梅(ウメ)万葉集から令和まで、日本人が最も長く付き合ってきた花木の剪定と文化
- 三重県剪定伐採お庭のお手入れ専門店 剪定屋空

- 1 日前
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梅は1月末から3月にかけて、他の花に先がけて咲く花木です。桜より早く、雪の残る庭に白やピンクの花を開く。その姿を「春告げ花」と呼びます。
「令和」という元号は、万葉集の梅の宴の序文「初春令月、気淑風和」から来ています。奈良時代の花見は梅の花見でした。万葉集に梅は118首詠まれ、桜の44首の約3倍。日本人が最も長く付き合ってきた花木がこの梅です。
現場で梅の剪定を頼まれるとき、「昔はよく咲いていたのに」という話をよく聞きます。梅の花芽は夏に決まります。冬に切り方を誤ると翌春の花が出なくなる——そういう木です。花の文化と剪定の本質、両方をまとめました。
万葉集では梅が桜の3倍詠まれていた
日本最古の歌集・万葉集(759年頃完成)には、梅を詠んだ歌が118〜119首収録されています。桜は44首。奈良時代、「花」といえば梅のことでした。
梅は中国から奈良時代に渡来した植物です。当時の貴族にとって、見たことのない異国の花木は最上の珍品でした。梅の花の宴を開き、花びらが杯に落ちるのを愛でた——その文化が万葉集の歌に残っています。
桜が主役になるのは平安時代から。「花」が梅から桜に移り変わっていく過程は、日本人の美意識の変化そのものです。
紅梅と白梅は、香りが違う
見た目の色の違いだけでなく、紅梅と白梅は品種群がそもそも違います。香りにも差があり、白梅はさわやかで甘い系、紅梅は少し重みのある系とされています。
「紅梅色(こうばいいろ)」は日本の伝統色の一つです。赤みのある淡い紅で、平安貴族の衣装にも使われた色です。梅の花の色が、日本人の色の感覚に深く刻まれていることがわかります。
同じ庭に白梅と紅梅が並んで植わっていることがあります。どちらも1月下旬〜3月が見頃。花の色だけでなく、香りの違いも楽しめます。


天神様と梅——全国の神社に梅がある理由
全国に約12,000社ある天満宮には、必ずといっていいほど梅が植えられています。その理由は、菅原道真(845〜903年)にあります。
平安時代の学者・政治家であった道真は、901年に突然大宰府(福岡県)に左遷されました。京の自邸の梅の木に別れを告げ、「東風吹かばにほひをこせよ梅の花 あるじなしとて春を忘るな」と詠みました。
すると、その梅が一夜にして大宰府まで飛んで来たと伝わります——これが「飛梅(とびうめ)伝説」です。道真は翌々年に没し、後に天神様として祀られました。以来、天満宮には梅が植えられ、道真の心とともに守られてきました。


枝垂れ梅——重力に従う枝の美学
枝垂れ梅は、枝が自重で下方向に伸びる性質(枝垂れ性)を持つ梅の品種群です。砂糖枝垂れ・藤牡丹枝垂れ・玉垂れ・八重紅枝垂れなど、多くの品種があります。
枝垂れ性は遺伝的な突然変異によるもので、種まきで増やすことができません。接ぎ木で増やします。上から滝のように垂れ下がる花の姿は、通常の梅とは全く異なる印象を与えます。
管理の注意点は、下に向かって伸びる枝を剪定で整理することです。放置すると地面を這うほど伸びてしまいます。花後の剪定で適切な樹形を保ちます。

ロウバイは梅ではない
1月頃、蝋細工のような黄色い花を咲かせる「ロウバイ(蠟梅)」。名前に「梅」がついていますが、梅(バラ科)とは全く別の植物です。ロウバイはロウバイ科ロウバイ属。植物学的な親戚ではありません。
「梅に似た香りのする、蝋細工のような花」という外見の特徴から、この名前がつきました。ただし実には注意が必要です。ロウバイの種子にはアルカロイドが含まれており、有毒です。梅と同じように実を使おうとすると危険です。
梅よりも早い時期(12月〜1月)に咲くため、「梅より早く春を告げる花」として親しまれています。

花芽は夏に決まる——梅の剪定で最も大切なこと
梅の剪定で最もよく聞く相談は「昔はよく咲いていたのに最近咲かなくなった」です。原因のほとんどは、剪定のタイミングと切る枝の選び方の誤りです。
梅の花芽(翌年の花になる芽)は、7月下旬〜8月中旬に短果枝(長さ10cm以下の枝)につきます。夏に新しく伸びた長い枝(長果枝)には花芽がつきにくく、葉だけが出ます。
夏に長い枝をたくさん残しすぎると、翌年の花が減ります。逆に、花後(3〜4月)に長い枝を短く切り詰めておくことで、短果枝が多く出て花が増えます。「三枝に一輪」が目安とされています。
夏(7〜8月)には花芽がついた短果枝を切らないことが重要です。冬(12〜1月)の剪定では、すでに花芽がついている枝を確認してから切ります。
梅の実——クエン酸4〜6%という数字の意味
梅の実はクエン酸を4〜6%含んでいます。これは果物の中でも特に多い数値です。梅干しが弁当の「腐敗防止」として機能するのも、このクエン酸の抗菌作用によるものです。
梅由来の成分には、抗酸化・血糖値抑制・抗疲労・抗炎症などの効果が研究で報告されています。ただし「青梅は生食不可」です。青梅にはアミグダリンという成分が含まれており、生のまま多量に食べると中毒を起こします。梅干し・梅酒・梅シロップなど加工して使います。
実をつけるには花が咲くことが前提です。花芽をしっかりつけるための剪定管理が、梅の実の豊凶を左右します。

令和の元号は梅の歌から来ている
2019年、日本の元号が「平成」から「令和」に変わりました。その出典は万葉集の梅の宴の序文でした。「初春の令月にして、気淑く風和ぎ」——良い月、穏やかな風という意味です。
1200年以上前、貴族たちが梅の花の宴を開き、詩を詠んでいた。その記録が令和という時代の名前になった。この木がどれだけ長く日本人の暮らしの中にあったか、改めて感じます。
東風吹かばと詠んだ道真が別れを惜しんだのも梅でした。花後の剪定でハサミを入れるたびに、そういうことを思います。それだけの時間が積み重なった木だから、触れ方には誠意が要ります。







