今年はまだ間に合いそう。彼岸花の名所、秋のおでかけに ヒガンバナ のツボミ
- 飯島 一郎

- 2023年9月23日
- 読了時間: 3分
更新日:5月19日
突然そこに現れる、赤い炎のような花。ほかの草花が茂る夏の気配が残るうちに、葉もなく茎だけがすっと伸びて、ある朝気づくと鮮やかな緋色の花が咲いている。
彼岸花(ヒガンバナ)とはそういう植物です。庭仕事の合間に田んぼのあぜ道や山裾を歩くと、この花が一斉に咲きそろう瞬間に出くわすことがあります。その唐突さと色の鮮烈さに、毎年ながら息をのみます。
秋分の日前後に咲くことからその名がついたとされるヒガンバナは、日本の里山の風景に深く根ざした植物です。三重県でも芸濃町安濃川沿いや名松線沿い、丸山千枚田など棚田の景色と重なる名所が多く、この時期になると赤い絨毯のような群落が田んぼの縁を彩ります。

葉なしで咲く不思議——「葉見ず花見ず」のしくみ
ヒガンバナの最も特徴的な習性は、葉と花が同時に存在しないことです。
春から夏にかけては葉だけが茂り、葉が完全に枯れた後の秋に、葉のないまま花茎だけを伸ばして花を咲かせます。花が終わると再び葉が出てくる——この「先花後葉」の仕組みは、球根の中に蓄えたエネルギーを使って花を咲かせるためです。
江戸時代から「葉見ず花見ず」と呼ばれてきたこの姿が、どこか神秘的な印象を与えています。
原産は中国とされており、日本には稲作とともに渡来したと考えられています。
田んぼのあぜ道に植えられてきたのは美観のためだけではなく、球根に含まれる毒成分(リコリンなど)がモグラやネズミを遠ざけるためでした。食料を守るための知恵が、結果として美しい里山の景色を作り上げたとも言えます。

球根の毒と昔の人の知恵
ヒガンバナの球根はリコリンをはじめとするアルカロイド系の毒を含んでいます。
誤食すると嘔吐・下痢・呼吸困難などを引き起こす危険があります。ただし、毒は水溶性であるため、昔の人々はこの球根を何度も水にさらして毒を抜き、非常食として利用していました。「飢饉の時には食べられる」という知恵が各地に伝わっているのはこのためです。
庭や公園で見かけた場合、小さなお子さんが触れないよう注意が必要ですが、成熟した球根に素手で触れた程度では大きな問題はありません。摘んで口にいれることさえしなければ、安心して鑑賞できます。

庭での育て方と楽しみ方
ヒガンバナは植えっぱなしで毎年咲く、管理の手のかからない球根植物です。半日陰から日向まで幅広い環境に対応し、やせた土でも育ちます。球根の植え付けは秋(9〜10月)か春(3〜4月)が適期で、深さ10〜15cmを目安にします。
群落を作るのは、地下茎を横に伸ばしながら球根を増やしていくためです。増えすぎた場合は、葉が枯れた後(夏)に球根を掘り起こして株分けするとよいでしょう。白花品種のシロバナマンジュシャゲや黄色のキイロヒガンバナ、ピンクや紫のリコリス品種を混植すると、秋の庭に奥行きのある彩りが生まれます。
ヒガンバナ 基本情報
科名・属: ヒガンバナ科 ヒガンバナ属(リコリス属)
学名: Lycoris radiata
原産地: 中国
草丈: 30〜50cm
花期: 9月〜10月(秋分の日前後)
花色: 赤(基本種)・白・黄・ピンク・紫(園芸品種多数)
毒性: 球根に有毒成分(リコリンなど)を含む
分類: 多年草(球根植物)
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