松は千歳を契り、竹は万歳を契る
- 三重県剪定伐採お庭のお手入れ専門店 剪定屋空

- 16 時間前
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今年最後の庭仕事は、門被りの黒松の剪定となりました。

年の瀬、冷たい空気のなかで松の枝に向き合うと、この木が何十年もかけて育まれてきた時間の重さを感じます。
覆うように伸びた一本の差し枝。
その姿には、かつてこの家を訪れたすべての人を迎え入れてきた、静かな歓迎の心が宿っているように思えます。
「待つ」と「松」の言葉遊び
門被りの松は、単なる装飾ではありません。
日本語では「松」と「待つ」が同じ音を持ちます。この言葉遊びは万葉集の時代から和歌に詠まれ、松は「神が天から降りてくるのを待つ木」として神聖視されてきました。正月の門松も、歳神様を招き入れるためのしつらえです。

門被りの松が本格的に発達したのは江戸時代のこと。当時、立派な門を構えることは武家など特定の階層にのみ許された格式でした。
富裕な商人たちは、門を建てる代わりに松を植え、その枝を門の上に伸ばすことで、許容される範囲内で繁栄を示そうとしたといいます。
制約のなかから生まれた、創意工夫の文化。
その知恵が、数百年の時を経て今に受け継がれています。
Welcome Branch 海外で「歓迎の枝」と呼ばれる理由

興味深いことに、門被りの松は海外の日本庭園愛好家の間で “Welcome Branch(歓迎の枝)と翻訳されています。
門をくぐる人の頭上に松の枝が広がる。
その姿は、言葉を発さずとも「ようこそ」と語りかけているかのようです。
西洋のトピアリーが幾何学的な形態を目指すのに対し、日本の庭木の仕立ては自然の風景の縮図を表現します。
そこには多大な芸術性と文化的背景が込められており、門被りの松はその象徴的な存在といえます。
松は千歳を契り、竹は万歳を契る
この言葉は、松と竹の常緑性に長寿と繁栄の願いを重ねた表現です。
一年を通じて緑を保つ松の生命力。
それは、家の永続的な繁栄への祈りそのものでした。
黒松は庭木の王様と呼ばれ、大気汚染や塩害にも耐える力強さを持ちます。
その針葉は硬く鋭く、雄松の名にふさわしい風格があります。
門被りの仕立てに好まれるのは、この生命力の強さゆえかもしれません。
年の瀬の手入れに込める思い

門被りの松の維持には、毎年のお手入れが欠かせません。
春から初夏のみどり摘みでは、新芽を整えて樹形を保ちます。
そして秋から冬にかけてのもみあげ。古い針葉を手で揉むようにして落とし、新しい葉だけを残す作業です。
この時期に行う手入れには、特別な意味があります。
新年を迎える準備として、松を清め、整える。
それは庭師として、そしてこの木を預かる者として、年の締めくくりにふさわしい仕事だと感じています。
一つひとつの作業が、来年もこの松が健やかに訪問者を迎え続けるための布石となります。
50年、100年という時間をかけて育まれる門被りの松は、世代を超えた継続的な営みの象徴です。
住宅様式の変化や維持管理の難しさから減少傾向にありますが、一本一本に込められた歴史と思いは、かけがえのないものです。
門を覆う枝に込められたお越しくださいというメッセージ。
それは、日本文化におけるホスピタリティの精神を今に伝える、生きた文化といえるのではないでしょうか。

この木を植えた人の願い。
長い年月、手入れを続けてきた庭師たちの手の記憶。
そして、この門をくぐってきた無数の人々への歓迎の心。
松は千歳を契る。
その言葉を胸に、新しい年を迎える準備を整えたいと思います。

今年一年、ありがとうございました。
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