涼しさで名づけられた木と、花のかたちで名づけられた木
- 飯島 一郎

- 2 時間前
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桑名市にてお庭の定期管理をさせていただきました。芝を刈り、除草をし、落ち葉を掃いて、アベリアの徒長枝を外す。
手入れの合間に、シマトネリコの木陰でひと息ついていました。強い日射しの日でしたが、木陰があるってありがたい。

木陰というのは、地面の温度でいうと日なたより十一度から二十五度も低くなります。
体で感じる涼しさにすると二度から八度ほど。面白いのは、暑くて日射しが強い日ほど、木は葉から水を蒸散させ、日陰を濃くして、冷やす力が最大になるということです。
この木、シマトネリコといいます。学名は Fraxinus griffithii。英語では evergreen ash、常緑のトネリコと呼ばれます。海外の造園でも、成長が速く、濃い木陰をつくる木として庭木の定番になっています。
人はこの木を、涼しさで名づけました。葉の色でも、花でもなく、その木がつくる日陰のありがたさを見て、名前にしたのです。
そのすぐ隣に、トキワマンサクが株立ちしています。学名は Loropetalum chinense。属名の Loropetalum は、ギリシャ語の loron、紐や革ひもという言葉と、petalon、花びらという言葉を合わせたものです。
あの細く縮れた花びらを、そのまま紐の花と名づけた。英語の通称も fringe flower、房飾りの花です。人はこの木を、花のかたちで名づけました。
同じ庭の、隣り合う二本です。片方は木陰を見てもらって名前になり、片方は花のかたちを見てもらって名前になった。
木が自分で名乗ったのではなく、人がその木の何を見て、何をありがたいと思ったか、そのまなざしの違いが、そのまま名前として残っています。庭木の名前をたどると、その木と暮らした人が、どこに目を留めていたかが見えてきます。
私たちの仕事は、木を切って終わりではありません。手を入れた庭は、そこから先も人と木の関わりが続いていきます。
木陰は目立ちません。花のように写真に撮られることも少ない。けれど、暑い日にそこへ人が集まって休む。名前になるほど、その涼しさは長く人に覚えられてきました。作ってからが始まりだと、いつも思います。
今回の手入れでは、アベリアの徒長枝を外し、シランの枯れ葉を取り、芝刈りと除草、落ち葉掃除をさせていただきました。
清掃のあと、両庭の必要な箇所に消毒を、芝と砂利部分に除草剤を散布しています。足元では、ヤブランが可愛らしく咲いていました。
季節ごとに違う木が主役になります。次はどの木の、何を見せてもらえるか。それを楽しみに、また伺います。
最終更新: 2026年07月
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