ボタニカル・ライフから25年。植物本 日日是植物

エッセイスト、作家、ラッパーそして俳優と、活字から映像、舞台、音楽と多方面で活躍しながら独自の世界観を表現してきた著者、いとうせいこうさん。2000年前半にNHKで放映されていた子供向け視聴者参加番組にも出演されていましたね。そんな著者が書いた植物本 ボタニカル・ライフ から25年、まだまだ続いていた植物たちとの日々を綴ったエッセイが 日日是植物(にちにちこれしょくぶつ)です。

自宅の庭で園芸を行うガーデナーに対し、ベランダで園芸活動をする人をベランダーと命名、そして今回はベランダーからルーマーへ。ルーマーは室内で園芸活動をする人、という意味合いのようです。著者も 思えばガーデナーからずいぶん遠くまで来たもの と記しているように、かなり創造力の必要な名称かもしれませんが、室内にビニールハウス(温室)を設置されているようですよ。
東京新聞での人気連載7年分の書籍化、2026年2月26日に発刊された264ページの本です。登場する植物たちは、ニチニチソウやパンジー、オリヅルラン、カネノナルキ、そしてシイタケ、マイクロ胡蝶蘭などなど。変わらずプロらしさのない園芸歴25年の植物愛とユーモアあふれる、笑いながら読んでしまう楽しいお話です。

ベランダから室内へ、という移動
版元の紹介文に、昨今の気候変動もあいまってベランダ園芸から室内園芸にシフトしつつある、とあります。ここを読んで、手を止めました。
これは笑い話の枕ではありません。庭の現場で起きていることと同じです。
気象庁の観測では、全国の猛暑日の年間日数は100年あたり2.6日の割合で増えています。日本の年平均気温は100年あたり1.35度の上昇で、世界平均より大きい値です。
数字にすると2.6日、1.35度。庭で見ると、鉢を置ける場所が減った、ということになります。
コンクリートの上は、思っているより熱い
今年の8月、三重県内のお庭でサーモグラフィを使って地面の温度を測りました。同じ時刻、5秒ちがいの2枚です。
木陰の葉の表面が29.7度。すぐ隣の裸地が42.4度。差は12.7度でした。
植栽の上が32.6度、舗装の上が40.5度という組み合わせもありました。こちらは7.9度差です。
ベランダの床はたいてい舗装と同じ側です。気温が35度の日に、鉢の底が触れている面は40度を超えている。根は逃げられません。室内に鉢が移動していくのは、感覚ではなく、理屈が合っています。

鉢を置く場所は、地面より難しい
庭に植えた木は、根を伸ばして涼しい深さを自分で探せます。鉢の植物にはそれができません。
だから鉢は、置き場所の選び方がすべてになります。夏の日中、直射が当たる時間が何時間あるか。床から何センチ浮かせられるか。風が抜けるか。この本のベランダーからルーマーへの移動は、その積み重ねの先にあります。
この日本で広大な庭や畑を維持するのはなかなか大変なご時世でもありますが、マンションやアパートのベランダで、もしくは室内で、あーでもない、こーでもない、と迷いながら植物たちと暮らしていくのも楽しいもの。気になる方はぜひご一読を。
本の情報
植物本:日日是植物(にちにちこれしょくぶつ) いとうせいこう著
マガジンハウス 2026年2月26日発売 四六並製264ページ 1,870円(税込)
よくあるご質問
ベランダの鉢が夏に弱ります。どうすればよいですか。
まず床からの熱を切ってください。すのこや台で浮かせるだけで、鉢の底が受ける熱が変わります。そのうえで、直射が当たる時間を短くします。水やりの回数を増やすより先に、置き場所を変えるほうが効きます。
室内に入れると徒長しませんか。
光が足りなければ徒長します。窓からの距離を優先してください。夏の高温を避けるために室内へ入れるなら、いちばん明るい窓の近くに置き、風が動くようにします。
庭木も暑さで弱りますか。
弱ります。とくに地面が硬く水が入らない場所ほど地温が上がります。株元にできる範囲で日陰を作り、土を裸のままにしないことが助けになります。
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