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朝顔(アサガオ)牽牛花・蕣花・槿花、呼び名に刻まれた日本の植物文化

  • 執筆者の写真: 飯島 一郎
    飯島 一郎
  • 5月25日
  • 読了時間: 4分

朝顔という名前は、「朝に咲く顔」という意味です。でも、この花の本当の名前はもっと多いのです。


牽牛花(けんぎゅうか)、蕣花(しゅんか)、槿花(きんか)——どれも同じ花を指す別の呼び名です。それだけこの植物が、長い時間をかけて人の暮らしに入り込んできたということでしょう。


庭師として夏の庭を見ていると、フェンスや塀に絡まる朝顔の姿が目に入ることがあります。一日花なのに、毎朝きちんと咲く。その繰り返しに、どこか頭が下がる思いがします。


このページではこれまで書いてきた朝顔関連の記事をひとつにまとめた。名前の由来から文化史、品種の話、グリーンカーテンとしての使い方まで、幅広くお届けします。


アサガオ 赤紫 — 牽牛花の呼び名をもつ夏の花

牽牛花・蕣花——呼び名の数だけある、人の気持ち


「アサガオ」という名は平安時代から使われています。ただ、中国から薬草として渡ってきたころの名前は「牽牛花(けんぎゅうか)」でした。


牽牛とは、七夕の彦星のこと。朝に咲いて昼には萎む花を、天の川を渡る星に重ねた感覚が伝わってくる。


「蕣(しゅん)」という字は、わずか一日で散る花を表す漢字です。一日で終わるのに美しい。だから人は名前をつけ、詩に詠みました。


千利休と朝顔——一輪だけ残した理由


千利休が豊臣秀吉を茶会に招いた時、庭一面に咲いていたはずの朝顔が一輪だけ残されていたという話があります。


これは「省略の美学」と呼ばれます。全部を見せない。余白に意味をこめる。庭の仕事をしていると、この感覚はよく分かる気がします。何かを足すより、何かをそぎ落とす方が難しいのです。

一輪の朝顔 — 千利休が大切にした省略の美学

万葉集の朝顔——秋の七草とアサガオ問題


万葉集に「朝顔」が登場するのですが、これが現代のアサガオを指しているのかどうか、植物学者の間でも意見が分かれています。


当時の「朝顔」はキキョウを指していた可能性が高いとも言われています。秋の七草のひとつ、紫の花を咲かせるキキョウ。それもまた、朝に開く花です。


植物の名前は時代とともに変わる。同じ名前が違う植物を指すことも、違う名前が同じ植物を指すことも珍しくない。


秋の朝顔 万葉集にも歌われる秋の七草

朝顔・昼顔・夕顔・夜顔「顔」シリーズ、仲間外れはどれか?


朝顔、昼顔、夕顔、夜顔——名前に「顔」がついた植物が四種類あります。それぞれ咲く時間が違うように聞こえますが、実は仲間ではないものが混ざっています。


朝顔と昼顔はヒルガオ科で近い仲間です。夕顔はウリ科で、実はカンピョウになるウリに近い。夜顔はまたヒルガオ科に戻りますが、夜だけ咲くという変わり者です。


秋に咲く青いアサガオ—Heavenly Blueという品種


アサガオは夏の花というイメージが強いですが、秋に咲く品種もあります。「ソライロアサガオ(Heavenly Blue)」と呼ばれる西洋品種で、10月ごろまで鮮やかなコバルトブルーの花を咲かせます。


日本の在来種のアサガオよりも花が大きく、葉も大きいのが特徴です。グリーンカーテンとしても優秀で、秋まで楽しめるのが魅力です。

秋に咲く青いアサガオ Heavenly Blue ソライロアサガオ

アサガオの花は何色?——色素と遺伝子の話


アサガオは同じ株でも赤・青・紫・白と様々な色が出ます。これはアントシアニンという色素が、細胞の酸性・アルカリ性の違いで色を変えるためです。


朝に咲いたばかりの花は青紫で、時間が経つと赤みが増します。これは細胞液のpHが変化するためで、一輪の花の中で色が変わる現象を観察できます。


グリーンカーテンとしての朝顔——夏の省エネ植物


近年、夏の日差しを遮るグリーンカーテンとしてアサガオが注目されています。成長が早く、短期間で壁面を覆えるため、学校や家庭での栽培に向いています。


遮光率は種類や管理方法によって変わりますが、うまく育てれば窓からの日射を大幅に軽減できます。クーラーの使用を抑えながら、緑を楽しめる一石二鳥の植物です。


植物と朝—朝顔が「朝に咲く」しくみ


朝顔はなぜ朝に咲くのか。光と温度のシグナルを感知して開閉する「概日リズム(体内時計)」が植物にも備わっているからです。

アサガオの場合、夜の暗さと朝の気温上昇が引き金になって開花する。夜明け前から準備が始まり、光を浴びて開く。その動きは、何度見ても精巧だと思う。


朝顔は一日花。でも毎朝、きちんと咲く。


一日で散るから、「儚い」と言われることが多い。でも毎朝咲き続けるその姿は、儚いとは少し違う気がする。


庭仕事をしていると、繰り返しに意味を見つけることがあります。毎年同じ季節に同じ木に触れる。毎朝同じ時間に花が開く。その繰り返しの中に、何かがあります。


朝顔は、そういうことを思い出させてくれる植物です。

 
 
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