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なぜ昔の人は里山の大木を切らなかったのか—科学が証明した菌根菌ネットワーク

  • 執筆者の写真: 三重県剪定伐採お庭のお手入れ専門店 剪定屋空
    三重県剪定伐採お庭のお手入れ専門店 剪定屋空
  • 6 日前
  • 読了時間: 4分
里山に立つ巨大なコナラの老木 — 菌根菌ネットワークの中心となる親木

里山の仕事をしていると、集落の近くに必ず大きな木が残っています。神社の境内のスギ、田んぼの脇の大きなコナラ、水辺のケヤキ。その多くは人が意図的に切らずに残してきた木です。なぜ残したのか。昔の人には答えを聞けませんが、いまの科学がその理由を少しずつ明らかにしています。


里山の大木は切ってはならないという伝承


各地の集落には、大木を切ると祟りがあるという言い伝えが残っています。神木、御神木として保護されてきた木は日本中にあります。これは迷信ではなく、長い観察のなかで得られた生態学的知恵が信仰のかたちをとったものだと、いまの研究者は考えています。


大木を切ると水が涸れる、という言い伝えもあります。実際、根が深く張った大木は土壌を保持し、雨水を地下に導く機能を持ちます。これは現代の水文学が裏付けていることです。


地上の木々と地下でつながる菌根菌ネットワークの概念図

木は地下でつながっている


1997年、カナダの森林生態学者スザンヌ・シマードはネイチャー誌に論文を発表しました。ダグラスモミの木々が、土壌の菌類(外生菌根菌)を介して炭素を互いに移送していることを示したものです。木は地上では独立した個体に見えますが、地下では菌根菌のネットワークを通じてつながっています。


このネットワークは後にウッドワイドウェブ(wood wide web)と呼ばれるようになりました。菌根菌は木の根に共生しながら広大な地下ネットワークを形成し、木はこれを通じて糖・リン・窒素などを融通し合っています。この仕組みはその後の研究で繰り返し確認され、森を理解する上で欠かせない概念になりました。


親木が若い木を育てる


シマードの研究で特に注目されたのは、親木(マザーツリー)の役割です。大きな老木は菌根菌ネットワークの中心ハブとして機能し、周囲の若い木や実生に優先的に栄養を送ることが確認されました。同じ種の実生には特に多く送る傾向があることもわかりました。


大木は単に自分が生きているだけではありません。周囲の若い世代を支えるハブとして、森全体の更新を陰で支えています。昔の人が大木を残し続けた集落では、結果としてこのハブが機能し続け、里山の植生が安定していた可能性があります。


鎮守の森の大木に守られる伝統的な日本の集落

庭の大木をどう考えるか


庭に大きな木があると、管理の手間がかかります。落ち葉、日陰、根の張り出し。それでも、大木には菌根菌ネットワークのハブとしての機能があります。古い木を切ったあとに植えた若い木がなかなか育たない、という経験を持つ方は少なくありません。


根ごと撤去することと、地上部だけ管理することでは、地下の菌根菌ネットワークへの影響が大きく異なります。大木の扱いは、地上の枝葉だけでなく、地下のネットワーク全体を踏まえて考えることが、生態学的には正解に近いと考えられています。


豆知識


菌根菌には大きく2種類あります。根の細胞内に共生する内生菌根菌(AMF)と、根の細胞外に菌鞘を形成する外生菌根菌(ECM)です。コナラ、ブナ、マツなど里山でよく見る木の多くはECM型で、このタイプのネットワークが特に発達した物質交換機能を持つとされています。シマードの研究はECMを持つダグラスモミで行われました。(参照:Simard et al., Nature 1997)


よくあるご質問


庭の古い木を切るとき、何か気をつけることはありますか?

根を残すかどうかによって菌根菌ネットワークへの影響が変わります。撤去が必要な場合でも、地面下の根をすべて取り除くより一部を残した方が、周囲の木のネットワークへの影響が少ないとされています。


若い木を植えるとき、菌根菌を意識した方がよいですか?

市販の培土には菌根菌が含まれていないものが多く、植え付け後しばらくはネットワークへの接続がない状態になります。既存の大木の根圏に近い場所に植えること、菌根菌資材を活用することが、根付きをよくする助けになります。


里山の木を伐採するときの配慮は?

皆伐より択伐(一部だけ切る)の方が菌根菌ネットワークへの影響が少なく、残った木が若い木の育成を支えやすくなります。作業の際は既存の広葉樹をできるかぎり残しながら進めることを心がけています。


対応エリア

四日市市、鈴鹿市、いなべ市、桑名市、亀山市、津市、松阪市、菰野町、朝日町、川越町、東員町、木曽岬町


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