竹林の中にある生物多様性 竹から森を育てる動物たち
- 飯島 一郎

- 4 時間前
- 読了時間: 7分
竹林を雑木林に更新していく過程で、どんな動物たちが来るようになるのか。
そんなことを知りたくて、三重県亀山市の真竹竹林にトレイルカメラを常設しています。

先日、SDカードを交換してきました。
47日間で24回。
アライグマ、疥癬症のタヌキ、ニホンザル、ノネズミ、キジバト、ネコ。ほかにイノシシとイタチと思われるものが1回ずつ、判別できなかったものが5回ありました。
24回のうち12回が夜でした。明け方と夕方が5回。日中に通ったのは、キジバトとネコ、それと判別できなかった1回だけです。
人が作業している時間帯に、動物はほとんど通っていませんでした。

動物が写った場面だけをつないだ映像です。1分57秒。
この竹林は真竹が優占していた場所です。少しずつ竹を抜いて光を入れ、広葉樹の林へ戻していく手入れを続けています。かめやま生物多様性共生区域に認定されている区域です。
竹を伐っただけでは、森に戻りません
この記事で書きたいのは、写った動物の一覧ではありません。
なぜ動物が来ることをそこまで気にしているのかという話です。
竹を伐れば、そのうち林に戻る。そう思われがちですが実際はそう簡単には戻りません。
理由を整理したことがあります。
1つ目。コナラのどんぐりは土の中で何年も眠りません。落ちて1〜2週間で発芽し、乾燥にとても弱い。だから竹を伐っても、地面に眠っていた種から芽吹くということが起きない。
2つ目。どんぐりを運ぶ動物が、暗くて餌の乏しい竹林に立ち寄りません。種が運び込まれない。
3つ目。竹林の林床は、外の明るさの1〜5パーセントしかありません。芽が出ても竹の再生に追いつけず枯れます。
4つ目。コナラと共生する菌が、コナラの成木が消えると土から失われます。芽が出ても根づけない。
このうち2つ目が、今回のカメラの話につながります。

種を運ぶ側が、来ていました
8月15日の午前0時1分。
小さなネズミが1匹、写っていました。ノネズミです。
山や林にすむネズミの総称で、種まで決めるにはこの映像では足りません。アカネズミかヒメネズミの仲間です。
この動物が、どんぐりを運びます。
1つずつくわえて運び、落ち葉の下や浅い土に隠す。隠しては掘り返し、また別の場所へ移す。その繰り返しの中で、掘り忘れられた実が出てきます。すでに土に埋まっているので、そのまま根を下ろせる。
さっき書いた2つ目の壁は、こうでした。どんぐりを運ぶ動物が竹林に立ち寄らない。
放置された竹林では地面には枯れ竹が散乱しており、竹も鬱蒼としており、まず生物が住める環境にはならない。
ネズミは運び手というより、土を耕す側にいる。
調べてみると、この動物は思っていたよりずっと森に関わっていました。
まず、いま書いた種の運び手としての働き。
次に、地面の下のキノコを運びます。土の中にだけ育つキノコがあります。地上に出ないので、風では胞子を飛ばせません。代わりに強い匂いを出して動物に食べてもらい、糞の中の胞子が別の場所へ運ばれる。そのキノコの多くは、木の根と手を組んで水と養分を送る菌でもあります。
4つ目の壁は、コナラと共生する菌が土から失われることでした。
菌を運ぶ動物がいるということは、樹木に共生する菌が移動できるということ。
そして、ネズミは渋いどんぐりを食べます。どんぐりには渋みのもとになる成分が多く、そのままでは体に障ります。ノネズミは唾液の中にその成分と結びついて無害にするタンパク質を持っていて、食べつづけるほどその量が増えていく。少しずつ体を慣らしながら食べています。
食べられることで森を支えている動物達が実は多くいます。フクロウ、イタチ、テン、ヘビ。
森の捕食者の多くが、この小さな動物を食べて生きている。どんぐりが豊作の年には数が増え、不作の年には減る。木の実りが生態系のバランスを支えている。


タヌキは、春から来ています。
今回いちばん多く写ったのは、毛が抜けたタヌキでした。3回。疥癬症だと思われます。
このタヌキ、今回が初めてではありません。
2025年12月29日から2026年4月14日まで、約3か月半のタイムラプス映像を確認したときにも記録されていました。冬から夏を越えて、この竹林に来つづけていることになります。
そしてタヌキも、種を運ぶ動物です。
タヌキは決まった場所に糞をする習性があり、その溜め糞の91パーセント以上に植物の種子が含まれているという調査があります。溜め糞の周囲でコナラをはじめとする木本植物が発芽することも確認されています。
ノネズミがどんぐりを土に埋めて森を広げるように、タヌキは溜め糞を通じて種を運びます。
また種子を遠くへ運ぶのは、鳥の仕事です。
ここまでネズミとタヌキの話をしてきました。
ただ、種を運ぶ動物の中で、いちばん遠くまで届けるのは鳥です。
アカネズミが運べるのは200メートルほどまで。川があると越えられません。カケスは最大1.2キロ運んだ記録があります。
照葉樹林が大阪から京都までの40キロを1000年から1500年かけて北上したという記録があります。そこから逆算すると、1本の木がどんぐりを500メートルから800メートル先へ送る必要がある。ネズミでは届きません。森を広げてきたのは、おそらくカケスのような鳥です。
役割が分かれていました。
林の外から新しい実を持ち込むのが鳥。その林の中で埋めて回るのがネズミとタヌキ。
この竹林では、まだカケスは写っていません。次に見たい鳥の1つです。

竹林の土には、生きものが少ない。
なぜ動物が来ることをこれほど気にするのか。もう1つ理由があります。
2026年7月、しがら工法で作った土留めの中を開けると、落ち葉を分解する生きものがいました。
ところが数メートル隣の竹林の土を掘っても、ミミズも微生物もほとんど見つかりません。
竹の葉と稈は、土の生きものにとって食べにくいものです。硬い成分を多く含み、分解されにくい。分解しようとする微生物が、かえって土の窒素を使ってしまう。さらに竹林の地下では、広葉樹と共生する菌が乏しくなります。
放置された竹林は、枯れた竹が地表を覆い、下草も育たず、動物の気配もありません。
だから竹を抜いて光を入れる。下草が戻る。虫が来る。その虫を食べる動物が来る。種を運ぶ動物が来る。
その順番を確かめるために、カメラを置いています。
今年が、比べるための基準になります。
47日間で24回。
この数字そのものに、まだ意味はありません。多いのか少ないのかを判断する相手がないからです。
来年の同じ時期に同じ場所で撮って、はじめて比べられるようになります。今年はその1年目です。
カメラは日時とあわせて気温も記録していました。今回は24度から29度。この数字も、いずれ何かと結びつくかもしれないので残しておきます。
いちばん小さく写った1匹が、森を作る側にいました。
カメラを置いていなければ、気づかないままでした。
竹林の手入れと、この動物たちの暮らしは、同じ向きを向いています。
竹林整備のご相談
放置された竹林の整備、竹林から広葉樹林への段階的な移行、しがら工法による斜面保全などを承っています。三重県北中部を中心に伺っています。
剪定屋空 三重県三重郡菰野町杉谷2304-1
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