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しがら工法の材料集め

  • 執筆者の写真: 三重県剪定伐採お庭のお手入れ専門店 剪定屋空
    三重県剪定伐採お庭のお手入れ専門店 剪定屋空
  • 18 時間前
  • 読了時間: 3分

三重県菰野町の剪定伐採専門店、剪定屋空です。


斜面にしがらを組むための資材を集め、まとめました。



伐採で出た横木、払い枝の粗朶、山から集めた落ち葉など宝物です。


黙々と枝を運び、束ね、揃えてゆく。


その作業の最中に、ふと思いました。


ビーバーも、こんな気持ちで枝を集めているのだろうか、と。


しがら(柵)とは、杭を打ち込み、粗朶や枝を編み込んで土を留める伝統的な循環型工法です。


コンクリート擁壁とは異なり、空気や水の流れを妨げずに斜面を安定させることができます。


完全に塞がず、流れを緩やかにするという特性は、ビーバーダムの構造と驚くほど共通しています。


サウサンプトン大学のMüller & Watling(2016)の研究によれば、ビーバーダムは枝と泥だけで構成される半透過性の構造体であり、水を完全に止めるのではなく、制御された透水を意図的に行っているとされています。


そしてその行動は学習ではなく、DNAに刻まれた本能。


1960年代のラース・ウィルソンの実験では、親から隔離して育てたビーバーの子どもが、初めて流水に触れた瞬間からほぼ完璧なダムを建造しました。さらに水の流れる音をスピーカーで再生すると、実際の水漏れではなくスピーカーの上にダムを組み始めたといいます。


枝を集め、泥を塗り、水の音に導かれて構造物を編み上げてゆく。


その姿に、枝と粗朶でしがらを組む自分たちの仕事が重なります。


ビーバーダムの生態系への貢献も注目に値します。


Wohl(2013)の研究では、ビーバーが維持する湿地帯は景観全体の炭素貯留量の約23%を担い、ビーバーが去った後は約8%にまで減少することが示されました。


枝と泥の小さな構造体が、炭素を貯え、水を浄化し、山火事から命を守っている。


Fairfax博士の研究(2020)では、ビーバーダムのある河畔域は大規模山火事でも植生の損失が著しく少なかったことが報告されています。


今回、山から集めた落ち葉の中にはコナラのドングリがいくつをいくつも混ぜています。


施工後、落ち葉は土壌微生物によりゆっくりと腐植へ分解され、土壌環境を整えてゆく。


そしてドングリは発芽し、コナラの根が斜面を支えはじめる。


木材が朽ちる頃には、実生の根そのものが構造体となる。


ビーバーダムもしがらも、永続する構造物ではありません。


けれど、朽ちてゆく過程で生態系を育み、やがて自然の力に役割を委ねてゆく。



このリビング・ストラクチャー(生きた構造体)という考え方は、私たちが目指すリジェネラティブガーデン(地球再生型庭園)の根底にある思想と深く通じています。


まだ資材を並べただけの景色。


けれど、枝を集めるビーバーの気持ちが少しわかった気がします。


参考文献:

Müller, G. & Watling, J. (2016). The engineering in beaver dams. River Flow 2016.

Wohl, E. (2013). Landscape-scale carbon storage associated with beaver dams. Geophysical Research Letters, 40.

Fairfax, E. & Whittle, A. (2020). Smokey the Beaver: beaver-dammed riparian corridors stay green during wildfire. Ecological Applications.

Kaplan, S., & Kaplan, R. (1989). The Experience of Nature: A Psychological Perspective. Cambridge University Press.

 
 
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