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落ち葉は変わらない。変わるのは、人の扱いのほう

  • 執筆者の写真: 飯島 一郎
    飯島 一郎
  • 19 時間前
  • 読了時間: 6分

更新日:8 時間前

落ち葉は、行く先々で厄介者として扱われていることが多い。


落ち葉は、行く先々で厄介者として扱われていることが多い。

側溝を詰まらせる、路面を滑らせる、隣家へ飛んでいく。集めて、袋に詰めて、運んで、燃やす。


そのために毎年、費用と手間がかかっています。


けれど同じ落ち葉が、国際機関に認定された遺産の中心にもなっています。


落ち葉が場所によって変わるわけではありません。変わっているのは、人の側の扱いだけです。


落ち葉は自分で土にならない


まず、落ち葉が土になる過程を整理します。よく土に還ると言いますが、落ち葉が勝手に土になるわけではありません。土にしているのは、生きものです。

落ち葉が土になるまでの図解 分解者のリレー 剪定屋空

最初に動くのはトビムシ、ヤスデ、ダンゴムシといった小さな生きもので、落ち葉を物理的に砕きます。


次に菌類が入り、砕かれた有機物を化学的に分解する。そしてミミズやムカデが土の中を動きながら、有機物と土を混ぜていきます。この混ぜる働きは耕耘とも呼ばれ、土の性質そのものを変えていきます。


落ち葉の下で働く分解者 ミミズ ヤスデ ダンゴムシ 菌糸 墨絵


広葉樹の葉は1年から2年で腐植に変わります。スギやヒノキの針葉は3年から5年かかります。時間がかかるということは、その間ずっと生きものが働いているということです。


落ち葉を持ち去るとき、私たちは葉だけを持ち去っているのではありません。


この生きものたちの食べ物を、まるごと持ち去っています。



126年掃除し続けた庭で、何が起きたか


これは想像の話ではありません。私たちが実際に管理させていただいている庭で、土壌診断をした結果です。


落ち葉を除き続けた庭と戻した斜面の実測比較 剪定屋空

四日市市にある明治創設の日本庭園です。


126年のあいだ、落ち葉と枯れ枝をすべて取り除き、雑草を根ごと抜く、丁寧な管理が続けられてきました。


熊手で松の根元の落ち葉を清掃する職人 四日市市の日本庭園

実際の作業風景です。松の根元を熊手で払う。この一手ずつが126年積み重なりました。



全炭素量は8.6グラム毎キログラム。


近隣農地の17.6と比べて半分以下で、分析機関がこれまで見てきた中でもかなり低い数値でした。


仮比重は1.78。健全な土が0.90から1.10ですから、約1.6倍の密度です。


石に近いと言ってよい固さでした。そして菌根共生率は0.3から1.9パーセント。


健全とされる40パーセント以上に対して、20分の1以下です。


この庭は、掃除を怠ったのではありません。丁寧に掃除し続けたから、土が石に近づきました。


一方、図の右側は亀山市の竹林斜面です。しがら工法で落ち葉と粗朶を充填し、コナラのどんぐりを混ぜ込みました。


2か月半後に確認したところ、コナラの実生が22本、木本の実生は合計31本。竹林跡地では通常コナラは自然更新できません。落ち葉を戻したことが、この本数を生みました。


法因寺様 粗朶のそばに芽吹いたコナラの実生 三重県亀山市

粗朶のすぐそばから出てきたコナラです。落ち葉の層が、発芽と初期の乾燥から守っています。



しがら工法のその後の記録は、こちらの記事にまとめています。


落ち葉を宝物として使い続けた360年


日本には、落ち葉を資源として使い続けてきた地域があります。


武蔵野の落ち葉堆肥農法 360年の循環の図解 世界農業遺産

埼玉県の川越市、所沢市、ふじみ野市、三芳町にまたがる武蔵野台地です。


ここは火山灰土に厚く覆われ、作物が育ちにくい土地でした。江戸時代から人々は草原に木を植えて平地林を育て、ヤマと呼びました。冬にその落ち葉を掃き集めて堆肥にし、畑に入れて土をつくり変えてきました。


武蔵野の平地林で冬に落ち葉を掃き集める 落ち葉堆肥農法 墨絵

この農法は、いきなり世界に認められたわけではありません。2017年3月にまず日本農業遺産に認定され、その6年後に世界農業遺産になりました。地元で価値を認めるところから始まっています。



この落ち葉堆肥農法は360年以上続いており、2023年7月、国連食糧農業機関によって世界農業遺産に認定されました。今も受け継がれ、平地林が景観と生きものの多様さを支えています。


同じ落ち葉が、片方では処理費用を生み、片方では世界遺産の中心にある。この差は落ち葉の性質ではなく、それをどう扱う仕組みを持っているかの差です。


庭でできること


お庭の落ち葉を全部残しましょう、という話ではありません。玄関前や園路に厚く積もった落ち葉は滑ります。芝の上に長く置けば蒸れます。掃くべき場所は掃きます。


私たちがお勧めしているのは、庭の中に落ち葉の居場所を一か所つくることです。


吹き寄せできる場所を作ったり落ち葉の居場所作りが大事だと思っています。


低木の根元、株立ちの木の足元、日陰で人が歩かない隅。そこに集めた落ち葉を敷いておく。それだけで、土の乾きが変わり、翌年には土の色が変わってきます。


木の根元に敷くときは、幹に直接触れないよう、少し離して輪のように置きます。厚さは5センチほどが目安です。厚く積みすぎると空気が通らず、かえって腐りが悪くなります。


落ち葉を運び出さない年が一年あるだけでも、土は変わり始めます。捨てるものを減らすのではなく、置き場所を決める。それが一番手軽で、一番効きます。


落ち葉は人の都合を選べません。だからこそ木の都合も考え長く付き合える形を築いていく事が私たちの仕事でもあり管理の仕方です。



よくあるご質問


Q. 落ち葉を庭に敷くと、虫が増えませんか。


A. 増えます。ただし増えるのは主に、落ち葉を分解するダンゴムシ、ヤスデ、ミミズです。これらは植物を加害しません。むしろ土を耕し、それを食べる鳥が庭に来るようになります。人が困る虫と、土をつくる虫は別のものです。


Q. 落ち葉はそのまま敷いてよいですか。堆肥にしてからのほうがよいですか。


A. どちらでも構いません。そのまま敷けばマルチングとして乾燥を防ぎ、時間をかけて土になります。堆肥にすれば早く効きますが、切り返しの手間がかかります。手をかけられない場所ほど、そのまま敷く方法が向いています。


Q. 病気の葉も敷いてよいですか。


A. 病斑が出ている葉や、うどんこ病などが目立つ葉は分けて処分することをお勧めします。健全な落ち葉と、病気の落ち葉を分けるだけで、翌年の発生はかなり違ってきます。


Q. 針葉樹の落ち葉はどうですか。


A. スギやヒノキの葉は分解に3年から5年かかり、酸性が強めです。ツツジやシャクナゲなど酸性を好む植物の足元には向いていますが、それ以外の場所では広葉樹の落ち葉と混ぜて使うほうが無難です。


落ち葉が果たしている働きについては、世界の研究をまとめた記事でも詳しくご紹介しています。


庭木の剪定や土のことでお困りでしたら、剪定屋空の庭木のお手入れからご相談ください。


三重県菰野町を拠点に、庭木の剪定・伐採、竹林整備、里山再生を行う剪定屋空です。庭の一本の木から、里山の森まで。木を尊ぶ気持ちを大切に、ひとつひとつの現場に向き合っています。



出典

土壌診断の数値は、剪定屋空が管理する四日市市の日本庭園で2026年4月に採土し、株式会社みらい蔵および一般財団法人日本菌根菌財団ほかが分析した結果によります。


しがら工法の実生本数は、三重県亀山市の施工現場で2026年6月13日に確認した記録によります。

武蔵野の落ち葉堆肥農法については、農林水産省の世界農業遺産のページおよび埼玉県の公表資料によります。




 
 
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