赤い彼岸花の後に黄色い彼岸花。南の植物 ショウキズイセン

黄色の彼岸花(ヒガンバナ)。妖しさと美しさを合わせもつ赤色の彼岸花(曼殊沙華/マンジュシャゲ)と同じ仲間、ヒガンバナ科ヒガンバナ属の多年草、ショウキズイセン(鍾馗水仙)です。

赤い彼岸花の花が終わるころ、交代するかのように9月末頃から開花する鮮やかな黄色い花で、原産地は日本の九州から南西諸島、台湾とされ、国内では四国や九州、沖縄(南西諸島)の海岸や草地での自生も見られます。
撮影画像の植物は九州地方ではあるものの、公園の花壇にきちんと収まって咲いていた花なので花壇を管理されている方が栽培されたものでしょう。
高さ30から60cmほどの太い花茎を伸ばし、花被片(花びら)は鮮やかな黄色、強く反り返り、縁が波打つのが大きな特徴です。
名前の由来は、中国の民間伝承に登場する魔除けの神、鍾馗(しょうき)にちなんでいます。鍾馗は豊かな髭を蓄えた姿で描かれることが多く、この花の縮れて反り返った花びらの様子をその髭に見立てて名付けられました。
鑑賞時期は9月から10月(11月頃まで)。タイミングが良ければ赤と黄色の彼岸花が同時に咲き並ぶ光景も観ることができますよ。

赤い彼岸花は、種を作れません
球根で増える赤いヒガンバナと大きく異なるのは、ショウキズイセンは種子を作って増えることができる点です。ここには、はっきりした理由があります。
染色体の数が違います。
埼玉県深谷市の解説に、こう書かれています。大半の生物は同じ染色体を二つずつ持ち、それが減数分裂して半分になることで生殖細胞が作れる。ところがヒガンバナは同じ染色体を三つずつ持っているので、うまく半分に分かれず生殖細胞が作れない。だから球根で増えることになる。この性質を三倍体という。
名古屋市立大学の資料では、中国のヒガンバナは二倍体(2n=22)で種子ができ、日本のヒガンバナは三倍体(2n=33)で種子ができない、と対比されています。
日本の田の畦に並ぶあの赤は、種から生まれたものではありません。ひとつの球根が分かれて、分かれて、増えたものです。全部が同じ遺伝子を持っています。

だから、白い彼岸花が生まれました
種を作れない赤に対して、ショウキズイセンは種を作ります。二倍体だからです。
そして、この2つのあいだに生まれた花があります。白い彼岸花、シロバナマンジュシャゲです。
熊本大学薬学部の薬草データベースには、シロバナマンジュシャゲについて、ショウキズイセンとヒガンバナの雑種である、と記されています。高知県立牧野植物園の解説も同じです。大阪市立長居植物園の図鑑では、九州南部を中心に群落が見られる、と書かれています。
赤と黄が並んだ場所で、黄のほうが種を作った。その結果が白でした。
純白のものは少なく、ピンクや黄色の筋が入ることが多い、とも書かれています。白の中に黄が残っている。両方の親の名残りが、花びらに出ています。
ショウキズイセンには、ほかにも交雑の記録があります。キツネノカミソリとのあいだに生まれたものはアケボノショウキズイセンと呼ばれています。
種を作れる一種がいるだけで、その属の中に新しい花が生まれつづけます。
三色が並ぶ場所には、時間が積まれています
赤が咲き、少し遅れて黄が咲く。その両方がある場所に、やがて白が出ることがあります。
赤は種を作れないので、人が球根を運ばないかぎり動きません。黄は南の植物なので、本州では人が植えたものです。そして白は、その2つがそろった場所でしか生まれません。
だから三色が並ぶ庭や寺の境内は、何十年ぶんかの人の手が重なった場所ということになります。誰かが赤を植え、別の誰かが黄を持ってきて、そのあいだに白が出た。
花の色が、そこに関わった人の数を教えてくれます。
ショウキズイセンの基本情報
ショウキズイセン(鍾馗水仙):ヒガンバナ科ヒガンバナ属 原産地:四国、九州、台湾/文献に基づく分布:喜界島・沖永良部島、沖縄島・伊江島・渡名喜島、宮古島、石垣島・与那国島
別名:ショウキラン(鍾馗蘭)
開花期は8月から10月 草丈30から60cm
よくあるご質問
黄色い彼岸花から採れた種をまけば増やせますか。
理屈のうえでは増やせます。ただ発芽から開花まで年数がかかります。確実なのは分球です。園芸栽培では分球で増やすほうが早く、失敗も少なくなります。
赤い彼岸花に種のようなものがつきました。
まれに実ることがあると報告されていますが、日本のヒガンバナは三倍体で通常は結実しません。ふくらんでいても中身が入っていないことが多いので、球根で増やすほうが確実です。
白い彼岸花を庭に植えたいのですが。
球根が流通しています。ヒガンバナと同じ扱いで植えられます。ただしヒガンバナ属の球根にはリコリンという有毒なアルカロイドが含まれます。小さなお子さんやペットが掘り返す場所は避けてください。
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