
堆肥の数倍にあたる腐植酸を含み、
土壌のCEC(陽イオン交換容量)を高めます。
特に重要なのが、リン酸の固定化を防ぐ作用。
リン酸は土に捕まってしまいがちな栄養ですが、
ユーキフルを併用することで、根が吸える形で保持されます。
■ ゼオライト(多孔質鉱物)
役割:根腐れ防止・土壌の安定化
多孔質構造により、
アンモニアや根から出る老廃物を吸着。
粘土質土壌 → 通気性改善
砂質土壌 → 保水性向上
という、真逆の性質を同時に補正できるのが特徴です。
■ くつぎバーク(広葉樹皮堆肥)
役割:物理性の改善(ふかふか化)
繊維質が団粒構造をつくり、
土の固結を防ぎます。
微生物にとっての長期居住区となり、
時間をかけて土を育てる役割を担います。
■ バイオチャコール I(炭+微生物)
役割:微生物多様性の確保
炭の無数の孔が、菌根菌など有用微生物のシェルターになります。
【栄養を入れる:肥料】
■ BG有機窒素(10-0-0)
役割:樹勢回復・春の伸長力
高濃度の有機窒素で、
春の枝葉の伸びを明確に後押しします。
弱った木や更新期の樹木に限定して使用します。
■ リン・カリ肥料
役割:花芽形成・根の強化
冬の間に根を伸ばし、春の花付き・実付き・紅葉の質を高めます。
ユーキフルとの併用で、吸収効率が大きく向上します。
■ 油かす
役割:寒肥のベース栄養
ゆっくり効く有機肥料。
地温上昇や微生物活性の土台として使います。
特殊ツール:深層施肥
■ マキタ アースオーガ
縦穴を掘ることで、固結した土盤を破砕し、
空気・水・資材を深層へ届けるための道を作ります。 根を傷つけないために慎重に行います。
■ グリーンパイル
打ち込み型肥料。
狭所・生垣・移植直後など、
根を極力傷めたくない場所で使用します。
松によく使用してます。
2. ケース別・配合レシピ(現場での使い分け)

パターンA:【樹勢回復・成長促進】
対象
シンボルツリー・弱った木
狙い
「とにかく元気に、葉を茂らせたい」
配合イメージ
くつぎバーク:多
ユーキフル:中
ゼオライト:中
BG有機窒素:中
施工
アースオーガで30〜50cmの縦穴施肥。
効果
瞬発力(BG)+保持力(腐植酸)で、
春の芽吹きが明確に変わります。
パターンB:【花木・実物・紅葉】
対象
ウメ・サクラ・果樹・モミジ
狙い
「花を咲かせる・実をつける・色を良くする」
配合イメージ
くつぎバーク:中
ユーキフル:多(重要)
リン・カリ:中
油かす:少
施工
枝先下への壺肥。
効果
窒素を抑え、
リン酸を確実に根へ届けることで
つるボケを防ぎ、花芽を充実させます。
パターンC:【排水不良・環境改善】
対象
日陰・ジメジメ・根腐れ懸念地
狙い
「まず呼吸できる土へ」
配合イメージ
くつぎバーク:多
バイオチャコール:多
ゼオライト:多
肥料分:ほぼ無し
施工
深めの縦穴でバーチカルドレーン効果を作る。
効果
肥料より先に、
根圏の浄化と通気改善を優先します。
パターンD:【狭所・生垣・省力化】
対象
機械不可・本数が多い場所
使用資材
グリーンパイル
施工
木づちで打ち込み。
効果
最小限の労力で、
確実に深層へ栄養を届けます。
3. 寒肥戦略

今回の寒肥から見える考え方は、次の3点です。
腐植酸+ゼオライトを核に、
肥料ではなく土の基礎体力を上げる。
アースオーガによる物理的改善を前提に、
空気と水の通り道を先につくる。
窒素型・リンカリ型を明確に使い分け、
樹木の目的(成長か、結実か)に合わせた管理を行う。
穴を掘って落ち葉をすき込む事もあります。

寒肥は、春の結果を静かに仕込む仕事。
見えない冬の作業が、数ヶ月後のお庭の表情を決めていきます。
今日もまた、土の中で春の準備が始まりました。







