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【伊勢國お庭街道】三重県の名園を巡る - 日本庭園と庭師の技にふれる旅

  • 執筆者の写真: 三重県剪定伐採お庭のお手入れ専門店 剪定屋空
    三重県剪定伐採お庭のお手入れ専門店 剪定屋空
  • 3月27日
  • 読了時間: 4分

三重県に点在する名園の数々が、国土交通省のガーデンツーリズムとして正式登録されました。「伊勢國お庭街道」。


この取り組みは、地域に根ざす日本庭園の美と歴史を広く知ってもらうと同時に、日本の伝統的な造園文化を未来へと繋ぐ貴重な機会でもあります。


三重県内に点在する7つの登録庭園について、庭園様式や文化的背景、見どころを造園の視点から掘り下げてご紹介します。


【1. 六華苑(桑名市)】 明治の実業家・諸戸清六の邸宅であり、ジョサイア・コンドルが設計した近代洋風建築と日本庭園が融合する名苑。庭園は池泉回遊式で、西洋館のバルコニーからの眺望も絶品。園路や築山、水の流れが巧みに構成されており、近代建築ファンから造園愛好家まで楽しめる庭です。


【2. 横山氏庭園(菰野町)】 昭和を代表する作庭家・重森三玲による枯山水庭園。石の配置や砂紋に抽象美が表れ、見る者の感性を刺激します。非公開ながら、特別公開の際には重森庭園の真髄を堪能できる貴重な機会となります。幾何学的構成と精神性を重視する重森の世界観が濃密に現れています。

 

剪定屋空では横山氏庭園に2021年から一年間だけ携わらせていただきお庭全体の手入れや盛り土の修復などを行わせていただき貴重なお庭に触れさせていただく事ができました。 今は私たちが尊敬する菰野町の庭師284.仲さんが手入れに従事しております。 



【伊勢國お庭街道】三重県の名園を巡る - 日本庭園と庭師の技にふれる旅

 重県菰野町にある菰野横山邸園(登録記念物)にてイブキの刈り込み+築山補修土留施工



【3. 伊奈冨神社庭園(鈴鹿市)】 500年以上の歴史をもつとされる「七島池」が中心の神社庭園。七つの島が浮かぶ池泉式の構成で、素掘りの自然な地形が特徴。宗教的な荘厳さとともに、自然との共生を感じられる空間となっています。


【4. 専修寺「雲幽園」(津市)】 国宝・専修寺の境内にある非公開庭園。池泉回遊式で、苔むした築山や茶席「安楽庵」が配置されています。庭園は千利休の息子・道安と織田有楽斎が設計に関わったと伝わり、数寄の精神が随所に表現されています。


【5. 北畠氏館跡庭園(津市美杉町)】 室町時代の武将・北畠氏の居館跡に広がる池泉回遊式庭園。戦国武将の文化的素養が垣間見えるこの庭では、築山・池・石組みが静かに共存し、自然と歴史の融合が体験できます。国指定史跡・名勝。


【6. 旧長谷川治郎兵衛家(松阪市)】 江戸期の豪商・長谷川家の屋敷内にある商家型日本庭園。池泉式で、石橋や灯籠、植栽などが巧みに配置されており、当時の商人文化の豊かさと審美眼が表れています。建築との一体感が特徴。


【7. 玄甲舎(玉城町)】 築170年以上を誇る茶室と露地庭で構成された文化財。茶室から眺める庭には、侘び寂びの美が漂い、伝統的な露地の設えが現代に静けさと精神性を伝えています。現在も茶会等に利用されている生きた庭です。


【巡る際のおすすめルート】 三重県北部から南部へと南下するルートがおすすめ。桑名市の六華苑を起点に、菰野町、鈴鹿市、津市、美杉町、松阪市を経て、最終目的地として玉城町の玄甲舎を訪れることで、効率的かつ時代背景を追うような旅が楽しめます。


【季節ごとの楽しみ方】


  • 春:新緑と苔、サクラが庭園に彩りを加える

  • 夏:池泉に映る青空と深い緑のコントラストが見事

  • 秋:紅葉と石組み、砂紋の陰影が際立つ季節

  • 冬:雪化粧や冬囲いなど、庭師の技と工夫が際立つ


【注目すべき造園ディテール】


  • 飛石の配置と歩幅との関係

  • 灯籠や手水鉢の設置位置と意味

  • 苔の種類や日照条件への対応

  • 水の流れ(導水・排水)の見えない工夫

  • 茶室と露地庭の関係性、空間構成



【日本庭園文化を未来へ繋ぐために】


これらの庭園は、単なる観光地ではなく、日本文化の深層に根差す造園技術や精神性を現代に伝える「生きた文化遺産」です。


庭師は自然と対話しながら空間をつくり、守り、育てる存在。


気候変動、後継者不足、地域の過疎化といった現代的課題に立ち向かうには、より高度な知識と技術、そして地域との協力が必要です。


剪定屋空は、こうした庭園の魅力を伝え、現代の庭師としてその価値を継承しながら、新たなかたちで次世代に庭文化をつなげていきたいと考えています。


伊勢國お庭街道を訪れることは、日本庭園の魅力にふれるだけでなく、それを支える職人たちの息づかいを感じる旅でもあります。 

 
 
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