木陰の温度は日なたより12.7℃低かった。ヨーロッパの熱波と、四日市の庭の夏

kokage-ondo-netsupa-2026

木陰の温度を、8月の四日市の庭で測りました。木陰をつくる葉は29.7℃、すぐ横の日なたのむき出しの地面は42.4℃。差は12.7℃です。

測ったのは2026年8月18日の午後2時57分。サーモグラフィー(FLIR)で、同じ画角のまま測る点だけを動かして、5秒の間に2枚撮りました。表面の温度なので、気温とは別の数字です。
同じ夏、ヨーロッパでは暑さで多くの人が亡くなっていました。
イギリスのインペリアル・カレッジ・ロンドンの研究チームが2026年10月に出した推計では、この夏(6月から8月)、ヨーロッパ30か国の854の都市で、暑さに関係する死者はおよそ5万391人。そのうち約3分の2は、人が引き起こした温暖化がなければ起きなかったとしています。
2003年や2022年の熱波を上回り、この26年でいちばん多い夏でした。役所の死亡統計ではなく、気温と死亡の関係から計算した推計です。
都市の木がどれだけ効くかを計算した研究もあります。2023年に医学誌ランセットに載った研究は、ヨーロッパ93都市の2015年の夏を調べました。都市が周りより暑いことで亡くなった人は約6,700人。木で覆われた面積を都市の30%まで増やしていれば、そのうち約3人に1人、2,644人は防げたと試算しています。木が下げた気温は、夏の平均で0.4℃でした。
0.4℃と聞くと小さく感じます。ただ、これは都市全体の気温を均した数字です。木の真下と日なたの地面では、表面の温度が10℃以上違う。その差が、人の歩く道や、庭の土の上で起きています。
葉が涼しいのは、葉が水を出しているからです。根から吸った水を葉から蒸散させるときに、熱を一緒に捨てています。
だから木陰は、水があるときだけ働きます。
アメリカ・アリゾナの記録的な熱波のなかで、ポプラの葉を追いかけた研究があります(2024年・米国科学アカデミー紀要)。水が足りているあいだ、葉は気温より2〜5℃低く保たれていました。ところが水やりを72時間だけ7割減らすと、葉の温度は気温より3℃高くなり、冷やす力が逆に転じました。水を戻しても、冷やす力が戻るまでに数週間かかっています。
熱波のときには、都市の木の冷やす力が最大で3割落ちるという報告もあります。いちばん暑い日に、いちばん効かなくなる。木陰の弱いところです。
今年の四日市の夏は、暑いというより乾いていました。気象庁の四日市の観測で、7月22日から8月17日までの雨は15.5mm。去年の同じ時期の51.0mmの3割です。7月29日から8月11日までは、14日間一滴も降っていません。35℃以上の日は去年の7日から10日に増えましたが、日平均気温は28.7℃から28.8℃で、ほとんど変わっていませんでした。
測った日の庭でも、緑の新芽を伸ばしているシキミの一部の葉だけが、茶色く焼けていました。木は元気に見えても、葉の温度を下げる力は先に落ちることがあります。
庭の手入れでできることは、大きく3つあると考えています。
夏に強く剪定しすぎないこと。木陰をつくっているのは葉の量そのものなので、真夏に大きく葉を落とすと、その夏の木陰が減ります。
透かして、風を通すこと。葉を残したまま枝を抜くと、木陰を保ったまま、木の中に風が抜けます。
地面をむき出しにしないこと。42.4℃だったのは、何も生えていない土の面でした。下草や落ち葉、苔で地面を覆うのも、ひとつの手です。
そして、乾いた夏には木に水を。葉がしおれる前に、冷やす力は落ちはじめています。

ヨーロッパの5万人という数字は、遠い国の話に見えます。けれど12.7℃の差は、四日市の庭の、ふだんの夏の午後に測った数字です。







